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乳幼児突然死症候群(SIDS)
五藤 良将

監修医師
五藤 良将(医師)

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防衛医科大学校医学部卒業。その後、自衛隊中央病院、防衛医科大学校病院、千葉中央メディカルセンターなどに勤務。2019年より「竹内内科小児科医院」の院長。専門領域は呼吸器外科、呼吸器内科。日本美容内科学会評議員、日本抗加齢医学会専門医、日本内科学会認定医、日本旅行医学会認定医。

乳幼児突然死症候群(SIDS)の概要

乳幼児突然死症候群(SIDS)は、「それまでの健康状態および既往歴からその死亡が予測できず、しかも死亡状況調査および解剖検査によってもその原因が同定されない、原則として1歳未満の児に突然の死をもたらした症候群」と定義されています。つまり、元気だった1歳未満の赤ちゃんが急に理由もなく亡くなってしまうことをいい、主に睡眠中に発症します。特に2〜6ヶ月の間に多いことが分かっていますが、1歳を過ぎても突然死が起こることもあります。
日本ではSIDSは減少していますが、未だに年間50名程の赤ちゃんが死亡しています。日本だけでなく、世界中で問題となっており、特に先進国で多く報告されています。予測不可能な性質から多くの親にとって心配の種となっていますが、SIDSのリスクを減らすための情報や対策が広まることで、多くの命を救うことができるといわれています。

乳幼児突然死症候群(SIDS)の原因

SIDSの原因はまだ完全にはわかっていませんが、いくつかの理由が考えられています。主な要因は以下の通りです。

寝る姿勢

赤ちゃんをうつ伏せ横向きに寝かせることは、SIDSのリスクを高めるとされています。仰向けに寝かせることでリスクを減らすことができます。また、二酸化炭素を含む自分の呼気をまた吸い込むことにより悪影響を及ぼすことも報告されています。柔らかいベットマットや布団、ぬいぐるみなどが頭部や口の回りを覆ってしまうことが原因となりうることがあります。保護者が添い寝をすることで同様の姿勢になることがあるため、注意が必要です。

発達状況

赤ちゃんの脳の一部、特に呼吸や目を覚ますことに関わる部分が十分に発達していないことがあります。

親の喫煙

妊娠中や赤ちゃんの周りでの喫煙は、SIDSのリスクを大幅に増加させます。

早産や低出生体重

早産低出生体重の赤ちゃんは、SIDSのリスクが高いとされています。

乳幼児突然死症候群(SIDS)の前兆や初期症状について

SIDSは何の既往歴や前兆のない赤ちゃんが突然死に至る症候群であるため、症状に気づくことは難しいです。だからこそ、赤ちゃんの様子がいつもと違わないか観察することが大切です。例えば、普段と違う呼吸のリズムや息苦しそう、いつもより元気がなく反応が鈍い、皮膚の色がいつもと違い唇や顔が青白いなどの不調や違和感を感じたら、すぐに医師に相談しましょう。新生児期は産婦人科乳幼児期は小児科を受診するとよいでしょう。

乳幼児突然死症候群(SIDS)の検査・診断

SIDSの事前検査や診断は難しいですが、予め家族歴や環境の確認をすることはできます。特に寝具を整えておくことは、窒息を防ぐことにも繋がります。予測ができないからこそ、日頃からの安全管理が大切です。もし赤ちゃんが突然亡くなった場合には、病理検査により原因解明が行われ、診断するためには解剖による精査が必要であるとされています。

乳幼児突然死症候群(SIDS)の治療

SIDSそのものを治療する方法はありません。SIDSは突然起こるため、治療を始める前に発生することがほとんどです。そのため、大切なのは予防策をとることです。直接的な治療ではないものの、赤ちゃんの健康を守るためにできることは多くあります。

乳幼児突然死症候群(SIDS)になりやすい人・予防の方法

SIDSのリスクを高める要因はたくさんあります。リスクが高い赤ちゃんとして、早産児低体重児家族にSIDSの経験がある場合、双子や三つ子などの多胎児、妊娠中や赤ちゃんの周りでタバコを吸う家庭などがあげられます。SIDSは以下に示す予防策をとることで、リスクを減らすことができます。

赤ちゃんを仰向けに寝かせる

うつ伏せや横向きに寝かせるとリスクが高まるといわれているため、仰向けに寝かせましょう。睡眠中に寝返りしている場合にも仰向けに戻してあげましょう。

母乳育児をする

母乳育児はSIDSのリスクを減少させることが示されています。他にも母乳が赤ちゃんの成長や発達に良い影響を与えることが分かっています。可能な範囲で母乳育児をしてみるのもいいでしょう。

適切な温度管理をする(厚着を避ける)

赤ちゃんは体温調整や呼吸、循環機能が未熟です。過剰に暖かい状況になると、体温調節がうまくいかなくなり、SIDSリスクが高まります。寝室の温度を適切に保ち、厚着をさせすぎないようにしましょう。

家庭内での喫煙を避ける

妊娠中の喫煙は赤ちゃんの成長や呼吸機能の発達に影響を与えます。生まれた後も赤ちゃんのそばで喫煙することはやめましょう。

赤ちゃんが寝るときに見守る

赤ちゃんが寝ているときにはできる限り見守り、異変に気づけるようにしましょう。近くで過ごせない場合にはベビーモニターを活用するのもいいでしょう。睡眠のパターンが変化したときには特に観察するようにしましょう。

おしゃぶりの使用

おしゃぶりの使用はSIDSのリスクを減少させる一つの方法として知られています。おしゃぶりの使用により、気道閉塞リスクが低下し、SIDSの予防に寄与する可能性があります。特に生後3〜4週間以降の授乳が確立した後から使用し、赤ちゃんが寝入った後におしゃぶりが外れても再挿入する必要はありません。また、赤ちゃんの寝る環境を整えることも重要です。例えば、次のような点に注意しましょう。

  • 柔らかい布団や枕、ぬいぐるみを置かず、固い寝具を使用する
  • 赤ちゃんが寝るベッドは、安全基準を満たしたものを使用する
  • 赤ちゃんと同じ部屋で別々のベッドに寝ることで様子を確認しやすくする
  • 添い寝をしながらの授乳は控える

SIDSの原因ははっきりとはわかっていませんが、保護者が気をつけることでリスクを減らすことができます。赤ちゃんの安全と健康を守るためには、情報を知り、実践することが大切です。地域の保健センターや小児科医に相談し、最新のガイドラインやアドバイスを受けるといいでしょう。赤ちゃんの成長と共に、リスクは変化するため、定期的な健康チェックを受けることも重要です。

SIDSは一人で防ぐことは難しいですが、周囲のサポートを受けることで、より安心して赤ちゃんを育てることができます。SIDSについての知識を家族や友人と情報を共有し、周囲の協力を得ることで、赤ちゃんの安全を守るための環境を整えましょう。

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