監修医師:
松澤 宗範(青山メディカルクリニック)
2014年4月 慶應義塾大学病院初期臨床研修医
2016年4月 慶應義塾大学病院形成外科入局
2016年10月 佐野厚生総合病院形成外科
2017年4月 横浜市立市民病院形成外科
2018年4月 埼玉医科総合医療センター形成外科・美容外科
2018年10月 慶應義塾大学病院形成外科助教休職
2019年2月 銀座美容外科クリニック 分院長
2020年5月 青山メディカルクリニック 開業
所属学会:日本形成外科学会・日本抗加齢医学会・日本アンチエイジング外科学会・日本医学脱毛学会
目次 -INDEX-
体部白癬の概要
体部白癬は、白癬菌と呼ばれるカビが皮膚に感染して引き起こされる皮膚の病気です。
白癬菌による感染症で一般的によく知られているのが、足にできる足白癬(水虫)になります。
白癬菌は全身の様々な部位に感染することがありますが、体の皮膚(股部を除く)に感染したものを「体部白癬」と呼びます。
白癬の感染部位は、足が約60%、爪が約30%とほとんどを占め、体に発生する白癬は約7%と言われています。
体部白癬は、体の一部にかゆみを伴う赤い発疹が出るのが特徴です。この発疹は、丸い形をしていて少し盛り上がっています。
形が銭形をしているため「ゼニタムシ」と呼ばれることもあります。
一般的に人や動物から感染し、自分や他人の足白癬(水虫)からの感染のほか、白癬菌に感染している動物との接触、格闘技などのスポーツでの接触などが感染経路となります。
白癬菌に触れても、すぐに感染するわけではありません。そのため、感染のリスクがある場合は、体を綺麗に洗い、しっかりと乾燥させて、感染予防に努めることが重要です。
治療は、抗真菌剤の塗り薬を使用し、症状の程度や範囲に応じて内服薬が処方されることもあります。
体部白癬の原因
体部白癬は皮膚の角質層に真菌が侵入して増殖することで、さまざまな症状を引き起こします。
白癬菌は、皮膚に含まれているケラチンというたんぱく質をエサにして増殖することが特徴です。
このケラチンは皮膚の最外層や爪、髪の毛に多く存在するため、白癬菌は粘膜以外の皮膚や毛、爪に感染しやすくなります。
白癬菌の感染は人から人へ、あるいは動物や土壌を介しても広がることがあります。
格闘技など、接触するスポーツをする場合には注意が必要です。
犬や猫から人間にうつった場合には、頭や首、腕など動物と接触した露出部位に複数の発疹が出る傾向があります。
また自分自身の足や爪に存在する白癬菌が、体の他の部分に広がることもあります。
体部白癬の前兆や初期症状について
体部白癬は、最初は赤い小さなブツブツとして現れることが一般的です。
その後、時間とともに赤い輪の形に拡大していきます。
この輪の中心部は正常で、縁に沿った部分が乾燥し、かさかさとした皮疹が見られるのが特徴です。
大きさは数ミリから体全体に広がる場合もあり、感染箇所も1つから数十箇所に及ぶことがあります。
一度治癒した部分から再び遠心性に拡大する皮疹が生じることもあります。
中心部は治りやすい傾向がありますが、周辺には紅斑や小さな水疱、鱗屑(うろこ状の皮膚)が見られることが一般的です。
体部白癬の検査・診断
体部白癬は似た症状を示す別の皮膚疾患との鑑別が重要です。
似た症状が現れる疾患として、脂漏性皮膚炎や乾癬、膿痂疹などが挙げられます。
他の疾患と見分けるため、皮膚にカビの一種である皮膚糸状菌が存在するかを確認します。
また、体部白癬は他の部位、たとえば自身の足や爪などから広がることがあります。
そのため、体部だけでなく足や爪もチェックすることがあります。
顕微鏡検査
白癬菌は皮膚の表面にいる菌で、主に角質、毛、爪に寄生します。
感染していると思われる部分からピンセットやメスの刃、ハサミなど鱗のようなものや水ぶくれのカバー、爪や毛を採取し、顕微鏡で観察します。
白癬菌が存在する場合、カビが糸のように見えたり、小さな胞子が分かれて見えたりするため、カビの存在を確認できます。
培養検査
顕微鏡による診断が難しい場合や、原因菌の特定が必要な場合には、真菌培養を行うこともあります。ただし、判定には約2週間かかります。
ウッド灯検査
顕微鏡検査や培養検査に加えて、ウッド灯(ブラックライト)を用いた検査が行われることもあります。特定の真菌はウッド灯の下で蛍光を発するため、診断の一助となります。
体部白癬の治療
治療には、患部や症状に応じて内服薬や外用薬を使用します。
体部白癬は、湿疹などの別の皮膚疾患と混同されやすく、誤ってステロイドの塗り薬を使うと症状が悪化することがあります。そのため、正確な診断のもと、適切な治療を行うことが重要です。
外用薬
体部白癬の治療では、外用抗真菌薬の使用が基本です。
外用薬にはクリームや軟膏、液剤などの種類があります。
入浴時は、患部をよく洗い、外用薬を広範囲に塗布し、乾燥を保つことが重要です。
治療期間は約2週間が目安ですが、感染の程度によってはさらに長期間の使用が必要になるケースも少なくありません。
内服薬
爪や毛穴に症状があり外用薬だけでは不十分な場合や、症状の範囲が広い場合、感染を繰り返す場合などは、抗真菌剤を内服します。
内服薬には、それぞれの投与方法や注意点があるため医師の指示に従うことが大切です。
白癬は見た目に症状がなくなってても、毎日治療を続けることが重要です。
1週間ほど薬を塗り続ければ症状は軽減してきますが、まだ真菌が生き残っていることがあります。
自己判断で治療を中断すると再発してしまうことがあるため、注意が必要です。
体部白癬になりやすい人・予防の方法
体部白癬は人や動物、または自分自身の足白癬などから感染します。そのため、足白癬の患者や、格闘技などのコンタクトスポーツをしている人、白癬菌に感染している動物と触れ合う機会がある人、また公衆浴場などでタオルやバスマットを共有する機会が多い人は、感染リスクが高いと言えるでしょう。
白癬菌は、皮膚に触れるとすぐ感染するわけではなく、長時間付着することで感染のリスクが高まります。
感染のリスクがある場合は、皮膚を清潔に保ち、乾燥させることが重要です。
足や爪に白癬がある場合は、自分や周囲に感染が広がらないように、治療を受けるとともに対策を講じることが必要です。
格闘技やスポーツを行った後は、できるだけ早くシャワーを浴びて全身を洗い、ドライヤーで髪や頭皮を乾かすことが予防につながります。
また、タオルやマットを共有することは、感染を広げる恐れがあるので避けましょう。
家の中をしっかり掃除することも大切です。
自分や家族に足白癬がある場合、そのままにしておくと他の人にも感染してしまう可能性があるため、全員が治療を受けることで再発や再感染のリスクを減らせます。
ペットに皮膚のトラブルがある場合は、接触を避け動物病院に連れて行きましょう。
参考文献