外耳道異物
五藤 良将

監修医師
五藤 良将(医師)

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防衛医科大学校医学部卒業。その後、自衛隊中央病院、防衛医科大学校病院、千葉中央メディカルセンターなどに勤務。2019年より「竹内内科小児科医院」の院長。専門領域は呼吸器外科、呼吸器内科。日本美容内科学会評議員、日本抗加齢医学会専門医、日本内科学会認定医、日本旅行医学会認定医。

外耳道異物の概要

外耳道異物とは、耳の入り口から鼓膜までの約3cm の細長い通路(外耳道)に、さまざまなものが入り込んでしまった状態です。異物が外耳道に入り込む状態は比較的よく見られ、小児や特定の状況下では成人にも生じます。

主な原因として、小さな子どもの場合は、ビーズやおもちゃの部品など、自分で耳に入れてしまうことが多く、大人の場合は耳掃除の際の綿棒の綿や、夜間に耳に入ってしまった虫などが挙げられます。
症状は異物の種類によってさまざまですが、多くの場合は耳が詰まった感じや聞こえにくさを感じます。虫が入った場合は、強い痛みをともなうことがあります。

外耳道に異物が入ってしまった場合は、自己処置で異物を取り出そうとするのは避けてください。かえって奥に押し込んでしまったり、外耳道や鼓膜を傷つけてしまったりする危険があります。異物が入り込んだらすぐに医療機関を受診するようにしましょう。

外耳道異物の原因

外耳道異物の原因は、小児の場合と成人の場合とで異なります。

小児の場合

小児の場合、好奇心から小さなおもちゃなどを耳に入れてしまうことが主な原因です。ビーズ玉やBB弾、消しゴムの欠片などが多く見られます。

小さな子どもは、物を耳に入れることの危険性を理解していないため、周囲の人が気を付ける必要があります。また、兄弟や友達同士で遊んでいる際に、相手の耳に物を入れてしまうケースもあるため、保護者の方は遊び方にも注意を払いましょう。

成人の場合

大人の場合、主に2つのパターンがあります。1つ目は、耳掃除の際に生じるケースです。綿棒の綿などが取れたり、強い力で耳かきをして先端が取れたりして、綿や欠片が外耳道に残ることがあります。

2つ目は、就寝中や屋外活動中に虫が入ってしまうケースです。とくに夏場は、蛾やアリなどの虫が入ることが増えます。虫の場合、生きたまま外耳道内で動き回ることで強い痛みが生じたり、場合によっては鼓膜を傷つけたりする可能性があるため、すぐに医療機関の受診が必要です。

また、水泳やシャワーの際に水が入ったり、海水浴で砂が入ったりすることもあります。

外耳道異物の前兆や初期症状について

外耳道に異物が入ったときの症状は、異物の種類によって大きく異なります。

生きた虫が入った場合は、耳の中でごそごそと虫が動く感覚とともに、虫が鼓膜に触れることによる強い痛みを感じます。

一方、おもちゃのパーツや綿棒の先などの動かない異物の場合は、初期段階ではそれほど強い症状を感じないことも多いです。多くの場合、耳が詰まった感じ(耳閉感)や聞こえにくさ、違和感といった比較的軽い症状が生じます。しかし、そのまま放置して時間が経過すると、外耳道に炎症が起きて痛みを感じたり、耳だれが生じたりするようになります。

また、小さな子どもの場合、症状を的確に訴えることが難しいことも少なくありません。そのため、耳を頻繁に触る、首を傾ける、機嫌が悪くなるといった行動の変化としてあらわれることが多いです。異物を入れたことを恥ずかしがって、または叱られることを恐れて、言い出せないこともあります。周囲の人が普段からよく観察し、異変に気づいたらすぐに医療機関を受診することが大切です。

外耳道異物の検査・診断

外耳道の浅い場所に異物があれば、肉眼で確認できます。しかし、深い部分まで異物が入り込んでいる場合は肉眼での確認は難しいため、耳鏡という専用の機器で確認する必要があります。

また、診察の際は、症状がいつから始まったのか、どのような状況で気づいたのか、自己処置を行っていないかなどを併せて確認します。

外耳道異物の治療

外耳道に異物が入った場合は、医療機関での処置が推奨されます。一見、簡単に取れそうに見える異物でも自己判断で対処すると、かえって奥に押し込んでしまったり、外耳道や鼓膜を傷つける可能性があるためです。

医療機関での処置

治療は、異物の種類や状態によって異なります。生きた虫の場合は、麻酔スプレーなどを使って虫を動けなくしてから取り除きます。虫が暴れて外耳道や鼓膜を傷つけるのを防ぐことが可能です。その他の異物は、専用の器具を使って慎重に取り出します。子どもの場合は、診察や処置の際に暴れてしまい、耳を傷つける可能性があるため、安全性を確保するために全身麻酔下で治療を行うこともあります。

また、異物を取り除いた後は、外耳道や鼓膜に傷や炎症がないかを確認します。傷や炎症がある場合は、必要に応じて、抗生物質や内服薬を処方することがあります。

自己処置は避ける

外耳道に虫が入った場合、水や油を少量入れて虫を出す方法を試す人がいます。しかし、大きな虫の場合は殺すまで時間がかかるうえ、虫が暴れて鼓膜が傷つく可能性があるため、自己処置は避けるようにしましょう。
また、外耳道に水が入ると、体温との温度差によって三半規管が刺激され、めまいを引き起こすことがあります。さらに、鼓膜に穴が開いている場合は、水や油を入れることで中耳に入り込み、聴力に影響をおよぼす危険もあります。

そのため、外耳道に異物が入った場合は、安全かつ確実に対処できる医療機関を受診するようにしましょう。

外耳道異物になりやすい人・予防の方法

外耳道異物は、好奇心旺盛な幼児や、耳掃除を頻繁にする人によく見られます。予防法として、小さな子どものいる家庭では、ビーズやおもちゃの小さなパーツなど、耳に入る可能性のある小さな物を子どもの手の届かない場所に置くようにしましょう。

また、耳掃除の方法も重要です。耳垢は外耳道を保護する重要な働きがあり、必要以上に除去する必要はありません。耳掃除をする場合は、市販の綿棒は奥まで入れすぎないようにし、子どもの耳掃除をする場合も、慎重に行いましょう。

また、虫が入るのを防ぐために、夏場の就寝時は網戸をしっかり閉めることや、野外活動時は虫除けスプレーを使用することも効果的です。加えて、プールや海水浴の後は、耳の中に水が残らないよう、タオルで優しく拭き取るようにしましょう。


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