外耳炎

外耳炎の概要

外耳炎（がいじえん）は、耳の外側部分である外耳道（がいじどう）や耳介（じかい）に生じる炎症のことです。外耳道は外側1/3の軟骨部（なんこつぶ）と内側2/3の骨部（こつぶ）に分かれており、それぞれの特徴によって異なる種類の外耳炎が発生します。

外側の軟骨部外耳道は皮下組織が厚く、耳毛や皮脂腺（ひしせん）、耳垢腺（じこうせん）が存在します。この部分の毛包や腺が細菌感染を起こしたものが、急性限局性外耳道炎です。 一方、内側の骨部外耳道は皮下組織が薄く、外的刺激によって上皮剥離（じょうひはくり）やびらんが生じると、びまん性外耳道炎が引き起こされます。

外耳炎は、子どもから大人まで幅広い年齢層で発生し、特に夏場のプールや海での活動が増える季節に多く見られます。

外耳炎の原因

外耳炎の原因は多岐にわたりますが、主に耳かきや指の爪などで外耳道をかいた際に生じた傷に細菌が入り込み、炎症が引き起こされたものです。

細菌感染

急性のびまん性外耳炎は、主に緑膿菌や黄色ブドウ球菌、大腸菌などの細菌によって引き起こされます。 外耳道真菌症は、黒色アスペルギルスやカンジダ・アルビカンスによって引き起こされますが稀です。

外的要因

外耳炎の要因は、主に以下の通りです。

• 水の侵入
• 過度な耳掃除
• アレルギーなどの皮膚疾患
• ヘアスプレーなどの刺激物質

水の侵入

外耳道に水が繰り返し入ることで、外耳道の皮膚がふやけ、細菌が繁殖しやすくなります。特に、水泳やシャワーの後に耳をしっかり乾かさない場合、外耳炎を引き起こしやすくなります。水の侵入により外耳道の酸性度が低下すると、細菌や真菌が繁殖しやすくなり、感染リスクがさらに高まります。

過度な耳掃除

綿棒やその他の物による耳掃除を頻繁に行うと、外耳道の皮膚に微小な擦り傷が生じ、細菌の侵入口となります。さらに、耳垢（じこう）が外耳道の奥に押し込まれ、細菌感染の温床となる例も珍しくありません。

アレルギーなどの皮膚疾患

アレルギーも外耳炎の要因のひとつです。アレルギー反応によって外耳道の皮膚が炎症を起こしやすくなり、細菌感染のリスクも高まります。

アレルギーでは、特定の物質（アレルゲン）に対して身体の免疫システムが過剰に反応し、ヒスタミンなどの炎症物質を放出します。このヒスタミンは血管を拡張させ、皮膚や粘膜の透過性を高めるため、炎症や腫れ、かゆみを引き起こしやすくなります。 また、乾癬（かんせん）や湿疹、脂漏性皮膚炎（しろうせいひふえん）などの皮膚疾患を持つ人は、外耳道炎にかかりやすい傾向があります。

ヘアスプレーなどの刺激物質

ヘアスプレーや毛髪染料などの刺激物が外耳道に入ることで、炎症を引き起こすことがあります。

外耳炎の前兆や初期症状について

外耳炎の初期症状は、主に以下のようなものが挙げられます。

• 耳の痛み
• 耳だれ
• かゆみ
• 腫れ
• 聴力の低下
• その他

以下に外耳炎の主な前兆や初期症状について説明し、受診すべき診療科目を紹介します。

耳の痛み

外耳炎の最も一般的な初期症状は耳の痛みです。特に耳たぶを引っ張ったり、耳の入り口を押したりすると鋭い痛みが増します。痛みは時に強く、日常生活に支障をきたすことがあります。

耳だれ

外耳道からの分泌物が増えることも初期症状の一つです。分泌物は白色や黄色をしており、時には悪臭を伴うことがあります。

かゆみ

外耳道の炎症により強いかゆみを感じます。特に外耳道真菌症（がいじどうしんきんしょう）の場合、かゆみが強くなる傾向があります。耳をかくことで皮膚がさらに傷つき、症状が悪化する例も少なくありません。

腫れ

外耳道や耳周辺が赤く腫れることがあります。腫れがひどくなると、耳が詰まった感じや聴こえづらさを感じることがあります。また、耳を引っ張ったり圧迫したりすると、強い痛みを生じる場合があります。

聴力の低下

外耳道が腫れたり、膿や分泌物で満たされたりすると、耳が聞こえにくくなる場合があります。この状態は一時的なものですが、適切な治療を受けないと長引くことがあります。

その他

外耳道真菌症の場合、耳内に灰黒色や黄色の点々が見られます。カンジダ菌感染では、粘度のある乳白色の分泌物が見られます。また、外耳道膿瘍（がいじどうのうよう）が発生すると、局所的な赤い腫れや血液を含む膿が出てくるケースがあります。

受診すべき診療科目

外耳炎の症状が見られた場合、耳鼻咽喉科の受診が必要です。耳鼻咽喉科で耳鏡検査などを行い、正確な診断と適切な治療を提供してくれるでしょう。外耳炎の初期症状を見逃さず、早めに受診することが大切です。特に耳の痛みやかゆみ、分泌物が見られる場合は、放置せずに医療機関で診察を受けるようにしましょう。

外耳炎の検査・診断

外耳炎の診断には、視診や分泌物の検査などが行われます。これらの検査は病状を正確に把握し、適切な治療を選択するために重要です。

問診

まず、外耳炎の診断には問診が不可欠です。医師は患者さんの症状の詳細や経過、耳の状態に関する情報を収集し、初期症状や炎症の原因を把握します。

視診

次に行われるのは視診です。耳鼻咽喉科で耳鏡という器具を使って外耳道と鼓膜の状態を確認します。外耳道が赤く腫れている場合や、膿や分泌物が見られる場合には外耳炎が疑われます。 また、耳介を引っ張ったり押したりしたときに痛みが生じることも、外耳炎の可能性を示す重要なサインです。

培養検査

耳だれが多い場合、分泌物を採取して細菌や真菌の培養検査を行います。炎症を引き起こしている病原体を特定し、適切な治療薬を選択できます。

外耳炎の診断では、悪性外耳道炎との鑑別も重要です。悪性外耳道炎は緑膿菌による感染症で、外耳道の周辺組織に広がり、頭蓋底部にまで進行する場合があります。視診や培養検査で緑膿菌が検出された場合、悪性外耳道炎の可能性を考慮し、迅速な対応が必要です。

外耳炎の治療

外耳炎の治療は、薬物療法と外耳道の清潔を保つことを中心に行われます。具体的な治療方法を説明します。

薬物療法

外耳炎の治療では、症状の程度や原因に応じ、さまざまな薬が使用されます。

軽度の外耳炎の場合

軽度の外耳炎の場合、酢酸を含んだ点耳薬と、炎症を緩和するためのステロイド点耳薬が処方されることがあります。これらの点耳薬は1日3回、7日間にわたって投与されます。

中等度の外耳炎の場合

中等度の外耳炎では、抗菌薬を含む点耳薬が必要です。炎症が重度な場合、ガーゼタンポンを外耳道に入れて薬を染み込ませることで、薬が奥まで行き渡るようにする処置が推奨されます。

重度の外耳炎の場合

重度の外耳炎や炎症が広がっている場合には、経口抗菌薬が必要な症例もあります。痛みが強い場合は、経口オピオイドなどの痛み止めが処方されるケースも珍しくありません。

外耳道真菌症の場合

外耳道真菌症の場合、外耳道の分泌物やかすを取り除いたあと、抗真菌薬が使用されます。ただし、鼓膜に穴が開いている場合、内耳に重度の痛みや損傷を引き起こすリスクがあるため、使用を避けるべきです。感染を完全に取り除くために、清掃と治療を繰り返さなければならない例もあります。

感染組織などの除去

外耳道の感染組織や分泌物などを取り除くことが治療の基本です。耳鼻咽喉科の医師が吸引や乾いた綿棒を用いて、外耳道から丁寧に除去します。

耳の乾燥と清潔の維持

外耳炎の予防と治療には、耳を乾燥させ、清潔を保つことが重要です。 シャワーキャップの着用や水泳の回避、低風量に設定したヘアドライヤーの使用などが有効です。また、外耳道に対する過度な耳掃除を控えることも大切です。

外耳炎になりやすい人・予防の方法

外耳炎は、ある一定の割合で一度は経験する可能性がある病気です。特に、以下のような人は外耳炎になりやすいといえるでしょう。

• 水泳を頻繁に行う人
• 湿度の高い環境にいる人
• 外耳道が狭い人
• 補聴器を使用している人
• 機械的な外傷を受けた人

外耳炎を予防するためには、以下の方法が効果的です。

• 耳の乾燥
• 耳掃除の注意
• ヘアスプレーなど刺激物の回避
• 適切な補聴器の使用

水泳やシャワーの後に耳をしっかり乾かすことが大切です。耳掃除では、外耳道に綿棒やその他の器具を使用しないようにしましょう。無理に耳垢を取り除こうとすると、外耳道を傷つけることがあります。耳垢には外耳道を保護する役割があるため、自然にとれるのを待ちましょう。

ヘアスプレーや毛髪染料などが外耳道に入らないように注意しましょう。これらの物質が耳に入ると、炎症や感染を引き起こすことがあります。補聴器を使用している場合、定期的に清掃し、耳を休ませる時間を作ることが大切です。