

監修医師:
山田 克彦(佐世保中央病院)
目次 -INDEX-
有棘細胞がんの概要
有棘細胞がんは皮膚がんの一種で、表皮の中間層にある有棘層(ゆうきょくそう)の細胞が悪性化することで発生します。
顔や頭皮、首など紫外線にさらされやすい部位に好発し、四肢にも発生することがあります。初期段階では皮膚表面にピンク色や赤色のしこりのようなものとして現れ、進行すると表面がただれたり、潰瘍(かいよう)を形成したりすることがあります。
有棘細胞がんが表皮内にとどまっている段階で発見された場合は、手術による切除で根治できることが多いです。
しかし真皮や皮下組織に浸潤するとリンパ節へ転移するリスクが高まり、身体の各部位へ遠隔転移することもあるため、皮膚に気になる症状があったら、できるだけ早期に医療機関を受診しましょう。

有棘細胞がんの原因
有棘細胞がんの発生は紫外線への曝露が大きな要因です。長期間にわたって紫外線を浴び続けることで皮膚細胞がダメージを受け、がん化しやすくなります。
過去に受けた重度のやけどや外傷の跡も、有棘細胞がんの発生リスクを高める要因の1つです。長い年月を経てこれらの瘢痕(はんこん)部分からがんが発生することがあるため、治りにくい傷跡がある場合は注意が必要です。
また、放射線への曝露も原因の1つとして挙げられます。過去に何らかの理由で放射線を浴びた部位に有棘細胞がんが生じることがあります。
有棘細胞がんは「日光角化症(にっこうかっかしょう)」や「ボーエン病」などから発生することも多いため、これらがみられる場合は有棘細胞がんの発生リスクが高いと考えられています。
有棘細胞がんの前兆や初期症状について
有棘細胞がんの初期症状は湿疹や単なる傷として現れることがあります。とくに日光を浴びやすい顔や頭皮、首や手などに生じやすいです。
注意すべき前兆として「日光角化症」があります。これは有棘細胞がんの前駆病変とされているもので、皮膚が赤みを帯びてざらざらと硬くなり、ときにはうろこ状になることがあります。
このような変化が見られた場合は有棘細胞がんに進行する可能性があるため、できるだけ早く医師の診察を受けることが重要です。
また「ボーエン病」も有棘細胞がんの前段階として注意が必要です。これは皮膚に境界がはっきりとしている赤いかさぶたのような斑点が現れる特徴があります。
有棘細胞がんでは、通常の皮膚トラブルとは異なり治りにくい点が特徴です。小さな傷や湿疹だと思って外用薬を塗布しても症状が改善しない場合は、できるだけ早めに専門医の診察を受けましょう。
進行するにつれて皮膚の表面がただれたり、潰瘍を形成したりすることがあります。表面から浸出液が出ることもあり、触れると出血しやすくなります。
有棘細胞がんの検査・診断
有棘細胞がんは主に視診や皮膚生検によって診断します。がんが進行していると判断した場合などは、画像検査によって遠隔転移の有無を調べることもあります。
皮膚生検
皮膚生検は疑わしい部位の皮膚を小さく切り取り、顕微鏡で調べる検査です。有棘細胞がんに特異的な所見の有無や広がり方を観察します。
表皮から真皮、または皮下組織へ浸潤している様子や、「癌真珠」と呼ばれるものが確認できれば、有棘細胞がんの可能性が高いとされます。
画像検査
がんが広範囲に、または深く浸潤している可能性がある場合、周辺組織への転移を確認するために超音波検査を実施します。
また、CT検査やMRI検査によって全身への転移を調べる場合もあります。とくにPET検査はがんの広がりを評価する上で有用とされています。
有棘細胞がんの治療
有棘細胞がんの治療は手術による切除が第一選択です。がんが表皮内にとどまっている段階であれば、周囲の健常な皮膚を含めて切除することで治癒が期待できます。
切除する範囲が大きい場合は別の部位から皮膚を移植することもあります。とくに顔や手など、外見への影響が大きい部位では、細やかな再建の技術が求められます。
リンパ節に転移が認められる場合は、リンパ節郭清術(りんぱせつかくせいじゅつ)というリンパ節を取り除く手術をおこなうことがあります。
手術が困難な部位にがんが転移している場合や、患者の全身状態などにより手術のリスクが高い場合は、段階的な放射線照射による治療が選択されることもあります。
状況によっては、術前に化学療法や放射線治療を実施し、がんを小さくしてから手術することもあります。
有棘細胞がんになりやすい人・予防の方法
有棘細胞がんは長期間にわたって紫外線に曝露されてきた人がなりやすい病気です。農業や漁業、建設業など屋外での仕事に従事している場合や、屋外での趣味を長年続けている場合はリスクが高い傾向があります。
また、過去に重度のやけどを経験した場合や、外傷後の大きな瘢痕がある場合も、有棘細胞がんが発生するリスクがあります。日光角化症やボーエン病などの前がん病変も有棘細胞がんへ進行する可能性があるため注意が必要です。
予防方法として紫外線対策が重要です。外出時には日傘や帽子を着用し、日焼け止めクリームを塗りましょう。日焼け止めクリームは紫外線防止効果の高いものを選び、こまめに塗り直すことが大切です。
可能であれば紫外線が強い時間帯は外出を控え、直射日光を避けるようにしましょう。
長袖の衣服や日焼け防止効果のある素材の服の着用も効果的です。目からも紫外線は入るため、サングラスの着用も予防策の一つです。
また、定期的な皮膚の観察も重要です。治りにくい傷やかさぶた、形や色が変化している部分がないかなど、自分自身でチェックする習慣をつけましょう。とくに紫外線を多く浴びる部位は注意深く観察することが大切です。
やけどや外傷は適切に治療し、なかなか治らない傷がある場合は早めに医療機関を受診することも予防につながります。
日光角化症やボーエン病などがみつかった場合は、医師の指示に従って適切に治療することで、有棘細胞がんへの進行を防ぐことができます。




