電撃傷
江崎 聖美

監修医師
江崎 聖美(医師)

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山梨大学卒業。昭和大学藤が丘病院 形成外科、群馬県立小児医療センター 形成外科、聖マリア病院 形成外科、山梨県立中央病院 形成外科などで経歴を積む。現在は昭和大学病院 形成外科に勤務。日本乳房オンコプラスティックサージェリー学会実施医師。

電撃傷の概要

電撃傷とは、電気に触れた際に身体にダメージを受ける傷や症状を指します。
電気が人体を通過するときに、そのエネルギーが体の組織に影響を及ぼし、軽度な痛みや傷から重篤な内臓損傷や死亡に至る場合があります。電撃傷の発生原因としては、家庭用の電気器具、高圧電線、雷などが挙げられます。電流が人体にどのような経路で流れたか、また電流の大きさや接触時間、通過経路によって影響の程度は大きく異なります。

電撃傷の原因

電撃傷は、電流が人体を通過する際に生じるダメージによるものです。主な原因を以下に説明します。

家庭用電気器具の故障や誤操作

古くなった電気器具やケーブルの断線による感電事故はよく見られます。たとえば、コードが損傷したまま使用することで、裸の導線に触れる危険があります。また、水場での電化製品使用も、漏電による感電のリスクを高めます。

作業中の事故

電気工事や建設現場など、電気設備の近くで作業する人は感電リスクが高いです。また、高所作業中に高圧電線に接触するケースでは、命に関わる重大事故となる可能性があります。

落雷

雷に直接打たれる場合や、地面に伝わった電流が体内を通る場合があります。これらは、高圧電流の通電によって内臓や神経系に深刻なダメージを与えることがあります。また、雷が建物や配管に衝突することで、水道水を通じた感電事故を起こす可能性があります。これは、雷が地面や建物の配管システムに衝突し、その電流が水道管(水道水)を介して人体に流れることで発生します。このようなケースでは、雷が発生している間は水を使用する行為(シャワー、蛇口の利用など)を控えることが推奨されます。

電撃傷の前兆や初期症状について

電撃傷の症状は、電流の強さ、経路、そして人体に流れた時間に依存します。以下に詳しい前兆や初期症状を説明します。

火傷

電流が皮膚を通る際に生じる発熱により、接触部分に火傷が現れます。これには、電流の入口と出口が特に顕著に見られる場合があります。

局所的な痛みやしびれ

電流が神経を刺激することで、電流が流れた部位に鋭い痛みやしびれを感じます。

筋肉のけいれん

電流が筋肉を強制的に収縮させるため、けいれんや筋肉の硬直が生じます。高電圧では筋肉が強力に収縮し、骨折を引き起こすこともあります。

心臓や呼吸の異常

電流が心臓を流れると、致命的な不整脈や心停止を引き起こす可能性があります。また、呼吸筋が影響を受けることで、一時的な呼吸停止が起こることもあります。

診療科について

全身的な評価・管理が必要な場合は救急科を受診します。身体の表面の傷は、おもに形成外科や皮膚科、不整脈や神経の症状がある場合は、循環器科や神経内科などの受診が必要になる場合があります。

電撃傷の検査・診断

電撃傷の診断は、外見的な傷害だけでなく、内部のダメージを評価することが重要です。以下にその検査と理由を説明します。

視診と問診

火傷の位置、電流の入口と出口を確認します。また、どの程度の電圧にどれくらいの時間接触したかを聞き取ります。表面からの損傷では判定しきれない損傷や時間が経ってから組織の損傷がはっきりすることもあるため注意深く観察、経過をみます。

心電図(ECG)

電流が心臓に影響を及ぼした場合、不整脈や心停止のリスクがあります。心電図は心臓の異常を早期に発見するために重要です。

血液検査・尿検査

筋肉が損傷すると血中の筋肉酵素(CKやミオグロビン)などが上昇します。この値を測定することで、筋肉や腎臓へのダメージを評価できます。

画像検査(X線やCT)

骨折や内部臓器の損傷がないかを確認します。特に感電時に転倒や強いけいれんがあった場合、骨折の可能性が高まります。

電撃傷の治療

電撃傷の治療は、その重症度に応じて異なります。電撃傷になった場合には、速やかに医療機関を受診することが推奨されます。以下に治療法を説明します。

応急処置

電流源から安全に患者さんを引き離します。自身が感電しないよう、絶縁体を用いることが大切です。呼吸や心拍が停止している場合は、迅速に心肺蘇生(CPR)を開始します。

病院での治療

火傷治療

やけどが深刻な場合は、感染を防ぐために創部の洗浄・処置を行います。範囲が広い場合や深い火傷の場合は皮膚移植が必要になることもあります。火傷が深い場合は、皮膚の再生を促す特別な薬剤が使用されることもあります。

循環障害の治療

筋肉の損傷やむくみ、循環障害をきたす場合は緊急の手術(減張切開)が必要になることがあります。

点滴や酸素投与

電撃によって不整脈が誘発され心臓が正常に血液を拍出できなくなった場合や、呼吸が停止した場合には、全身への血流(酸素の供給)が低下します。そのため、点滴によって全身への血液循環を助けたり、酸素投与を行って効率的な酸素供給をサポートする必要があります。

不整脈の治療

必要に応じて、薬剤や電気的除細動が行われます。不整脈が重度の場合、ペースメーカーが一時的に使用されることもあります。

腎臓のケア

感電による筋肉損傷で発生する筋肉組織が破壊された場合には、ミオグロビン血症という状態になる可能性があります。ミオグロビン血症によって腎臓の目詰まりを起こし、腎臓の負担が増加することで腎不全となった場合には、透析が必要になることがあります。

長期的なケア

電撃傷による神経障害や筋肉の損傷に対して、理学療法や作業療法が必要になることがあります。さらに、心理的影響が見られる場合は、精神科医やカウンセラーによるサポートを受けることも重要です。

電撃傷になりやすい人・予防の方法

なりやすい人

  • 電気工事士、建設作業員、または電気を頻繁に扱う職業に従事している人
  • 雷雨時に屋外で活動するスポーツ愛好者やアウトドア愛好家
  • 古い家電製品や電気設備を使用している家庭の住人
  • 雷雨中に水を使用する人(シャワーや蛇口の利用など)
  • 激しい雷が発生しているときに傘を使用する人
  • 赤ちゃん(誤ってコンセントのマルチタップなどを舐めた場合など)

傘は金属部分が雷を引き寄せる可能性があるため、激しい雷雨時には特に危険です。雷が近くで鳴っている場合は、できるだけ金属製品を避けることが推奨されます。また、落雷を予防するために車の中に避難することは効果的です。車は金属製のボディが外部の電流を地面へ逃がす役割を果たすため、安全性が高いとされています。

予防方法

家庭内での対策

電化製品を定期的に点検し、損傷があればすぐに修理または交換します。また、防水カバーや漏電遮断機を設置することで感電リスクを抑えます。赤ちゃんなど小さなお子さんのいる家庭では、コンセントにキャップをつけたり、コンセントのマルチタップなどは手の届く範囲には設置しないなどの対策が有効だとされています。

職場での対策

電気設備に接近する前に、必ず電源を遮断して安全を確認します。また、作業時には絶縁手袋や専用ブーツを使用し、感電リスクを軽減することが重要です。

雷雨時の対策

落雷を防ぐために、屋外で高い場所や木の下に避難しないようにします。また、車の中に避難することで雷から身を守ることができます。雷発生時は、不要なシャワーや蛇口の利用を避け、水道水を使用しないようにします。

これらの予防策を徹底することで、電撃症の発生リスクを大幅に減らすことが可能です。


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