西田 陽登

監修医師
西田 陽登(医師)

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大分大学医学部卒業。大分大学医学部附属病院にて初期研修終了後、病理診断の研鑽を始めると同時に病理の大学院へ進学。全身・全臓器の診断を行う傍ら、皮膚腫瘍についての研究で医学博士を取得。国内外での学会発表や論文作成を積極的に行い、大学での学生指導にも力を入れている。近年は腫瘍発生や腫瘍微小環境の分子病理メカニズムについての研究を行いながら、様々な臨床科の先生とのカンファレンスも行っている。診療科目は病理診断科、皮膚科、遺伝性疾患、腫瘍全般、一般内科。日本病理学会 病理専門医・指導医、分子病理専門医、評議員、日本臨床細胞学会細胞専門医、指導医。

乾癬の概要

乾癬(かんせん)は、慢性炎症性疾患の一つで、皮膚科の患者さんの約2〜3%に見られます。
主な特徴は、赤く盛り上がった皮疹に銀白色の鱗屑(りんせつ)が付着し、正常な皮膚との境目が明瞭であることです。
かゆみはあるものの湿疹ほど強くはなく、乾燥したかさぶたがぼろぼろと剥がれ落ちる落屑(らくせつ)として現れます。

乾癬の原因は完全には解明されていませんが、免疫系の異常が関与しているとされています。
日本では約10万〜20万人が乾癬を患っており、特に20〜50歳代の男性に多く見られます。
この疾患は、皮膚のターンオーバーが異常に早まり、不完全な角質が剥がれ落ちることで特徴的な皮疹を引き起こします。
主に頭皮、肘、膝、臀部、すねなど、日常的に刺激を受けやすい部位に発生します。

乾癬は感染症ではないため他人に感染することはなく、関節炎やぶどう膜炎、炎症性腸疾患、心血管疾患などを併発する全身性の炎症性疾患としても知られています。
国内の罹患率は約0.34%で、患者数は増加傾向にあります。
乾癬には尋常性乾癬、乾癬性関節炎、滴状乾癬、乾癬性紅皮症、膿疱性乾癬の5種類があり、それぞれ異なる特徴を持ちます。
最近では、治療法が進歩しており、多くの患者さんが症状をコントロールしやすくなっています。
適切な治療を受けることで、生活の質が向上します。

乾癬の原因

乾癬の原因は、遺伝的要因と環境因子が組み合わさって発症すると考えられています。
また、ストレスや感染症、特定の薬剤が引き金となることもあります。

物理的な皮膚の傷や摩擦も乾癬が悪化する要因となります。
暴飲暴食や偏食などの不規則な食生活もリスクを高める要因です。

乾癬の発症には免疫系の異常が深く関わっており、炎症を引き起こす物質(TNF-αやIL-23、IL-17など)が過剰に反応することで皮膚の新陳代謝が通常よりも早く進みます。
通常28日かかる皮膚のターンオーバーが、乾癬患者では4〜5日と短くなり、銀白色の鱗屑が皮膚に現れる原因となります。

このように、遺伝的素因とともに、生活習慣や環境要因が複雑に絡み合い、乾癬の発症と進行に影響を与えます。

乾癬の前兆や初期症状について

乾癬は、初期に赤く盛り上がった円形または楕円形の斑点(紅斑)として現れ、表面には白色や銀白色の乾燥した角質(鱗屑)が付着します。
境界がはっきりしており、かゆみはあるものの湿疹ほど強くありません。
進行すると、これらの皮疹が広がり、赤みが目立つようになります。

乾癬にはいくつかのタイプがあります。
最も一般的なのは尋常性乾癬で、頭皮、肘、膝などに現れます。
滴状乾癬は、小さな紅斑が全身に広がり、特に子供に多く、風邪や扁桃炎の後に発症することがあります。
乾癬性紅皮症は全身が赤くなる状態で、膿疱性乾癬は発熱と膿疱が特徴です。
関節症性乾癬は皮膚症状に加えて関節の痛みや腫れを伴います。

乾癬の症状が現れた場合は、早めに皮膚科を受診して適切な診断と治療を受けることが重要です。
乾癬は見た目やかゆみ、関節痛が日常生活に影響を与えることがあり、精神的な負担にもなりえます。
医療機関で治療を受けることで、症状の悪化を防ぐことが可能です。

乾癬の検査・診断

乾癬の診断には、問診と血液検査が基本です。
患者さんの症状や病型を把握し、適切な治療法を判断します。
皮膚の状態を視診や触診で診断しますが、ほかの皮膚疾患との区別のために皮膚生検を行うこともあります。
皮膚生検では、皮膚の一部を採取し、顕微鏡で確認します。

乾癬の特定には、リンパ球の異常や免疫系の変化が確認されることが多く、血液検査でこれらの異常を評価します。
また、関節症状がある場合は、関節エコーやMRI、レントゲンなどの画像検査を行い、関節炎の有無を確認します。
乾癬性関節炎の早期診断は難しいため、皮膚科またはリウマチ内科を受診することが一般的です。

また、生物学的製剤の使用を検討する際には、悪性腫瘍や感染症の有無を確認するために、CTスキャンを含むスクリーニング検査が必要です。

乾癬の治療

乾癬の治療法は、症状の重さや病型によって選ばれます。以下に主な治療法を紹介します。

外用療法

軽度の乾癬には、ステロイド外用剤やビタミンD3外用剤が用いられます。
ステロイドは炎症を抑える効果があり、ビタミンD3は皮膚の過剰な細胞増殖を抑制します。

これらの外用薬を皮膚に直接塗布し、急性症状にはステロイドとビタミンD3が配合された薬が使われることもあります。外用療法は、副作用が少なく、日常的に使用できるのが利点です。

光線療法

中程度から重度の乾癬には、光線療法が有効です。紫外線を利用するこの治療法には、ナローバンドUVB療法とPUVA療法があります。
ナローバンドUVB療法では、特定の波長の紫外線を用いて免疫細胞の活動を抑制し、皮膚の炎症を軽減します。PUVA療法は、ソラレンという感光性物質を使用してUVAを照射します。光線療法は外用薬で効果が見られない場合にも有効で、週1回から月1回の頻度で行われます。副作用として、やけどや色素沈着のリスクがあるため、専門医による慎重な管理が必要です。

内服療法

重度の乾癬や関節症状がある場合、内服療法が選択されます。使用される薬剤には、免疫抑制薬(シクロスポリン、メトトレキサート)、ビタミンA誘導体(エトレチナート)、DE4阻害薬(アプレミラスト)などがあります。
これらの薬は、免疫系を抑制することで症状を改善しますが、感染症のリスクやほかの副作用があるため、定期的な検査が必要です。

生物学的製剤

難治性の乾癬や重度の関節症性乾癬には、生物学的製剤が使用されます。抗TNF-αや抗IL-17などの特定の炎症因子をターゲットにしており、高い治療効果が期待できます。
点滴投与や自己注射で治療を行いますが、免疫抑制作用が強いため、感染症のリスクが高いことが知られています。

各治療法を組み合わせ、患者さんの症状や生活スタイルに合わせて治療を行います。

乾癬になりやすい人・予防の方法

乾癬になりやすい人

乾癬は遺伝的要因と環境因子が組み合わさることで発症リスクが高まる疾患です。遺伝的素因を持つ人に加え、皮膚の傷、喫煙、暴飲暴食、偏った食生活、感染症などもリスクファクターとして挙げられます。
特に不規則な生活習慣や肥満は、乾癬の発症リスクを高める要因とされています。ストレスも乾癬の悪化を誘発することがあるため、注意が必要です。

予防の方法

乾癬の予防には、まず規則正しい生活を心がけることが重要です。バランスの取れた食事を摂り、適度な運動を行い、ストレスを適切に管理することが求められます。また、禁煙も推奨されており、乾癬の発症リスクを低減させることが期待できます。
食事は、高カロリーや高脂肪のメニューを避け、野菜を中心にした食事を心がけましょう。また、青魚に含まれるDHAやEPAは、炎症を抑える効果が期待できます。香辛料やアルコールはかゆみを悪化させることがあるため、できるだけ控えることが望ましいです。
さらに、乾癬は免疫系の異常に関連するため、感染症予防も重要です。風邪や気管支炎などの感染症は乾癬を悪化させる可能性があるため、適切な予防対策を講じることが必要です。
乾癬は一度発症すると長期的な治療が必要になることが多いため、早期に予防策を取ることが大切です。また、紫外線の過度な照射は症状を悪化させることがあるため、日光浴も適度に抑えることが望ましいです。異常が見られたら、皮膚科専門医に相談することが重要です。


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