

監修医師:
五藤 良将(医師)
女性型脱毛症の概要
女性型脱毛症は、髪の毛が細く柔らかくなったり、生え替わるサイクルが乱れたりすることで、髪の毛の毛量が減少する状態です。
女性型脱毛症の主な症状は頭頂部を中心とした薄毛であり、男性型脱毛症でみられる薄毛症状の頭全体への広がりやヘアラインの後退は、一般的に起こりにくいと言われています。
女性型脱毛症の原因は現時点ではわかっていませんが、女性ホルモンとの関連性などが指摘されています。
女性ホルモンの分泌が低下する更年期症状や、ホルモンバランスに影響を与えるがんの治療薬や経口避妊薬などの使用は、女性型脱毛症のリスクが高まる可能性があります。
女性型脱毛症の基本的な治療は、薬物療法です。
薬物療法で効果が得られない場合には、レーザー照射術や自毛植毛術などがおこなわれる場合もあります。

女性型脱毛症の原因
女性型脱毛症を発症する主な原因は、現時点ではっきりとわかっていません。
一部では、更年期症状やがん治療薬などの使用によって女性ホルモンのバランスが影響を受けることで生じる可能性が言及されています。
これらの影響で、毛包(毛根を包み、髪の毛を作る組織)の一部が小型化したり、ヘアサイクルの休止期(髪の成長が止まった時期)が延長したりすることで薄毛症状が起こります。
女性型脱毛症では、男性型脱毛症の主な原因である男性ホルモンとの関連性は認められない場合が多いです。
しかし、多嚢胞性卵胞症候群という男性ホルモンの上昇による疾患が原因で起こることもあります。
女性型脱毛症の前兆や初期症状について
女性型脱毛症の主な特徴は「クリスマスツリー型」と呼ばれる薄毛症状です。
クリスマスツリーのように頭頂部を中心に毛量の減少が目立ちやすくなります。
毛包の小型化によって髪質が変化し、髪の毛が細く柔らかくなり、髪のボリュームやヘアスタイルへの悩みが現れるケースもあります。
女性型脱毛症は男性型脱毛症と異なり、おでこの生え際の後退や頭部全体への薄毛の広がり、うぶ毛のような髪の毛の増加が起こることは少ないです。
円形や楕円形に髪の毛が抜ける「円形脱毛症」では突然急激な脱毛症状がみられるケースが多いのに対し、女性型脱毛症では一般的に急激な脱毛を生じるケースがほとんどありません。
女性型脱毛症の検査・診断
女性型脱毛症の検査では、問診や視診、トリコスコピー検査、抜毛テストなどがおこなわれます。
薄毛症状は女性型脱毛症以外にも、自己免疫に異常をきたす膠原病(こうげんびょう)や慢性甲状腺炎などの全身性疾患、特定の薬剤の副作用、急激なダイエット、貧血傾向などにより起こる場合があります。
そのため女性型脱毛症の診断では、上記に挙げた疾患や治療歴などがないか、問診によって確認することが重要です。
他の疾患による薄毛症状が疑われるケースでは、必要に応じて血液検査や画像検査(レントゲン検査、CT検査、超音波検査など)、尿検査などがおこなわれます。
視診では、薄毛症状が現れている部位や髪の毛の太さ、長さなどを確認します。
髪の毛や毛包の状態をより詳しく観察するために「ダーモスコープ」と呼ばれる特殊な拡大鏡を利用するトリコスコピー検査がおこなわれる場合もあります。
抜毛テストでは、髪の毛の抜けやすさ、ヘアサイクルの状態などを確認します。
女性型脱毛症と円形脱毛症や全身性の疾患などを鑑別するために、抜けた髪の毛の観察がおこなわれることもあります。
女性型脱毛症の治療
女性型脱毛症の治療では、薬物療法やレーザー照射術、自毛植毛術、かつらの着用などがおこなわれます。
薬物療法には、さまざまな治療薬がありますが、主にミノキシジル外用薬が使用されるケースが多いです。
ミノキシジルの使用では、髪の毛の成長促進や発毛効果が期待できます。
LEDや低出力のレーザー照射術では、頭皮へのレーザー照射により毛根が活性化され、発毛効果が期待できると言われています。
治療の効果が得られるまで継続的な照射をおこなう必要があり、薬物療法と併用される場合もあります。
自毛植毛術は、薄毛の部位に脱毛症状が現れにくい部位の髪の毛を移植する治療法です。
主に薬物療法による効果がみられず、他の治療手段がないときに選択されるケースが多いです。
かつらの着用は脱毛症状を改善する作用はありませんが、女性型脱毛症による心理的なストレスを和らげる効果が期待できます。
症状が改善しない場合や脱毛によるストレスを感じる場合には、かつらの着用が検討されます。
なお、膠原病や慢性甲状腺炎などの全身性疾患による薄毛症状では、疾患の治療が優先的におこなわれるケースが多いです。
女性型脱毛症になりやすい人・予防の方法
女性型脱毛症は、女性ホルモンとの関連性が指摘されています。
通常、女性ホルモンの分泌が低下する更年期症状や一部のホルモンバランスに影響を与える薬剤の使用などは、女性型脱毛症の発症リスクを高める可能性があります。
乳がん治療のホルモン療法薬や経口避妊薬の使用なども、女性型脱毛症の発症に注意が必要です。
頭皮の血行不良につながるメタボリックシンドロームや高血圧症、動脈硬化、糖尿病なども、女性型脱毛症をきたしやすくなる可能性があります。
女性型脱毛症を完全に防ぐことは困難ですが、生活習慣の見直すことで予防につながる場合があります。
喫煙や暴飲暴食を控え、適度な運動やストレスの解消に取り組み、十分な睡眠を取ることを心がけましょう。
また、ビタミンDや亜鉛、鉄分の不足によって薄毛をきたすケースもあるため、さまざまな栄養素を摂取するためにバランスの取れた食生活を心がけることが重要です。
食事でまかなえない場合は、サプリメントを活用して補給することも検討すると良いでしょう。
参考文献




