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アレルギー性接触皮膚炎
松澤 宗範

監修医師
松澤 宗範(青山メディカルクリニック)

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2014年3月 近畿大学医学部医学科卒業
2014年4月 慶應義塾大学病院初期臨床研修医
2016年4月 慶應義塾大学病院形成外科入局
2016年10月 佐野厚生総合病院形成外科
2017年4月 横浜市立市民病院形成外科
2018年4月 埼玉医科総合医療センター形成外科・美容外科
2018年10月 慶應義塾大学病院形成外科助教休職
2019年2月 銀座美容外科クリニック 分院長
2020年5月 青山メディカルクリニック 開業
所属学会:日本形成外科学会・日本抗加齢医学会・日本アンチエイジング外科学会・日本医学脱毛学会

アレルギー性接触皮膚炎の概要

アレルギー性接触皮膚炎とは、皮膚が特定の物質(アレルゲン)に接触することで引き起こされる炎症性の皮膚疾患です。アレルギー性接触皮膚炎では、アレルゲンと接触した部分に湿疹、赤み(紅斑)やかゆみ、水ぶくれ(水疱)、腫れなどの症状があらわれます。

発症の原因となるアレルゲンには、金属や化粧品、食物、植物などがあり、これらが皮膚に接触することで、免疫反応が起きて症状が発生します。

アレルギー性接触皮膚炎の治療は、原因物質との接触を避けることが基本です。また、炎症やかゆみを抑えるための薬物治療や、保湿剤を用いた皮膚のバリア機能の強化も行われます。

アレルギー性接触皮膚炎は、特定のアレルゲンに対するアレルギーがある人に起こるため、アレルギー体質の方や、化学物質や金属に触れる機会が多い職業の方などに多くみられます。

アレルギー性接触皮膚炎の原因

アレルギー性接触皮膚炎の原因は、ハプテンとよばれる低分子のアレルゲン(抗原)に対する免疫反応です。

皮膚がはじめてアレルゲンに触れると、その物質に対して「感作」とよばれる現象が起こる場合があります。
感作とは、免疫系に関わる細胞がその物質を異物として認識し、記憶することです。この状態になると、次に再び同じアレルゲンに接触した際に、免疫反応が引き起こされ、炎症やかゆみなどの症状があらわれます。

原因となる物質には、金属や化粧品、食物、植物、医薬品などがあり、以下のようなものが挙げられます。
なお、原因物質は多岐にわたるため、原因の特定が難しい場合もあります。

  • 化粧品
  • 乳液、下地クリーム、ファンデーション、化粧水、パック剤、日焼け止め、アイシャドウ、マスカラ、口紅、リップクリーム、ジェルネイル、染毛剤 など

  • 食物・植物
  • ギンナン、キク科(キク、レタス、サラダ菜など)、ユリ科(タマネギ、長ネギ、ニンニク)、セリ科(セロリ、みつば)、アブラナ科(ダイコン、ブロッコリー)、ウルシ科(ウルシ、マンゴー)、柑橘類、健康食品(プロポリス、キチンキトサン)、サクラソウ など

  • 金属
  • ニッケル、コバルト、クロム、水銀、銅、マンガン、亜鉛、金 など

  • 医薬品
  • 抗菌薬、抗真菌薬、非ステロイド系消炎薬、ステロイド外用薬、緑内障治療点眼薬、消毒薬、潰瘍治療薬、保湿剤 など

  • その他
  • 樹脂(レジン)、ゴム、合成洗剤、セメント など

アレルギー性接触皮膚炎の前兆や初期症状について

アレルギー性接触皮膚炎の症状は、湿疹があらわれることが一般的ですが、症状は発症する場所や持続時間によって異なります。

アレルギー性接触皮膚炎を発症したばかりの急性の段階では、赤み(紅斑)やかゆみ、小さなぶつぶつとした盛り上がり(丘疹)、小さなみずぶくれ(小水疱)がみられます。とくに、まぶたや陰部では赤みや腫れ(浮腫)が目立つ場合があります。

症状が慢性化すると、皮膚が硬く厚くなってごわごわした状態になったり(苔癬化)、かさぶたや皮膚のひび割れができたり、色素沈着が生じたりすることがあります。これらの症状は、アレルギーの原因物質が直接触れた部分に起こりやすいですが、離れた部分にも症状がみられることがあります。

アレルギー性接触皮膚炎の検査・診断

アレルギー性接触皮膚炎の診断は、問診とパッチテストにもとづいて行われます。問診では、発症のタイミングや症状があらわれた場所、最近触れた物質などについて確認します。また、職業や日常生活における習慣についてもくわしく聞き取りを行い、可能性のあるアレルゲンを絞り込みます。

パッチテストは、疑わしいアレルゲンを含む試薬を皮膚に貼り付け、一定時間後に皮膚の反応を確認する検査です。この検査では、原因となるアレルゲンを特定することを目的としています。

パッチテストは、現在、アレルギー性接触皮膚炎の診断に最も有用であるとされている検査法です。ただし、すべての物質を網羅することは難しいため、事前の問診で絞り込んだアレルゲンに対して検査を行うことが一般的です。

アレルギー性接触皮膚炎の治療

アレルギー性接触皮膚炎の治療の基本は、原因と考えられるアレルゲンとの接触を避けることです。アレルゲンが特定された場合、その物質に触れる機会を可能な限り減らすことが重要です。

かゆみや炎症などの皮膚症状に対しては、抗ヒスタミン薬、ステロイド内服薬・外用薬を使用した薬物療法が行われます。また、皮膚の乾燥を防ぎ、バリア機能を向上させるために保湿剤を使用することもあります。これにより、症状の悪化を防ぎ、再発を予防することが期待されます。

アレルギー性接触皮膚炎になりやすい人・予防の方法

アレルギー性接触皮膚炎は、原因となる物質に対してアレルギーがある人にのみ起こると考えられています。したがって、アレルギー体質の方や職業上、化学物質や金属に頻繁に触れる方はなりやすい可能性があります。
職種としては、染毛剤やブリーチ剤を頻繁に取り扱う美容師や、塗料や金属などの化学物質を取り扱う製造業、ゴム手袋や消毒剤を使用する機会の多い医療従事者が多いです。

アレルギー性接触皮膚炎を予防するためには、日常生活でアレルゲンを含む原因物質との接触を避けることが重要です。アレルギー反応を生じる特定の成分が分かっている方は、化粧品や医薬品を使用する前に、必ず成分を確認するようにしましょう。

原因物質が特定できていない場合は、皮膚症状があらわれた状況やくわしい症状などを記録しておくことが、原因の特定や発症の予防に役立つ可能性があります。

職業上、アレルゲンに触れる機会が多い場合は、手袋の着用や作業環境の見直しが推奨されます。また、バリアクリームや保湿剤の使用により、皮膚のバリア機能を高めることも予防につながる場合があります。

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