

監修医師:
五藤 良将(医師)
目次 -INDEX-
爪甲下角質増殖症の概要
爪甲下角質増殖症(そうこうかかくしつぞうしょくしょう)は、爪の下の角質が増殖し、爪が分厚く変形し、上に持ち上がった状態です。
主な原因は、爪白癬の感染や爪への持続的な圧力などです。
初めのうちは症状に気付きにくいことがありますが、進行すると歩行時に痛みを感じたり、靴を履きにくくなったりなど、日常生活に支障をきたす可能性があります。
爪甲下角質増殖症は適切な治療をおこなうことで、症状の改善が期待できます。しかし、自己判断で対処すると状態が悪化する可能性があるため、症状を感じたら早めに皮膚科を受診しましょう。
とくに糖尿病など抵抗力が低下しやすい病気がある場合は症状が進行しやすいため、早期発見や早期治療が重要です。
爪甲下角質増殖症の原因
爪甲下角質増殖症の原因は、爪白癬の感染や過度な圧力がかかること、不適切な爪の切り方などです。
爪白癬の感染
爪が真菌(カビの一種)である白癬菌に感染すると爪の下の角質が増殖し、爪全体が分厚くなります。
過度な圧力
先の細い靴や窮屈な靴を履き続けると足先が過度に圧迫され、正常な爪の成長が妨げられて前方へ伸びることができず、爪が厚くなります。
不適切な爪の切り方
爪を深く切りすぎたり角を切ったりするなど、不適切な爪の切り方をすると、爪が皮膚に食い込みやすくなります。これにより爪の下の皮膚が刺激され、角質が増殖し爪が厚くなります。
爪甲下角質増殖症の前兆や初期症状について
爪甲下角質増殖症の症状は爪が濁って分厚くなったり、変形したりすることです。
症状が進むにつれて爪の下の角質がより厚みを増し、靴を履いたときにつま先に圧迫感を覚えたり、歩行時に痛みを感じたりすることがあります。
また、爪全体が大きく持ち上がっているような形状に変形することもあります。
これらの症状は時間をかけて徐々に進行していくため、気付きにくい場合もあるかもしれません。
気になる症状があれば、できるだけ早い段階で皮膚科を受診しましょう。
糖尿病患者など、末梢循環不全や神経障害を起こしやすい場合は、足先の痛みを感じにくいことがあります。
爪が食い込んでいる痛みに気付きにくい場合もあるため、日頃から爪の状態を確認するように心がけましょう。
爪甲下角質増殖症の検査・診断
爪甲下角質増殖症の診断をする際は、爪の厚さや変形の程度などを見ます。また、爪周辺の腫れや発赤、痛みの有無も確認します。
問診では症状が出始めた時期や靴の形状、爪の切り方などを確認します。
必要に応じて爪の一部を採取して、顕微鏡を用いて検査することがあります。
爪甲下角質増殖症は、白癬菌以外にも乾癬(かんせん:免疫の異常により皮膚が炎症して赤く盛り上がる病気)が原因で発症するケースがあるため、他の病気との鑑別も重要です。
爪甲下角質増殖症の治療
爪甲下角質増殖症は増殖した角質を特殊な器具を使って除去し、爪の状態を元通りにします。爪の形状を整えるとともに、白癬や乾癬など原因に応じた治療薬を使用する場合もあります。
また、治療の一環として深爪を予防するために、皮膚が爪より先に出ない程度の長さを保つように爪を切ることや、足に合った靴を選ぶよう指導します。
糖尿病などの基礎疾患がある場合、血糖値をコントロールすることやフットケアなどをおこなうことも、爪甲下角質増殖症の予防や悪化防止につながります。
爪甲下角質増殖症は程度によっては治療に時間がかかることもありますが、適切な治療を継続することで症状の改善が期待できます。
ただし、途中で治療を中断すると症状が長引いたり悪化したりする可能性があるため、医師の指示を守り正しく治療することが重要です。
爪甲下角質増殖症になりやすい人・予防の方法
爪甲下角質増殖症は、爪白癬に感染している人や普段から窮屈な靴を履くことが多い人、立ち仕事が多く足に過度な圧力がかかる人などがなりやすいといえます。
また、糖尿病などの基礎疾患があり、末梢部位の循環不全をきたしやすい人なども発症のリスクが高いです。
これらを踏まえて、爪甲下角質増殖症の予防のためには、第一に爪白癬に感染しないよう気を付けることが重要です。
他にも、足に合った靴の着用や、深爪を避けること、足の清潔を保つこと、基礎疾患を適切にコントロールすることが予防につながります。
爪白癬に感染しないようにする
爪白癬は直接的な接触だけでなく、間接的な接触でも感染することがあります。たとえば爪白癬に感染している人が使用したタオルやスリッパを介しても感染します。
家族の中に爪白癬を患っている人がいる場合はタオルやスリッパなどの共用は避けましょう。また温浴施設やスポーツジムなど、裸足で歩くことが多い場所では靴下を着用したり、自分専用のスリッパを使用したりすることが大切です。
ゆとりがある靴を着用する
つま先に十分なゆとりがあり、足の形に合った靴を着用することで足先にかかる負担が減り、爪甲下角質増殖症の予防につながります。
爪の長さは適度な長さを保つ
爪を切る際は深く切りすぎず、両角をまっすぐに切るようにしましょう。爪の食い込みを防ぐことも、爪甲下角質増殖症の予防に有効です。
爪と周囲の皮膚を清潔に保つ
入浴後は足の水分をしっかりと拭き取ってよく乾かし、爪と周辺の皮膚を清潔に保ちましょう。日常的にフットケアをおこなうことも効果的な予防方法です。
糖尿病などの基礎疾患の治療を正しくおこなう
糖尿病のように、末梢部位に循環不全や神経障害をきたしやすい病気がある場合は、感染症にかかりやすい状態です。基礎疾患の治療を正しくおこない、病気が悪化しないようコントロールすることが爪甲下角質増殖症の予防になります。
また、爪の状態は定期的にチェックし、少しでも爪甲下角質増殖症の症状がみられた場合は、できるだけ早く皮膚科を受診しましょう。
関連する病気
- 爪白癬
- 糖尿病
- 乾癬