監修医師:
松繁 治(医師)
岡山大学医学部卒業 / 現在は新東京病院勤務 / 専門は整形外科、脊椎外科
主な研究内容・論文
ガイドワイヤーを用いない経皮的椎弓根スクリュー(PPS)刺入法とその長期成績
著書
保有免許・資格
日本整形外科学会専門医
日本整形外科学会認定 脊椎脊髄病医
日本脊椎脊髄病学会認定 脊椎脊髄外科指導医
日本整形外科学会認定 脊椎内視鏡下手術・技術認定医
脊椎関節炎の概要
脊椎関節炎は、背骨や体幹部の関節、手足の関節に炎症が起こる疾患群の総称です。代表的な病気に強直性脊椎炎、乾癬性関節炎、反応性関節炎などがあります。
背中や腰に痛みや硬さを感じることが特徴であり、男性に多く発症し、その割合は男性が女性の3〜4倍とされています。
炎症が起きると動きが悪くなり、痛みやこわばりが続くことがあります。特に朝方に症状が強く現れることが多く、動き始めるまで時間がかかることが一般的です。
この病気はゆっくりと進行することがあるため、長期間にわたり症状が続くことがあります。脊椎関節炎は一度発症すると完治は難しいため、早期の発見と継続的な治療が重要です。
脊椎関節炎の原因
脊椎関節炎の原因ははっきりとわかっていませんが、いくつかの要因が関わっていると考えられています。
まず、遺伝の影響が大きいといわれており、家族に同じ病気の人がいる場合、脊椎関節炎を発症しやすいです。
次に、免疫の働きに異常が起きることも原因のひとつと考えられています。免疫システムが間違って自分の身体を攻撃することで、脊椎関節炎を発症します。感染症やストレス、環境の変化などで免疫のバランスを崩すことが、発症のきっかけとなる場合があります。
喫煙や食生活の乱れ、運動不足などの生活習慣もリスクを高める要因になります。特に、肥満であること、背骨に負担がかかる姿勢を続けること、身体を動かさない生活を送ることは脊椎関節炎を発症するリスクを高める可能性があるため、日頃から注意が必要です。
脊椎関節炎の前兆や初期症状について
脊椎関節炎の初期症状として、炎症を起こしていることによる腰や背中の痛みが挙げられます。
朝方に背中や腰が痛くなり、動きにくくなることが特徴です。この硬さや痛みは、安静にしても改善せず、身体を動かしているうちに徐々に和らぐことがあります。
手指や肩の痛みや腫れ、こわばりが現れることもあります。また、関節に炎症が起きているため、発熱や倦怠感などの全身症状が現れることがあります。
症状が進行すると、骨と骨の間の靭帯が硬くなり、背骨がつながって関節の動きが悪くなります。これにより背中が曲がらなくなったり、首を回しにくかったりなどの症状がみられる恐れがあります。
これらの症状が続く場合には、早めに病院で診察を受けることをおすすめします。早期に治療を開始することで、症状の進行を抑え、生活の質を維持しやすくなるでしょう。
脊椎関節炎の検査・診断
脊椎関節炎の診断では、まず医師が症状について詳しく聞くことから始まります。どこに痛みがあるのか、どのようなときに痛みが強くなるのかを正確に伝えることが大切です。
その後、レントゲンやCTスキャン、MRIといった画像検査をおこない、背骨や関節の状態を確認します。また、血液検査もおこなわれ、炎症の有無や遺伝的な特徴があるかどうかを調べることがあります。
脊椎関節炎は関節リウマチや悪性腫瘍、加齢による骨の異常など、似たような症状が現れるほかの病気との鑑別が必要です。
靭帯が硬くなり動きが悪くなってから治療を開始しても、もとの状態に戻すことは難しいため、これらの結果をもとに、脊椎関節炎かどうかを早期に診断することが重要です。
定期的なフォローアップと適切な診療計画により、脊椎関節炎の悪化を防げます。
脊椎関節炎の治療
脊椎関節炎の治療は強直性脊椎炎、乾癬性関節炎などのタイプを区別することから始まります。脊椎関節炎の治療には、薬物療法とリハビリテーションがあります。
薬物療法
炎症を抑えるために痛み止めの薬を使ったり、免疫のバランスを整える薬が使われます。
バイオテクノロジー(遺伝子組換え技術など)を用いて製造された生物学的製剤という薬剤を使うこともあります。この治療法は、従来の薬剤が効果を示さない場合や、重度の症状を持つ患者さんに有効とされています。生物学的製剤は免疫系に直接作用し、炎症を引き起こす原因を抑制することにより、症状の改善が期待できます。
薬物療法は、症状や薬剤の効果、副作用などをもとに医師と相談しながら進められ、定期的なフォローアップが必要です。
リハビリテーション
関節の動きを保つために、リハビリテーションも大切です。
リハビリテーションでは、ストレッチや軽い運動をして、筋肉を保ちながら身体の柔軟性を高めます。理学療法士や作業療法士によって脊椎の硬さの改善を目指します。
また、生活習慣の見直しも重要であり、禁煙やバランスの取れた食事、適度な運動を心がけることで、治療の効果が高まります。
リハビリテーションは患者さんの自律性を高め、日常生活での動作をより楽にすることが目的です。患者自身が積極的にリハビリに取り組むことが、治療効果を高める重要な要素です。
薬物療法やリハビリテーションなどを行っても痛みが強い場合や、薬が効かない場合には、手術が必要になることもあります。
重度の脊椎関節炎では関節が固まったり脊椎が変形したりします。そのような場合は、関節置換手術や脊椎の固定手術などが選択肢となるケースもあります。
医師に相談しながら、自分に合った治療方法を見つけることが大切です。
脊椎関節炎になりやすい人・予防の方法
脊椎関節炎は、遺伝的な要因がある人に発症しやすいです。家族に同じ病気の人がいると、リスクが高まります。また、喫煙者やストレスを抱えた生活をしている人も、リスクを高める可能性があります。
予防には、適度な運動を取り入れ、筋肉を強化し、関節の動きを良くすることが大切です。 バランスの良い食事や十分な休息も、体の免疫力を高めるのに役立ち、脊椎関節炎のリスクを下げる効果が期待できます。
さらに、早期発見と早期対策が重要です。痛みや関節のこわばりなどの症状が出た場合は、できるだけ早く医療機関を受診するようにしましょう。医師の診断を受け、適切な治療を受けながら、リハビリテーションや理学療法などの専門サポートを受けることで、関節の柔軟性を高め、生活の質を向上させることが期待できます。
また、ストレス管理も脊椎関節炎の予防において重要です。過度なストレスは免疫系に悪影響を及ぼし、炎症を引き起こすリスクを高めます。リラクゼーション法や趣味の時間を持つことで、ストレスを軽減し、心身の健康を保つことが大事です。