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『SAPHO症候群』を発症すると現れる症状・原因・治療法はご存知ですか?

 公開日:2023/08/31
『SAPHO症候群』を発症すると現れる症状・原因・治療法はご存知ですか?

SAPHO症候群(さふぉーしょうこうぐん)」という病気をご存知でしょうか。あまり耳にしたことがない人が大半を占めていることでしょう。

SAPHO症候群は指定難病とされている病気です。本記事にたどり着いた人は何らかの形でこの指定難病について触れる機会があり、情報がほしいと感じているのではないでしょうか。

少しでも参考にしていただけるよう、どのような病気なのか・みられる症状・診断方法・治療方法などについて詳しく解説していきます。

ぜひ一読ください。

竹内 想

監修医師
竹内 想(名古屋大学医学部附属病院)

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名古屋大学医学部附属病院にて勤務。国立大学医学部を卒業後、市中病院にて内科・救急・在宅診療など含めた診療経験を積む。専門領域は専門は皮膚・美容皮膚、一般内科・形成外科・美容外科にも知見。

SAPHO症候群の症状や原因

うつむく

SAPHO症候群とはどのような病気ですか?

乾癬(かんせん)という皮膚の病気に関節炎が合併する特徴があり、発症する確立としては非常にまれな自己炎症性疾患です。皮膚の病気に関節炎が合併した乾癬性関節炎と同様に、手のひらと足の裏に小さな水ぶくれができる掌蹠膿疱症(しょうせきのうほうしょう)と骨関節炎が合併したものなどを指します。
病名にもなっているSAPHO症候群とは、さまざまな症状の頭文字を取っている病名です。頭文字となっている病気は以下の通りになります。

  • Synovitis(滑膜炎)
  • Acne(ざ瘡)
  • Pustulosis(膿疱症)
  • Hyperostosis(骨増殖症)
  • Osteitis(骨炎)

発症率や有病率はおそらく過小評価されているものともいわれていますが、生命を脅かすことはほとんどない病気です。

SAPHO症候群の症状について教えてください。

さまざまな重症度の皮膚病や骨関節の多様な組合せを特徴とする病気ですが、症状の特性や個人差が非常に幅広いとされています。主にみられる症状は以下の通りです。

  • 骨関節痛やこわばり
  • 浮腫み
  • 爪の変色
  • 前胸壁や脊椎の炎症
  • 仙腸関節・股関節・膝関節・胸鎖関節の滑膜炎
  • 重度のざ瘡・掌蹠膿疱症・膿疱・性乾癬などの皮膚症状
  • 腹痛
  • 下痢
  • 切れ痔
  • 腫瘍ができる

皮膚症状を発症すると、1〜2年後には骨にも異常が起こることが多いとされています。しかし、皮膚と骨に症状が同時に現れることもあれば20年以上経過してから現れることもあります。
また、腹痛・下痢・切れ痔などが同時に発症した場合には、炎症性腸疾患(IBD)の合併症を引き起こしている可能性が危惧されるでしょう。さまざまな症状がいきなり現れた場合には、すみやかに病院へ受診してください。

原因はわかっているのでしょうか?

SAPHO症候群を発症する原因は、遺伝・環境・免疫・感染などのさまざまな要素が何らかの形で起因すると考えられていますが、明確な原因は不明です。
また、皮膚常在細菌叢を構成している細菌の一種であるグラム陽性嫌気性桿菌(Cutibacterium acnes)などのゆっくりと病気が進行する特徴を持つ細菌によって発症する可能性があるともいわれています。SAPHO症候群の原因究明はまだまだ課題があるといえるでしょう。

かかりやすい年齢を教えてください。

発症年齢は幅広く小児期~成人期後期までになり、発症年齢の平均は30〜50歳ですが、全年齢的に発症し男女差はほぼないとされています。しかし、小児患者の炎症は、慢性非細菌性骨髄炎に似ているともいわれています。世界でも0.04%程度の発症率の報告がされていて、難病指定されているまれな病気です。
日本のデータはまだ報告されていません。日本は欧米に比べると重症のざ瘡に伴う関節炎よりも、前胸壁に多くみられる掌蹠膿疱症骨関節炎(PAO)の発症が多くみられます。掌蹠膿疱症骨関節炎は掌蹠膿疱症の患者のうち約10〜30%で発症するとされています。

SAPHO症候群の診断や治療

病院

SAPHO症候群はどのように診断されますか?

診断基準がいくつか設定されているため、診断の際にはいずれかの基準を満たしていることが条件です。日本だけでなく世界共通で診断基準が設けられていますが、これらの基準は完全に確立されたものではありません
今後も研究や技術の進歩により、さらに改訂されていく可能性があります。いくつもの検査方法を実施し、それぞれの症状やほかの病気がないかを調べなければ、診断が確定することはありません。

検査方法を教えてください。

PAO・SAPHO症候群の特徴とされる臨床症状の確認が行われます。また、症状の確認に合わせて以下のような検査が追加されることが多いです。

  • X線検査(レントゲン)
  • CT
  • MRI
  • 骨シンチグラフィー(画像検査)
  • 骨生検

骨生検は、ほかの病気の可能性がないかを確認するためにも重要な検査事項です。X線・CT・MRIでは、骨の炎症・異常な骨化・関節の隙間の変化などを診断します。骨シンチグラフィーとは、検査前に注射した骨の病変に集まる性質をもつ薬剤(放射性同位体)を利用した画像検査です。もし、骨の病変が発症している場合には胸の前面中央にある胸骨と、その両側左右にある鎖骨の炎症が牛の頭のように見える特徴があります。
ほかにも、脊椎や仙腸関節の炎症も確認できます。ほかの病気が伴っていないかの診断も重要です。場合によっては、複数の診療科の医師が協力して診断を行います。SAPHO症候群の症状は、「脊椎関節炎」と共通している部分が多くあります。ですが、「HLA-B27」という遺伝子を持つ患者さんが多くないのです。さらに、骨炎の症状が主体であることなどから脊椎関節炎と区別されています。

SAPHO症候群の治療方法はあるのでしょうか?

まだ確立された治療方法はありません。そのため、治療は対症療法が基本となります。対症療法は以下の通りです。

  • 禁煙などの生活指導
  • 扁桃摘出術(病巣感染のある場合)
  • 歯周炎などの治療
  • 薬物療法

SAPHO症候群は痛みが自然に緩和することがあります。特に治療を必要としない例もあるので、しっかり検査を受けた上で治療することが非常に重要です。治療方法として一般的に使用されるのは、非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)です。NSAIDsは関節・骨・皮膚の症状いずれに対しても、ある程度の効果があることが判明しています。重度の場合にはビスホスホネート製剤を使用することもあります。ビスホスホネート製剤は骨粗しょう症などによく用いられる薬です。
骨の破壊を抑えて骨量を維持するため、骨や関節の痛みを抑える効果が実感できますが注意するべきことがあります。それは、歯科治療中の場合です。ビスホスホネート製剤を投与するときは、歯科医と連携し、薬剤の調整を行う必要があります。これまでの治療方法では効果が薄いとされていた掌蹠膿疱症に対して、抗IL-23抗体製剤が有効であると認められました。PAOに対しても抗IL-23抗体製剤の有効性が示されているため、今後に期待できるといえるでしょう。

SAPHO症候群の予後と早期発見

医者

SAPHO症候群の予後について教えてください。

予後は比較的、高確率で良好とされています。皮膚科や整形外科で治療されることが多いとされる病気ですが、無症状の場合には経過観察が基本となります。
痛みがある場合でも薬物療法や理学療法で緩和されるため、治療の有効性が認められているといえるでしょう。しかし、脊椎病変や骨硬化病変などを発症した場合には、合併症を引き起こす可能性が高くなるため注意が必要です。長期的にみても痛みなどが自然に和らぐ場合もあり、命にかかわるものではないとされています。

SAPHO症候群は完治するのでしょうか?

SAPHO症候群は難病に指定されている病気です。まだ、治療方法も確立されていません。予後は良好といえますが、完治するのかどうかについては「分からない」が現状です。
今後の医療の課題ともいえるでしょう。まずは病院へ受診して、合併症がないかを調べることが大切になります。

最後に、読者へメッセージをお願いします。

全年齢の人に発症する可能性がある病気ですが、発症する確立は比較的まれであるといえます。しかし、合併症を引き起こす可能性もあるため、体に違和感を覚えたらなるべく早く病院へ受診しましょう。

編集部まとめ

青空
指定難病とされている病気「SAPHO症候群」についてご理解いただけましたでしょうか。

まだまだ治療方法が確立していないなど、今後の医療の発展が課題となる病気です。

世界的にみても発症する割合は低いですが、合併症などを予防するためにも早期発見することが非常に重要となります。

少しでも参考になれば幸いです。

この記事の監修医師