変形性足関節症

監修医師：
井林雄太（井林眼科・内科クリニック/福岡ハートネット病院）

変形性足関節症の概要

変形性足関節症は、足首の関節を構成する脛骨（けいこつ）と距骨（きょこつ）の表面を覆う軟骨がすり減り、足関節が変形して生じる病気です。変形性膝関節症と同じで、原因が明らかではない一次性、外傷や炎症などに続発する二次性があります。
関節軟骨がすり減ってしまうことで、骨棘（こつきょく）と呼ばれる不要な骨が形成されたり、周囲の組織に炎症を生じたりした結果、関節の変形をきたすとされています。
関節軟骨は関節における衝撃吸収性となめらかな運動性を担っており、関節保護のうえで重要な組織です。

変形性足関節症の原因

変形性足関節症は、原因が明らかでない一次性変形性足関節症、何らかの疾患・病態に続いて発症する二次性変形性足関節症に分類されます。
二次性には、以下の原因が考えられます。

上記の表のように、変形性関節症の発症にはさまざまな因子がかかわっています。関節の脆弱性を高める因子に、直接的な負荷因子が加わって発症にいたります。加齢は発症に最も影響を与える危険因子です。軟骨のすり減りをはじめとする関節を保護する組織の機能低下が変形性関節症になる危険性を高めます。
足部のアライメント不良とは、直立して足に体重をかけたときに、下腿と足を縦線で結ぶと、内くるぶしが過剰に内側に倒れ込む状態です。足と床との接地したときの衝撃吸収が不十分になるので、足関節を痛める可能性が高まります。
何度も捻挫を繰り返していた人や足首の骨折をしたことがある人がなりやすい傾向がありますが、関節炎や細菌感染が原因になることもあるので注意が必要です。

変形性足関節症の前兆や初期症状について

変形性足関節症には個人差があり、軟骨のすり減りがあっても、変形が進行するまで痛みがほとんど出ないことがあります。
変形性足関節症の初期症状は、歩行するときに現れる痛みや不快感です。しばらく歩くと痛みは軽減しますが、長時間歩くとまた痛くなるといった特徴があります。
変形性足関節症の具体的な症状は以下のとおりです。

• 歩行するときの痛み
• 安静しているときの痛み
• 足首の腫れ
• 可動域の制限
• 足首の関節が変形など

変形性足関節は時間とともに症状が悪化していきます。変形が進行すると、常に痛みがあり、足首の変形が顕著になるとともに可動範囲も狭くなります。
また、高齢者や過去に骨折した既往のある人は特に注意が必要です。
変形性足関節症が疑われる場合には、早めに整形外科を受診しましょう。

変形性足関節症の検査・診断

変形性足関節症で行う検査は、以下の画像検査です。

• X線（レントゲン）撮影
• CT検査
• MRI検査

一般的にはX線検査を行い、足関節の隙間が狭くなっているかどうか、骨の変形や不要な骨がないか確認します。
しかし、X線検査では関節の詳しい状態を評価することが難しいため、CT検査やMRI検査を行うこともあります。足関節の変形具合や軟骨の損傷程度、靭帯の損傷程度などを詳細に評価することが可能です。
画像検査で得た情報は診断に用いられるだけでなく、治療の方向性を決めるときにも役立つため重要な検査です。

変形性足関節症の治療

変形性足関節症の治療には、保存療法と手術療法の2種類があるため、それぞれ解説します。

保存療法

変形性足関節症の保存療法では、以下の治療方法があります。

• 薬物療法
• 装具療法
• 理学療法

薬物療法として、痛みや腫れをおさえるために、痛みや炎症を抑える内服薬や湿布で経過をみることがあります。
装具療法では、足関節の変形の程度が軽いときには、足底挿板（インソール）を使って足部の外側を持ちあげて足への負担を軽減することが可能です。また、足首のサポーターを用いて足首の安定化を図ったりもします。
足関節周りのストレッチ、筋力トレーニングといった理学療法によって、関節周りの筋肉を強化して可動域を改善する治療もおこないます。

手術療法

保存療法で効果がない場合や病状が進行している場合など、状態に合わせて以下の手術療法を選択することがあります。

• 関節鏡手術
• 足関節固定術
• 人工足関節置換術
• 下位脛骨骨切り術

足関節鏡手術とは、足関節鏡という内視鏡で関節の中を処置する手術で、軽度な変形性足関節が対象です。骨棘などが引っかかることで痛みがある場合には除去します。また、外側靭帯不全がある場合には、靭帯を修復して足関節の安定化を図ります。足関節固定術は脛骨と距骨をスクリューで固定する手術です。変形性足関節が中等症から重症まで進行しており、若い人や活動性が高い人などを対象に行われます。
人工足関節置換術は脛骨と距骨に損傷がある足関節と人工の足関節を入れ替える手術です。中等症から重症の患者さんの中でも、高齢者、関節リウマチ、活動性の低い人が対象になります。
下位脛骨骨切り術とは、脛骨を切って足関節の傾きを矯正して固定する手術で、中等症の患者さんが対象になります。

変形性足関節症になりやすい人・予防の方法

変形性足関節症になりやすい人・予防の方法には、どちらも生活習慣がかかわります。それぞれ解説します。

変形性足関節症になりやすい人

変形性足関節症になりやすい人は以下のとおりです。

• 肥満
• 加齢
• 足首周りの外傷の既往がある人
• 特定のスポーツや職業の人

関節軟骨への体重が加わることが関節への負担となるため、肥満の人は関節への負担が大きくなるので、変形性足関節症になりやすいです。そして、年齢とともに関節軟骨がすり減っていくため、高齢者は注意が必要になります。
足首周りの外傷として、捻挫や骨折などの外傷を繰り返している人は、関節が不安定になりやすいため、変形性足関節症になりやすいです。

変形性足関節症の予防方法

変形性足関節症の予防の方法には、以下の方法があります。

• 体重のコントロール
• 運動や筋力トレーニング
• 捻挫や関節リウマチの治療
• 関節を休める

体重のコントロールが予防に有効な理由は、変形性足関節症の原因には「肥満」があるからです。関節軟骨への体重が加わることにより、関節への負担が増えるので、肥満を予防するためにも体重のコントロールが重要になります。
運動や筋力トレーニングは変形性足関節の予防には有効です。足首の柔軟性を高めるストレッチや関節に負担の少ない運動（エアロバイクや水泳など）を取り入れることが推奨されます。
捻挫を何度も繰り返している人は、足関節が不安定になっている可能性があるため、捻挫の治療を行うことが変形性足関節症の予防につながります。また、関節リウマチなどの炎症性疾患がある場合には、腫れないようにするためにも治療を行うことが大切です。
進行を予防するためには、痛みがあるときは無理しないで関節を休めることが大切です。激しい運動や長時間歩いたり、登山などの凸凹のある道を歩いたりすると、関節に負担がかかるため控えたほうがいいでしょう。