目次 -INDEX-

脱毛症
井林雄太

監修医師
井林雄太(井林眼科・内科クリニック/福岡ハートネット病院)

プロフィールをもっと見る
大分大学医学部卒業後、救急含む総合病院を中心に初期研修を終了。内分泌代謝/糖尿病の臨床に加え栄養学/アンチエイジング学が専門。大手医学出版社の医師向け専門書執筆の傍ら、医師ライターとして多数の記事作成・監修を行っている。ホルモンや血糖関連だけでなく予防医学の一環として、ワクチンの最新情報、東洋医学(漢方)、健康食品、美容領域に関しても企業と連携し情報発信を行い、正しい医療知識の普及・啓蒙に努めている。また、後進の育成事業として、専門医の知見が、医療を変えるヒントになると信じており、総合内科専門医(内科専門医含む)としては1200名、日本最大の専門医コミュニティを運営。各サブスぺ専門医、マイナー科専門医育成のコミュニティも仲間と運営しており、総勢2000名以上在籍。診療科目は総合内科、内分泌代謝内科、糖尿病内科、皮膚科、耳鼻咽喉科、精神科、整形外科、形成外科。日本内科学会認定医、日本内分泌学会専門医、日本糖尿病学会専門医。

脱毛症の概要

脱毛症は、正常なサイクルでの生え変わりを上回るペースで毛が抜けていく状態を表す言葉です。脱毛症と聞いてまずイメージするのは頭髪だと思いますが、それ以外の箇所である眉毛、まつ毛ほか全身の体毛にも脱毛症が起こる可能性があります。

脱毛症とは毛が抜ける症状の総称であり、大別すると毛を作る働きを持つ毛包や毛が何らかの理由で壊れてしまうことによるもの、または毛の生え変わる周期が乱れることで抜け毛が通常よりも多くなってしまうことに分けられます。

そのため、一口に脱毛症と言っても、種類や原因によって治療方法が異なり、治療にあたっては正しい診断のもと、原因を特定する必要があります。
特に、精神的ストレスなどが原因とされる抜毛癖(トリコチロマニア)は自分自身で毛を抜いてしまう行為によるもので、毛髪そのものに問題はないため、脱毛症と間違えないように注意が必要です。

脱毛症の原因

脱毛症の原因は、その病気によって大きく異なります。
以下に病気ごとの原因を紹介していきます。

男性型脱毛症(AGA)
AGAは男性ホルモンと遺伝が関係する脱毛症で、ジヒドロテストステロンという男性ホルモンの働きが強くなることが主な原因です。
このジヒドロテストステロンが男性ホルモン受容体に作用すると、毛髪の伸びが抑制されてしまいます。
したがって、頭部の中でも男性ホルモン受容体が多く存在する前頭部や頭頂部の脱毛が目立つようになります。
具体的には前頭部がM字型、頭頂部でO字型に頭髪が薄くなる症状が見られます。

男性型脱毛症では毛髪が一気に抜けるということはなく、まず髪のハリやコシがなくなっていくという髪質の変化から始まり、次第に脱毛が進んでいく特徴があります。

円形脱毛症
円形脱毛症はその名の通り、主にコインほどの大きさの範囲で、脱毛が1つないし複数見られる症状のことです。
円形の脱毛が1~2箇所に現れる単発型、10箇所以上に表れる多発型のほか、頭髪全てが脱毛する全頭型、頭髪以外の眉毛やまつ毛、それ以外の体毛にも脱毛が見られる汎発型、そして側頭部から後頭部の生え際に脱毛が見られる蛇行型といった形態があります。

円形脱毛症の原因は複数の説が唱えられており、未だ決定的な原因は解明されておりません。ですが、現状で判明している有力な原因を以下にご紹介します。

円形脱毛症は、病原体などから身体を守る免疫の働きに異常が生じ、髪の毛の元となる細胞の集まりである「毛包」を攻撃してしまう自己免疫疾患と考えられています。

ほかには遺伝的要因の影響や、アトピー性疾患の既往歴がある人などは円形脱毛症を発症する確率が高いと言われています。
また、過度のストレスも自己免疫疾患や内分泌疾患の原因となり得ます。

先天性脱毛症
特定の遺伝子の変異により、生まれつき毛髪の成長に異常が見られる病気です。
頭の毛や全身の体毛が全くない状態だったり、毛はあってもまばらで縮れた状態だったりします。
先天性の脱毛症では、ほとんどの場合において生涯、治癒することはありません。
希少疾患であり、日本国内では1万人に1人の割合で発症するとの説もありますが、はっきりした発症の頻度は分かっておりません。

感染性脱毛症
頭部に白癬菌が感染することで円形脱毛症のような形状の脱毛が見られることや、性病の一種である梅毒の原因菌である梅毒トレポネーマに感染することで、側頭部から後頭部にかけて脱毛が見られる場合があります。

脱毛症の前兆や初期症状について

脱毛症の前兆は、脱毛を引き起こす原因によって異なります。

男性型脱毛症では、脱毛が起きる前に髪質が変化していく傾向にあります。
髪が細くなる、ボリュームがなくなる、ハリ、コシがなくなるといった症状が見られ、髪の毛が産毛のような状態になり、その後、徐々に脱毛が進んでいきます。

円形脱毛症の初期症状としては、突然抜け毛が多くなる症状が現れます。
通常のサイクルでは1日に50〜100本の頭髪が抜けていきますが、それ以上の脱毛が見られる場合は注意が必要です。

また、円形脱毛症では抜け毛以外に頭皮のかゆみや赤み、湿疹のほか、意外な点として爪のへこみが挙げられます。
爪の表面に点状のへこみが現れる症状を「爪甲点状陥凹(そうこうてんじょうかんおう)」と呼びます。
これは免疫系の異常によって起きることが多く、しばしば円形脱毛症と関連して起こる場合があります。

先天性脱毛症では生後数ヶ月、あるいは思春期までという早期に脱毛が起こります。

感染性脱毛症においては、白癬性脱毛の場合、頭皮に白癬菌が感染した後、痒くなったり、皮膚が剥がれ落ちたりするほか、多量のフケの発生や頭皮の炎症が起き、脱毛が起こります。
梅毒性の脱毛症では、梅毒に感染してから数ヶ月くらいで、頭部の後ろから横の部分にかけて脱毛します。

脱毛が気になる場合は、まず皮膚科で相談してください。

脱毛症の検査・診断

脱毛の原因によって検査や診断に至る過程は異なります。
男性型脱毛症では問診、頭部の撮影による所見、拡大鏡を用いての毛髪の太さの確認などを行います。
それ以外にも、血液検査で男性ホルモンの分泌具合や栄養状態を確認することも重要です。

円形脱毛症では脱毛部の状態や面積を視診にて確認します。
また、前兆・初期症状の項目でも述べたように、爪の状態の確認も併せて行われる場合があります。
問診にて、自分自身で毛髪を抜いてしまう抜毛症との区別も必要となります。

先天性脱毛症は遺伝が関係しているため、家族の既往歴の確認や、場合によっては診断の確定のため遺伝子検査を行う場合もあります。

感染症由来の脱毛では、感染源の特定のため血液検査を行うことが一般的です。

脱毛症の治療

各種脱毛症に合わせた治療が行われます。

男性型脱毛症では、飲み薬や外用薬を用いて治療を行います。

円形脱毛症は多くの場合自然に回復していきますが、症状が改善しない場合にはステロイドの塗り薬や人工的にかぶれを起こして発毛を促す局所免疫療法、その他、紫外線を照射する光線療法などが行われます。

また、急激な症状の進行に対しては、ステロイドや免疫抑制剤の内服による治療が行われることもあります。

梅毒や白癬菌の感染が原因の場合は感染症の治療を行います。
先天性の脱毛症においては根本的な治療法はなく、かつらの着用などで日常生活に支障が出ないような対応を取ります。

脱毛症になりやすい人・予防の方法

脱毛症の種類によって要因は異なりますが、脱毛症になりやすい人としては遺伝、体質、男性ホルモンの量、自己免疫疾患、アトピー素因の有無などが考えられます。

取れる予防策としては、上記にあてはまる人は普段から毛髪の状況を定期的にチェックしておくことが考えられます。
とは言え、あまり気にしすぎてもストレスにつながりますので、規則正しい生活やバランスの良い栄養の摂取のほか、メンタルヘルスの向上につながる生活習慣を心掛けるとよいでしょう。

同時に、紫外線や熱による頭皮へのダメージを減らす対策を取り、また、頭皮の血流が悪化するような生活習慣に気をつけるほか、感染症へのリスクを減らす行動も重要です。
環境や身体を清潔に保ち、性感染症の予防にも意識を向けましょう。

この記事の監修医師