

監修医師:
高藤 円香(医師)
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防衛医科大学校卒業 / 現在は自衛隊阪神病院勤務 / 専門は皮膚科
水虫の概要
水虫とは、白癬菌(はくせんきん)というカビの一種が足の皮膚に感染することによって生じる真菌感染症です。この菌は湿度の高い環境を好み、足ふきマットやスリッパなどの共有を介して容易に感染します。 水虫は感染部位によってさまざまな症状を呈します。足に感染する場合、趾間型、小水疱型、角質増殖型の3種類があり、また爪に感染する爪白癬も存在します。趾間型は特に足の指の間に見られ、赤くなってジュクジュクしたり、白くふやけて軟らかくなるのが特徴です。小水疱型は強いかゆみを伴い、足の裏や土踏まずに小さな水疱が現れ、時間が経つと赤くなり皮がむけます。 角質増殖型は、足の裏やかかとが乾燥し、角質が厚く硬くなることで、皮膚がむけ、ひび割れが生じます。爪白癬は爪全体が白っぽくなり、縦ジワが現れることがあります。 予防には、足の清潔と乾燥を保つことが重要であり、家族間での感染を避ける対策が必要です。治療には主に抗真菌薬が用いられます。水虫の原因
水虫は、白癬菌(はくせんきん)というカビの一種が皮膚の角質層に感染することによって引き起こされる皮膚疾患です。この菌は手や体にも感染しますが、9割近くは足に感染します。水虫が足に繁殖しやすい理由は、靴を履くことで足が蒸れ、高温多湿の環境が菌の成長を助長するからです。近年では、仕事で長時間靴を履き続ける女性も増え、その結果女性の水虫患者も増加しています。 白癬菌は常在菌ではなく、外部から侵入してくる非常在菌です。そのため、水虫は外因性の感染症に分類されます。水虫のリスクが高いのは、ジムやプール、飲食店の座敷など、さまざまな方が靴を脱いで歩く場所です。家庭内でも、感染者がいると家族全員に広がる可能性があります。 さらに、冬場にブーツを履くことも水虫の原因になります。外気温が低くても、長時間ブーツを履き続けることで足が蒸れ、白癬菌の増殖を助長します。したがって、寒い季節でも足の衛生管理を怠らないことが重要です。 このように、水虫の原因となる白癬菌はさまざまな環境で繁殖し、感染を広げる可能性があります。感染予防には、足を清潔に保つこと、靴の管理、そして適切な治療が不可欠です。水虫の前兆や初期症状について
水虫の初期症状や前兆を見逃さずに早期対応することが大切です。 水虫の初期症状は足の指の間に現れることが多く、最初に気付くのは指の間の皮膚が白くなることです。特に第四趾間(薬指と小指の間)でよく見られます。進行すると、皮膚がふやけて軟らかくなり、赤みを帯びたり、かゆみが出たりします。この状態は湿潤型と呼ばれ、足指の間がジュクジュクすることが特徴です。また、乾燥型では、皮が薄くむけて赤くなり、ひどい場合には皮膚に亀裂が入ることもあります。 足の裏や指の付け根に小さな水疱ができる小水疱型も初期症状として現れることがあります。このタイプはかゆみを伴わないこともあるため、初期の段階で気付かないことが多いようです。しかし、放置すると水疱が破れて液が出て乾燥し、皮がむけることがあります。足の裏全体やかかとがカサカサして角質が厚くなる角質増殖型もあり、見た目は粉をふいたような状態になります。 水虫を放置すると、症状が悪化して治りにくくなるだけでなく、手や爪などほかの部位に感染が広がる可能性があります。特に爪白癬に感染すると、治療がとても困難になり、市販薬では治療が難しいため、医師の診察が必要です。 水虫は初期段階で適切な治療を受けることで、症状の進行を防ぎ、周囲への感染リスクも減少させられます。自覚症状がある場合は早めに皮膚科を受診し、医師の診察を受けることが重要です。水虫の検査・診断
水虫を診断するためには、KOH検鏡法と呼ばれている方法が用いられます。この手法は迅速に診断でき、白癬菌の有無を顕微鏡で直接確認します。 サンプル採取 検査はまず、感染が疑われる皮膚や爪から微小な部分を切り取ることから始まります。この採取作業には小型のハサミやメスが用いられます。 準備と加熱 採取したサンプルはスライドガラスに置かれ、カバーガラスで覆われた後、20%の水酸化カリウム(KOH)溶液が数滴加えられます。これにより、サンプルの細胞壁が分解し、菌の観察が容易になります。その後、60〜70度で数分間加熱することで、菌糸がよりはっきりと観察できます。 顕微鏡検査 加熱処理後、顕微鏡を用いてサンプルを検査します。白癬菌は特有の糸状菌糸を持ち、節のような隔壁が見られます。白癬菌は、数珠つなぎの形状として確認できるため水虫の診断に役立ちます。 検査結果の取り扱い 検査は5分程度で完了し、その場で結果がわかります。ただし、市販の水虫薬を使用している場合は検査結果に影響が出るため、検査前2週間は使用を控えるようアドバイスされます。 水虫は簡単な問診や視診では診断が困難なこともあり、白癬菌の検出が確認できない場合は複数回の検査が必要になることもあります。また、水虫と似た症状を示すほかの皮膚病も存在するため、専門のクリニックでの診断が推奨されています。水虫の治療
水虫の治療は、白癬菌の増殖を抑える抗真菌薬の使用が基本となります。抗真菌薬にはクリーム、軟膏、液剤などさまざまなタイプがあり、皮膚の状態や症状に応じて選択されます。足白癬の場合、症状が現れている部分だけでなく、足の裏や指の間からアキレス腱まで、足全体に薬を塗布することが重要です。菌を消滅させるためには、4週間程度薬を塗り続ける必要があります。 感染が足だけでなく広範囲に広がっている場合や、角質が厚くごわごわした状態が強い場合には、内服の抗真菌薬が処方されることもあります。イトラコナゾールやテルビナフィンなどの薬剤が使用されますが、ほかの薬との相互作用に注意が必要なため、現在服用している薬について医師や薬剤師に伝えることが重要です。 水虫の治療には根気が必要ですが、適切な治療と継続的なケアによって治癒が期待できます。医師の指導のもと、適切な薬を選び、正しい方法で治療を続けることが大切です。水虫になりやすい人・予防の方法
水虫は、いくつかの条件下で感染リスクが高まります。なかでも、以下に当てはまる方は、水虫に感染しやすいため注意が必要です。 まず、足に汗をかきやすい方はリスクが高いとされています。また、足の指の間をあまり洗わない方も要注意です。さらに、足の裏にひび割れがある方や、家族でスリッパを共有している方もリスクが高まります。 ひび割れた皮膚や家族での共有アイテムは、白癬菌が侵入するための経路となります。同じ靴を続けて履くことが多い方や、足の臭いが気になる方も、白癬菌が繁殖しやすい環境を作り出している可能性があるため、注意が必要です。 水虫を予防するためには、いくつかの対策を講じることが推奨されています。まず、蒸れやすい靴やブーツを避けることが大切です。通気性のいい靴や靴下を選ぶことで、足の蒸れを防ぎます。通勤時には革靴ではなくスニーカーを履き、職場ではスリッパやサンダルに履き替えるといいでしょう。また、同じ靴を続けて履かず、2〜3足を交互に使用することもおすすめです。 次に、足の清潔と乾燥を保つことが重要です。白癬菌が足についても、1日1回の洗浄で感染を防げます。足を洗う際は、ゴシゴシこすらずに優しく洗い、白癬菌の侵入を防ぎましょう。 日常生活でこれらの対策を徹底することで、水虫のリスクを減らせます。参考文献




