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痒疹、ストロフルス
五藤 良将

監修医師
五藤 良将(医師)

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防衛医科大学校医学部卒業。その後、自衛隊中央病院、防衛医科大学校病院、千葉中央メディカルセンターなどに勤務。2019年より「竹内内科小児科医院」の院長。専門領域は呼吸器外科、呼吸器内科。日本美容内科学会評議員、日本抗加齢医学会専門医、日本内科学会認定医、日本旅行医学会認定医。

痒疹の概要

痒疹は、皮膚に強いかゆみを伴う小さな丘疹を形成する皮膚の慢性の炎症性疾患です。一般的に成人や高齢者に見られることが多く、持続的なかゆみとかゆみのために引っ掻くことによってさらに悪化することが特徴です。ストロフルスは、主として5歳以下の幼少児や子どもに見られる痒疹の一種であり、虫刺されやアレルギー反応に関連することが多いと言われています。

痒疹の原因

どちらもかゆくなることがきっかけとなって進行・悪化するため、具体的には以下のようなものが考えられています。

アレルギー反応

食物アレルギーや環境アレルゲン(ダニ、花粉など)に対する過敏反応が原因となることがあります。

虫刺され

蚊やダニなどの虫刺されが原因で、皮膚のかゆみと発疹が生じることがあります。ストロフルスに関しては、子供の未熟な免疫系が虫刺されやアレルゲンに対して過剰に反応することが原因とされています。

ストレス

精神的なストレスが皮膚の免疫反応を変化させ、痒疹の発生につながることがあります。

慢性疾患

慢性的な疾患として、肝炎・肝硬変や原発性胆汁性胆管炎などの胆汁の流れが悪くなって黄疸を引き起こすような肝疾患、慢性腎不全、透析関連のかゆみなどの腎疾患などが背景にある場合があります。

慢性的な肝疾患

  • 肝炎 特にC型肝炎などの慢性ウイルス性肝炎は、かゆみを引き起こすことがあります。
  • 肝硬変 肝硬変は、さまざまな慢性肝疾患の最終段階であり、肝臓の広範な線維化を特徴とします。肝硬変患者さんの多くは、夜間に悪化する傾向のあるかゆみを伴います。
  • 原発性胆汁性胆管炎 原発性胆汁性胆管炎は、肝内胆管に対する慢性的・持続的な炎症と破壊を引き起こす自己免疫性疾患です。全身性の強いかゆみを経験することが多いと言われています。

慢性的な腎疾患

  • 慢性腎不全 慢性腎不全は、腎臓機能の持続的な低下を特徴とする疾患です。慢性腎不全の進行に伴って尿毒症が進行し、体内や皮膚に毒素や代謝産物が蓄積することにより、全身性のかゆみを引き起こします。

透析関連かゆみ

慢性腎不全の患者さんの多くは透析治療を受けることになり、透析に関連したかゆみが問題となります。透析中や透析後の毒素が十分に除去されない場合にかゆみが発生します。このかゆみは、しばしば夜間に悪化し、痒疹を引き起こすことがあります。

糖尿病による皮膚疾患

糖尿病は、血糖値が高くなる慢性疾患であり、皮膚の健康にも大きな影響を及ぼします。高血糖状態が続くと、皮膚のバリア機能が低下し、感染症や乾燥を引き起こしやすくなります。また、糖尿病による血管障害によって皮膚への血流が減少し、皮膚の栄養状態を悪化させます。さらに、糖尿病患者さんは免疫機能が低下するため、感染症に対する抵抗力が弱まり、皮膚に感染が起こりやすくなります。これらの要因が痒疹の発生に寄与します。

痒疹の前兆や初期症状について

強いかゆみ

発疹が現れる前に強いかゆみを感じることがあります。

小さな丘疹や水疱

かゆみのある部位に赤い丘疹や水疱が現れます。これらの発疹はしばしば複数で認められます。ストロフルスでも丘疹が主に手足や体幹に現れ、これらの発疹は強いかゆみを伴います。

掻破による悪化

かゆみがあるために掻くことで、皮膚がさらに炎症を起こし、症状が悪化します。

掻破による感染

かゆいために掻くことで皮膚が傷つき、細菌感染が起こることがあります。

これらの症状が現れたら皮膚科を受診しましょう。

痒疹の検査・診断

臨床診断

痒疹の診断は、主に臨床的な経過や肉眼所見(見た目)に基づいて行われます。医師は患者さんの皮膚を視診し、発疹の形状、分布、掻破痕などを評価します。

病歴聴取

患者さんの病歴やアレルギー歴、慢性疾患の有無を確認します。これにより、原因となる要因を特定します。特にストロフルスでは、最近の虫刺されの有無を確認します。

アレルギー検査

皮膚パッチテストや血液検査を行い、特定のアレルゲンに対する過敏反応を確認します。

皮膚生検

必要に応じて皮膚の一部を採取し、顕微鏡で観察することで、炎症の程度や細菌感染の有無を確認します。

痒疹の治療

痒疹もストロフルスも多くは原因がはっきりしないため、かゆみに対する治療が行われますが、慢性疾患などの原因として考えられるものがあれば、原疾患に対する治療も考慮されます。ただし、慢性疾患自体は治療が難しいこともあるため、かゆみに対する治療が主体となることもあります。また内服によって治療を行う全身治療と、かゆい部分に対してのみ使用する局所治療があります。

局所療法

  • 局所ステロイド外用薬 強力な抗炎症作用があり、かゆみと発疹を軽減します。軽度から中等度の痒疹に使用されることが多くなっています。
  • 免疫抑制薬(カルシニューリン阻害剤) アレルギーによる免疫反応を抑える抗炎症作用により、皮膚炎の赤みやかゆみを抑えます。また、ステロイドの長期的な使用による副作用を避けるためにも使用されます。
  • 保湿剤 乾燥が原因と考えられる場合は保湿剤が使用されます。皮膚のバリア機能を改善し、乾燥を防ぐために使用されます。
  • 冷却療法 発疹が現れた際に冷やすことで、かゆみを軽減することができます。冷却パッドや冷たいシャワーが効果的です。また、冷水を使用して体温を下げることも有効です。
  • 抗生物質 掻破によって二次感染が疑われる場合、抗生物質の使用が必要です。

全身療法

  • 抗ヒスタミン薬 かゆみを抑えるために使用されます。第二世代は眠気の副作用が少ないと言われています。長期間の使用が可能で、かゆみの緩和に有効です。
  • 経口ステロイド 重症例や急性増悪時に使用されます。長期使用は副作用が多いため、短期間の使用が推奨されます。
  • 免疫抑制薬 特に重症例や他の治療に反応しない場合に使用されます。
  • 生物学的製剤 アトピー性皮膚炎や重症の痒疹に対して、インターロイキン-4(IL-4)およびインターロイキン-13(IL-13)を標的とする抗体薬が使用されることがあります。
  • 光線療法 紫外線UVB療法やPUVA療法は、特に慢性痒疹に対して効果的です。炎症を軽減し、皮膚の免疫応答を調節します。

補助療法

  • 心理療法 ストレス管理や認知行動療法は、ストレスが原因である場合に効果的です。ストレスは痒疹の悪化要因となるため、心理療法も有用です。

生活習慣の改善

バランスの取れた食事、適度な運動、十分な睡眠が重要です。これらは免疫機能をサポートし、症状の改善に寄与します。

痒疹になりやすい人・予防の方法

痒疹になりやすい人・予防の方法を合わせて以下に説明します。

アレルギー体質の人

アレルギー体質の人は、アレルゲンを避けることが重要です。アレルゲン回避のための環境整備や適切な食事管理が推奨されます。

ストレスの多い人

ストレスによってかゆみが引き起こされることがあるため、ストレス管理が重要です。リラクゼーション法や適度な運動、カウンセリングなどを取り入れます。

乾燥肌の人

乾燥を防ぐために、保湿剤の使用が推奨されます。また、過度な洗浄を避け、皮膚のバリア機能を保つことが重要です。

虫に刺されやすい子ども

虫除け対策を徹底します。虫除けスプレーの使用や長袖・長ズボンの着用が推奨されます。

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