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ハウスダスト
五藤 良将

監修医師
五藤 良将(医師)

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防衛医科大学校医学部卒業。その後、自衛隊中央病院、防衛医科大学校病院、千葉中央メディカルセンターなどに勤務。2019年より「竹内内科小児科医院」の院長。専門領域は呼吸器外科、呼吸器内科。日本美容内科学会評議員、日本抗加齢医学会専門医、日本内科学会認定医、日本旅行医学会認定医。

ハウスダストの概要

ハウスダストとは、家の中に浮遊している微細な粒子の総称です。浮遊している粒子とは、ダニやその死骸、フン、ペットの毛、フケ、カビの胞子、繊維片など、さまざまな物質が含まれています。これらが空気中で混じり合うことで、アレルギー症状を引き起こす物質が形成されます。ハウスダストは日常生活の中に存在し、掃除や換気が不十分だと多くなりやすいです。

ハウスダストが原因で引き起こされるアレルギー症状は、鼻炎、結膜炎、気管支喘息、皮膚炎などです。これらのアレルギー症状で引き起こされるのは、鼻水やくしゃみ、目のかゆみ、咳、呼吸困難、皮膚のかゆみ、湿疹などが挙げられます。ハウスダストに含まれるアレルゲンが体内に入り、免疫システムが過剰に反応するためです。

ハウスダストのアレルギー症状は、小児や高齢者、既往歴のある人に深刻な症状を引き起こします。本記事では、ハウスダストの原因から、予防方法まで解説します。現在ハウスダストでお悩みの方はご一読ください。

ハウスダストの原因

ハウスダストは家庭内にある様々な物質が原因で発生します。この章では原因となる一般的な物質を紹介します。

ダニ

最も一般的な原因はダニです。ダニは温かく湿度の高い環境を好み、寝具やカーペット、ソファなどに生息します。ダニの死骸やフンが乾燥して微細な粒子になり、空気中に舞い上がることでハウスダストが発生します。

ペットの毛やフケ

ペットの毛やフケもハウスダストの原因の1つです。犬や猫などのペットを飼っていると、毛や皮膚から剥がれ落ちたフケが室内に蓄積しやすく、アレルゲンの原因になります。特に、ペットが頻繁に屋内外を行き来する時は、外部からの汚れや花粉も一緒に持ち込むことが多く、ハウスダストの量が増える原因となります。

カビの胞子

カビの胞子もハウスダストの原因です。湿度の高い場所や通気の悪い環境では、カビが繁殖しやすくなります。カビの胞子は非常に小さく、空気中に浮遊して人が吸い込むことでアレルギー症状を引き起こします。浴室やキッチン、押入れなどが発生しやすい場所です。

繊維片

普段使用する家具や布製品、衣類から発生する繊維片もハウスダストの原因の1つです。繊維片は、摩擦や洗濯、乾燥機の使用などによって空気中に放出されます。他にも、家庭用洗剤やクリーニング用品など、微細な粒子もハウスダストになることがあります。

ハウスダストの前兆や初期症状について

ハウスダストから発症するアレルギー症状は、さまざまな形で現れます。この章では、前兆や初期症状を解説します。

鼻炎

一般的な前兆として、鼻炎がありますが、ハウスダストが鼻の粘膜を刺激することで引き起こされる症状です。この症状は、くしゃみや鼻水、鼻づまりが主な症状で、朝起きた時や掃除をした後に症状が強く出ます。

結膜炎症状

目のかゆみや赤み、涙が出るなど結膜炎症状も現れます。この症状は、ハウスダストが目に直接触れて起こる症状です。特に、コンタクトレンズを使用している人や目を頻繁にこする習慣がある人は、症状が悪化しやすいです。

咳やのどの違和感

咳やのどの違和感も初期症状の1つです。咳やのどの違和感はハウスダストが気道に入ることで発症し、夜間や朝方に症状が強くなりやすいです。これが進行すると、気管支喘息のリスクが高まります。喘息の場合、咳が長引いたり、呼吸が苦しくなる症状がみられます。

皮膚症状

ハウスダストは皮膚への影響もあります。症状として、かゆみや湿疹、乾燥などが見られ、ハウスダストが皮膚に直接触れることで引き起こされる症状です。すでにアトピー性皮膚炎が持病の患者さんは、症状が悪化しやすくなる可能性があります。

鼻炎や結膜炎、皮膚症状に悩んでいる方は、一般内科や耳鼻科、皮膚科、眼科医など、症状に応じて複数の診療科を受診することをおすすめします。

ハウスダストの検査・診断

ハウスダストによるアレルギーが疑われた場合、症状に応じた検査と診断を受けることが大切です。この章では、受診した時にどのような検査と診断をするのか説明します。

問診

問診では、患者さんの症状や発症時期、生活環境について詳しく聞いていきます。アレルギーの原因となり得る手がかりを確認し、さらに詳しく検査を進めていきます。

皮膚テスト

皮膚テストは、アレルゲンを含む液体を皮膚に少量塗布し、皮膚の反応を観察する方法です。皮膚が赤くなったり、かゆみが出たりすることで、どのアレルゲンに反応しているか確認します。皮膚テストは比較的簡便ですぐに結果が得られるため、アレルギーの診断に有効です。

血液検査

ハウスダストがアレルゲンか特定するために、血液検査も行います。この検査では、特定のアレルゲンに対するIgE抗体の存在量を測定でき、ハウスダストに対するアレルギー反応の程度を把握することが可能です。血液検査は、複数のアレルゲンに対する感受性を同時に調べられるため、ハウスダスト以外のアレルギーも診断ができます。

スワプ検査スワブ検査

スワブ検査は、鼻の内部から粘液を採取し、顕微鏡で検査する方法です。鼻粘膜の炎症の程度や、アレルギー反応の有無を確認するために用いられます。この検査は、鼻炎の症状で悩んでいる方におすすめです。これらの検査結果を総合的に判断し、ハウスダストアレルギーの診断を行います。

ハウスダストの治療

ハウスダストの治療は、症状の軽減と生活の質の向上を目的として行います。この章では、ハウスダストの治療方法について解説します。

抗ヒスタミン薬

一般的な治療法に、抗ヒスタミン薬の使用が挙げられます。この薬は、アレルギー反応を引き起こすヒスタミンの作用を抑え、くしゃみや鼻水、目のかゆみなどの症状を緩和します。市販薬もありますが、症状が重い場合は耳鼻咽喉科や眼科を受診して、医師の処方したものを内服することがおすすめです。

ステロイド薬

ステロイド薬は、炎症を抑える効果があり、鼻炎や皮膚炎、喘息などの症状を緩和します。点鼻薬や吸入薬、軟膏など、症状に応じて使用方法が異なるため、それぞれ専門医の指導のもと、適切に使用することが大切です。

アレルゲン免疫療法(アレルゲンデシンシタイゼーション)

アレルゲン免疫療法(アレルゲンデシンシタイゼーション)は、少量のアレルゲンを舌下を通して定期的に投与し、身体がアレルゲンに対して耐性をつける治療法です。治療期間は数年かかることもありますが、長期的な症状の改善が期待できます。この治療法は、効果を得るために継続的な治療が必要です。

生活環境の改善

生活環境の改善も重要な治療の一つです。定期的な掃除や換気、寝具の清潔な状態の維持、空気清浄機の使用などが求められます。ペットを飼っている場合は、ペットの毛やフケを取り除くため、頻繁なブラッシングや掃除を行いましょう。生活環境を整えることで、ハウスダストを減少させることができます。

食生活の改善

食生活の改善も症状の軽減に効果的です。特に、ビタミンCやD、オメガ3脂肪酸を含む食品は、アレルギー症状の緩和に役立つと言われています。これらの栄養素をバランス良く摂取することで、免疫システムの強化が期待できます。

ハウスダストになりやすい人・予防方法

ハウスダストアレルギーになりやすい人には共通点があります。この章ではなりやすい人の特徴を解説します。

遺伝

両親や兄弟姉妹にアレルギー症状がある場合、自身もハウスダストアレルギーを発症する可能性が高いです。

他のアレルギーを持っている

既に他のアレルギー疾患を持っている人も、ハウスダストアレルギーを発症しやすい傾向があります。花粉症や食物アレルギー、喘息などを持つ人は、アレルギー反応を引き起こしやすい体質のため、ハウスダストに反応することが多いです。

ハウスダストアレルギーの予防は、日常生活での対策が大切です。この章では予防方法を解説します。

定期的な掃除

最初に重要なのが定期的な掃除です。ダニの発生しやすい寝具やカーペット、ソファなどはこまめに掃除し、ダニの生息を防ぎましょう。掃除機を使用する際は、HEPAフィルター付きのものを選ぶと、細かいハウスダストも除去できます。

寝具の管理

シーツや枕カバーは週に一度は洗濯し、高温で乾燥させることをおすすめします。ダニは湿度の高い環境を好むため、乾燥させることでダニの繁殖を防げます。布団やマットレスの天日干しを行い、清潔に保つことで予防に努めましょう。

空気清浄機の使用

空気清浄機は、空気中のハウスダストやアレルゲンを取り除き、室内の空気を清潔に保てます。特に、寝室やリビングなど、長時間過ごす場所に設置すると効果が出ます。

空気の入れ替え

窓を開けて外の新鮮な空気を取り入れることで、室内のハウスダストを外に排出できます。注意点としては、花粉の多い季節や車通りの多い空気が汚れている場所の場合は、タイミングを工夫する必要があります。

湿度管理

湿度が高いとダニやカビが繁殖しやすいため、湿度を50%以下に保つ必要があります。除湿機やエアコンを活用して、適切な湿度を維持することが大切です。これらの予防方法を日常的に実践し、ハウスダストの影響を最小限に抑えるように心がけましょう。

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