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乾皮症
高藤 円香

監修医師
高藤 円香(医師)

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防衛医科大学校卒業 / 現在は自衛隊阪神病院勤務 / 専門は皮膚科

乾皮症の概要

乾皮症とは、皮膚の表面の水分量や皮脂量が年齢や外的刺激によって低下し、肌の表面が乾燥した状態のことです。
症状の程度は人によって異なりますが、乾燥によって皮膚がカサつき、ひび割れや痒みなどの症状を伴うことがあります。

主に年齢と共に体内の水分量が減少しやすい高齢者に多くみられます。

乾皮症

乾皮症の原因

乾皮症の原因は大きく以下の3つの要因に分類されます。

  • 皮膚のバリア機能の低下
  • 生活習慣
  • その他

皮膚のバリア機能の低下

人間の体内水分量は生まれた時が一番多く、成長と共に徐々に減少していきます。特に高齢者の場合は肌の水分量が若年層と比較して少なく、皮膚のバリア機能が低下しやすい状態になっています。そのため肌トラブルを起こしやすくなり、痒みやひび割れなど乾皮症の症状に悩まされる人が多くなります。

冬場の乾燥した空気や、夏場のエアコンの使用による風は皮膚の水分を奪うことがあります。このような外的要因が皮膚の刺激となって、乾皮症を誘発する原因となる可能性があります。

また誤った方法で行うスキンケアも乾皮症を発症するリスクがあります。特に肌に合わない刺激の強い洗浄料の使用は、汚れだけでなく必要な皮脂まで落としてしまい、水分と皮脂バランスを低下させて乾燥を悪化させます。

さらにアトピー性皮膚炎など、他の皮膚疾患が乾皮症の原因となることもあります。炎症性の皮膚疾患により皮膚のバリア機能が低下するため、肌の水分が逃げるため乾皮症は増悪しやすくなります。そのため、皮膚疾患は乾皮症のリスクとなり得ます。

生活習慣

乾皮症は入浴方法や飲酒・喫煙などの生活習慣にも影響を受けます。例えば長時間高い温度のお湯に入浴すると、必要な皮膚の皮脂まで洗い流してしまうため、乾燥を悪化させます。

その他

一部の乾皮症は、遺伝的な要素が関与する場合があることが示唆されています。これは色素性乾皮症と呼ばれ、難病指定されている疾患です。

また 腎臓病や糖尿病など、他の病気によって皮膚が乾燥することがあります。これらの病気によって体内の水分量を一定に保つことが難しくなり、乾燥しやすくなります。

一部の薬剤では、副作用として皮膚の乾燥を引き起こすことがあります。ただしすべての人に副作用が出るわけではないため、実際に服用してみないとわかりません。

乾皮症の前兆や初期症状について

乾皮症の前兆や初期症状は人によって症状の程度や感じ方が大きく異なります。初期症状として代表的なものは皮膚の乾燥で、手足によくみられます。皮膚の表面にカサカサと乾いた状態や、粉をふいているような所見が見られたら注意が必要です。

乾燥が進行すると、次第に痒みや皮膚の赤み、ひび割れが現れ始めます。場合によっては、皮膚が硬くごわついた状態となることや、鱗屑(りんせつ)という皮膚の表面が魚の鱗のように見える所見が見られることがあります。

乾皮症の多くは軽度な症状から始まり、進行すると徐々に強い痛みや出血を伴うようになります。一度悪化した皮膚を改善するには時間がかかるため、前兆が出ていると感じた場合は早期的に皮膚科を受診し、治療に臨むことが大切です。

乾皮症の検査・診断

乾皮症は、皮膚の乾燥や赤み・ひび割れ、鱗屑(りんせつ)の症状が出ているか視診によって診断します。さらに、アトピー性皮膚炎や接触性皮膚炎、魚鱗癬の症状と類似していることから乾皮症と鑑別する必要があります。

鑑別診断に必要な検査として、アレルギーの原因物質をとくていするためのパッチテストや顕微鏡で組織を詳しく調べる生検、細菌や真菌などの感染症の原因を調べる培養検査があります。

これらの検査結果に加えて乾皮症に特徴的な皮膚の見た目や症状、病歴、生活習慣を総合的に判断して乾皮症を診断します。

乾皮症の治療

乾皮症が起こる主な原因は乾燥です。そのため乾皮症の治療では乾燥しないよう、保湿を徹底します。保湿をすることで皮膚の水分量を保ち、油分量を調整します。脆弱化してしまった皮膚のバリア機能を回復させて、乾燥に負けない肌作りの土台を整えることを目的としています。

炎症性皮膚疾患による皮膚の炎症が強い場合には炎症を抑えるステロイド軟膏などの処方が行われる場合があり、医師の指示に従い継続的に治療薬を塗布することが大切です。

また、乾燥が強い場合は保湿する回数やタイミングも重要です。1日2回以上の保湿や入浴後肌に水分が多く含まれたタイミングで保湿するなど、乾燥していない状態を維持することが重要です。
なお、乾皮症予防であれば、市販の保湿剤でも問題ありませんが、治療には有効ではありません。必ず、受診して処方された薬剤を使用しましょう。

乾皮症は自己判断で保湿を中断している人に再発しやすいことでも知られています。表面的には回復したように見えても、十分に水分量が保持されていない場合はすぐにまた乾皮症になることがあるため、治療の継続•終了は医師の判断を仰がないといけません。

乾皮症になりやすい人・予防の方法

乾皮症は、年齢を重ねるにつれて、皮膚の皮脂分泌量が減り、バリア機能が低下しやすい高齢者や、皮膚が薄くバリア機能が未熟な乳幼児に起こりやすい疾患です。

また、男性よりも女性の方が起こりやすい傾向にあります。理由として、女性ホルモンの変動によるものや、家事などで手洗いや消毒の機会が多く肌バリアが壊れやすいことが原因と考えられています。

加えて腎臓病や糖尿病などの疾患を持つ人も乾皮症になりやすいといえます。この場合、皮膚科だけでなくそれぞれの疾患に対して適切な治療が必要です。もし薬の副作用などが乾皮症に影響する場合、それぞれの専門医にも相談しないといけません。

そのほかにも乾皮症を予防するためには、以下の生活習慣を心がけることが大切です。

喫煙や飲酒

喫煙や飲酒は、皮膚のバリア機能を低下させる要因の一つといわれています。適度な量の摂取は問題ないですが、過剰に摂取し続けることは身体に大きな負担となることがあります。体への負担が少ない量と頻度に抑えることが大切です。

バランスの取れた食事

ビタミンやミネラル不足は乾皮症の誘発因子となることがあります。バランスよく食事を摂ることでビタミン・ミネラルの摂取が可能です。

十分な睡眠

睡眠不足は、皮膚の再生を妨げ、乾燥を悪化させる可能性があります。適切な睡眠時間と質の高い睡眠によって、皮膚機能の向上が期待できます。

ストレスを溜めない

ストレスによって起こる自律神経の乱れは、皮膚の抵抗力を弱め、乾燥を悪化させる可能性があります。運動や趣味などでストレスを発散することが肌のコンディションを整えるために重要です。


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