監修医師:
久高 将太(琉球大学病院内分泌代謝内科)
目次 -INDEX-
黒色表皮腫の概要
黒色表皮腫(こくしょくひょうひふしゅ)は、皮膚が徐々に黒ずみ、厚くなり、硬くてざらざらとした感触(ビロード状)になる皮膚の病気です。一般的に脇の下や首の後ろ、関節の内側などの皮膚のしわに好発します。
黒色皮膚腫は、他の病気に合併して発症することが多いのが特徴です。病型は肥満症などに合併する「肥満関連型黒色表皮腫」、2型糖尿病や全身性エリテマトーデスなどに合併する「症候型黒色表皮腫」、内臓系のがんに合併する「悪性型黒色表皮腫」の3つに分類されます。
黒色表皮腫は命に関わる病気ではありませんが、体の中で何か異常が起きているサインだと言えるでしょう。皮膚の黒ずみや質感の変化などに気づいた場合は、医療機関を受診しましょう。
黒色表皮腫の原因
黒色表皮腫は、他の病気の合併症としてあらわれることが多く、なかでも肥満症が原因のケースが多く見られます。
肥満症によって、血糖値を下げるインスリンというホルモンの働きが乱れることが関係しています。症候型の黒色皮膚腫も同様に、インスリンが関係しています。
その他にも、がんの発生や先天性、薬の副作用でも起こることがあります。がんが原因の場合は症状が広い範囲に出ることが多く、先天性の場合は新生児から10代くらいまでゆっくり進むのが特徴です。また、免疫の病気や、皮膚がこすれたり汗をかいたりすることでも黒色皮膚腫を発症することがあります。
黒色表皮腫の前兆や初期症状について
黒色表皮腫では、色素の沈着、肥厚化、質感の変化が主な症状です。時折、かゆみが生じることもあります。黒色表皮腫の症状は通常、特定の部位に左右対称で症状があらわれるのが特徴ですが、まれに片側に生じることもあります。また、病型によって症状があらわれる範囲や程度などに違いがあります。
皮膚の色素沈着
黒色表皮腫を発症すると、皮膚が徐々に濃くなります。最初は灰褐色として始まり、徐々に暗褐色、そして黒色へ変化していきます。発症したばかりの段階では、日焼けと見間違われることもありますが、時間が経っても皮膚の色が戻らないのが特徴です。
皮膚の肥厚化や質感の変化
色素沈着に続いて、皮膚が徐々に厚くなると同時に、表面が硬くてざらざらとした感触になります。触ると凹凸を感じるようになり、進行するといぼ状の隆起が見られることもあります。
黒色表皮腫の検査・診断
黒色表皮腫の診断は、症状のある皮膚の場所や状態、範囲、皮膚の色の変化、表面の様子などから総合的に判断することで可能です。
ただし、他の皮膚の病気との見分けが難しい場合は、より詳しい検査が必要です。
視診・触診
医師は症状のある部分を注意深く観察し、皮膚の色の変化や表面の状態を確認します。肉眼で判断できることもありますが、難しい場合は皮膚を拡大して観察できる「ダーモスコープ」という機器を使って調べることもあります。
また、皮膚に触れることで、皮膚の厚みや硬さ、表面の質感などを詳しく調べます。触診は特に重要で、ビロードのような特徴的な手触りや皮膚の盛り上がりの程度を確認します。
皮膚生検
皮膚生検は確実な診断のために行います。局所麻酔をして皮膚の一部を採取し、顕微鏡で詳しく観察します。皮膚の厚みや色素の沈着の度合い、皮膚の構造の変化などを確認することで、黒色表皮腫の特徴的な変化を見つけられます。
血液検査
血液検査では主に2つの目的で検査を行います。一つは糖尿病などの代謝異常を調べるためです。血糖値やHbA1c(糖と結びついているヘモグロビンの割合)、インスリンの値を測定します。
もう一つは、腫瘍マーカーを調べるためです。体の中にがんがないかを調べる検査で、特に胃がんなどの消化器のがんを示すCEAという物質や、膵臓などのがんを示すCA19-9という物質を調べます。これらの数値が高くなっている場合、がんが疑われるため、さらに詳しい検査が必要です。
画像検査
レントゲンや超音波検査、CTスキャンなどを使って、体の内部を詳しく調べます。特に、がんの可能性が考えられる場合には、PET-CTという特殊な検査でがんの有無や広がりを調べることがあります。
遺伝子検査
黒色表皮腫の家族歴があったり、出生当初から黒色表皮腫が疑われる場合は、遺伝子検査を行うことがあります。しかし、この検査はあまり一般的ではありません。
黒色表皮腫の治療
黒色表皮腫では、原因となっている病気の治療が重要です。
糖尿病が原因なら血糖値を正常に戻す治療を、がんが原因なら腫瘍に対する治療を行います。肥満が原因の場合は、医師や栄養士に相談しながら、無理のない方法で体重を減らしていきます。
皮膚の症状を和らげるために塗り薬を塗布したり、皮膚症状が重い症例にレーザー治療を適用したりすることもあります。
黒色表皮腫になりやすい人・予防の方法
黒色表皮腫は、肥満症の方は特に注意が必要です。
また、糖尿病でインスリンの値が高い状態が続いている方も要注意です。血糖値のコントロールが上手くいかない状態が続くと、黒色表皮腫が出現しやすくなります。その他、甲状腺機能や副腎機能などのホルモンバランスに問題がある方も発症リスクが高くなります。
予防法は、定期的な健康診断を受けることです。血糖値や肥満度、ホルモンの状態などをチェックし、異常があれば早めの対処が大切です。特に糖尿病の家族歴がある方は、年齢に関係なく、定期的に検査を受けることをおすすめします。
日常生活では、適切な体重管理が重要な予防法となります。バランスの良い食事と適度な運動を心がけ、肥満を防ぐことで発症リスクを下げられます。また、喫煙や過剰な飲酒は、2型糖尿病や悪性腫瘍など、黒色皮膚腫の原因となる病気のリスクであるため、避けるようにしましょう。
皮膚のケアも重要な予防策です。過度な摩擦や圧迫は、症状を誘発する可能性があるため、きつすぎる衣服は避けるようにします。特に首回りや脇の下などの皮膚の擦れやすい部分は十分にケアをして、過度な摩擦を避けることが大切です。
関連する病気
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参考文献