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変形性関節症
眞鍋 憲正

監修医師
眞鍋 憲正(医師)

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信州大学医学部卒業。信州大学大学院医学系研究科スポーツ医科学教室博士課程修了。日本スポーツ協会公認スポーツドクター、日本医師会健康スポーツ医。専門は整形外科、スポーツ整形外科、総合内科、救急科、疫学、スポーツ障害。

変形性関節症の概要

変形性関節症は、関節の軟骨がすり減ることで関節が変形し、痛みやこわばりを引き起こす状態です。加齢とともに発症リスクが高まり、特に女性での発症が多いことが知られています。

60歳以上の人のうち、変形性関節症をもつ人の割合は80%以上、全患者のうち約60%が女性だと言われています。
(出典:健康長寿ネット「変形性関節症」公益社団法人 日本WHO協会「変形性関節症」

発症部位としては、膝関節、股関節、手関節の順で多くなっています。体重を支えるのに重要な膝・股・腰関節で発症すると、歩行やしゃがむ動作などの日常生活に支障をきたすことがあります。

変形性関節症は、関節を守るクッションの役割を果たしている軟骨が、長年の使い過ぎや老化により、少しずつダメージを受け続けることで進行します。現在は異常がない方でも、長年の積み重ねが発症につながるため、運動やストレッチ、姿勢、体重のコントロールなどで予防していくことが重要です。

すでに変形性関節症を発症している場合は、悪化を防ぐために無理のない範囲でリハビリテーションや運動を続けましょう。
変形性関節症

変形性関節症の原因

変形性関節症の原因には多くの要素があります。具体的には、性別(女性)、肥満、過去の関節の外傷、関節に負荷がかかる常習的な活動(重量物を持つ仕事や立ち仕事、スポーツなど)、先天性の病気などが挙げられます。

複数の要素が絡み合って発症するため、変形性関節症の発症リスクは個人のライフスタイルや健康状態によって異なると言えます。

女性

女性ホルモンの一種である「エストロゲン」の減少が原因で、関節の軟骨が劣化しやすくなると言われています。エストロゲンには骨や軟骨などの保護作用があるため、減少することで軟骨の擦り減りが促進されます。そのため、エストロゲンが急激に減少する閉経後に膝の症状があらわれる人が多くなっています。

また、女性は一般的に男性よりも筋力が弱いため、関節にかかる負担が増えやすく、それが原因で変形性関節症のリスクが高まることも一つの要因として考えられています。

肥満や関節に負荷がかかる常習的な活動

体重の増加や負荷がかかる活動の継続は、膝や股関節といった下半身の関節にかかる負担が大きくなります。

過度な圧力が関節にかかり続けることで、関節の軟骨が擦り減り、変形性関節症を発症させる原因になってしまいます。

過去の関節の外傷

過去に骨折や靭帯の損傷、軟骨の損傷などを含む、関節の外傷をしたことがある人は、加齢とともに変形性関節症が発症しやすい傾向が見られます。

先天性の病気

股関節形成不全など、関節の形や機能に生まれつき異常がある場合、正常な関節に比べて負荷がかかりやすく、軟骨が通常よりも早く擦り減る場合があります。

変形性関節症は、遺伝的な要因もあると考えられていて、家族に変形性関節症を罹患した人がいる場合、発症するリスクが高いと言われています。

変形性関節症の前兆や初期症状について

変形性関節症の初期は、関節のこわばりや軽い痛みがあらわれることが多いです。

朝起きたときや長時間座っていた後に、関節がスムーズに動かない、あるいは動かすときに違和感を感じることがあります。しかし、しばらく体を動かしていると緩和されることが多いのが特徴です。

変形性関節症が進行すると、関節を動かす際に「ギシギシ」とした音が聞こえたり、関節に腫れや軽い炎症が見られたりするようになります。

膝や股関節の変形性関節症であれば、階段の上り下りや長時間の歩行で痛みが増すようになり、日常生活に支障をきたすことが増えてきます。

初期の変形性関節症では、痛みは時々感じる程度で、激しい痛みを伴うことは少ないため、症状が進行しても「少しの疲れ」や「年齢のせい」と捉えがちです。

しかし、放置すると関節の変形が進み、治療が難しくなることもあるため、少しでも異変がある場合は、早めに医師に相談するようにしましょう。

変形性関節症の検査・診断

どのような場面で症状が出るのか、腫れの有無などを問診・視診で確認します。その後、関節の可動域や圧痛、動かしたときの引っかかり感も確認します。

症状のある関節の状態を確認した後は、診断を確定させるために画像検査を行います。一般的にはX線検査が最もよく用いられ、関節の隙間が狭くなっているかどうか、骨の変形や骨棘(骨の突出物)がないかを確認します。

ただし、X線検査では、関節の詳しい状態(膝関節であれば半月版など)を確認するのは難しいため、より詳しく軟骨や周囲の組織の状態を確かめるために、MRIや超音波検査を行うことも多いです。

MRIは発症後の検査だけでなく、発症リスクを予測するのにも役立ちます。たとえば、半月板に異常が起こると軟骨が擦り減りやすいと言われているため、発症前に半月板の状態を確認することで、早めに変形性関節症の予防を始めることができるわけです。

変形性関節症の治療

変形性関節症の治療では、主に保存療法や外科的治療が行われます。

保存療法

保存療法では、主に薬剤を用いた痛みのコントロールやヒアルロン酸の注入、リハビリテーションが行われます。
リハビリテーションでは、関節への負担を減らすために大腿四頭筋(太ももにある筋肉)や中殿筋(お尻にある筋肉)などの筋力訓練や関節可動域の維持・向上に向けた訓練を行います。また変形性関節症により活動量が低下している場合には、全身の機能の低下を防ぐ訓練などを行います。

外科的治療

保存療法で症状の改善がみられない場合には、外科的治療が検討されます。代表的なのは関節鏡視下手術と人工関節置換術です。関節鏡視下手術は、関節内の傷ついた軟骨や半月板の欠片や増殖した滑膜を取り除く、いわば関節内の掃除を目的とした手術になります。

一方、人工関節置換術は、障害された関節を人工物に置き換えて、機能を回復させるための治療です。部分的に変える方法もあれば、全て変える人工物に変える方法もあります。

変形性関節症になりやすい人・予防の方法

変形性関節症は、加齢や肥満、過去の外傷、関節に負担がかかる活動の多さ、遺伝によって発症しやすいです。

また、筋力の低下や高血圧、認知症、脂質異常なども変形性関節症を発症しやすくする可能性があると指摘されています。

こうした発症リスクを下げるためには、適度な運動や体重管理などを行い、予防に努めることが重要です。

特に運動は、筋肉を強化し、関節への負担を軽減するために欠かせません。ウォーキングや水泳など、負担が少ない運動を取り入れると良いでしょう。その際は、関節に無理な負担をかけないよう、理学療法士などの専門家による指導を受け、正しい姿勢や動作を心がけることも大切です。

さらに、体重管理も予防には欠かせません。適正な体重を維持することで、関節にかかる圧力を軽減し、軟骨の擦り減りを防ぐことができます。


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