

監修医師:
副島 裕太郎(横浜市立大学医学部血液・免疫・感染症内科)
【資格】
日本内科学会 認定内科医・総合内科専門医・指導医
日本リウマチ学会 リウマチ専門医・指導医・評議員
日本リウマチ学会 登録ソノグラファー
日本リウマチ財団 登録医
日本アレルギー学会 アレルギー専門医(内科)
日本臨床免疫学会 免疫療法認定医
日本化学療法学会 抗菌化学療法認定医
日本エイズ学会 認定医
日本温泉気候物理医学会 温泉療法医・温泉療法専門医
日本骨粗鬆症学会 認定医
日本母性内科学会 母性内科診療プロバイダー
身体障害者福祉法第15条指定医(肢体不自由、ヒト免疫不全ウイルスによる免疫の機能の障害)
インフェクションコントロールドクター
博士(医学)
診療科目
一般内科、リウマチ・膠原病内科、アレルギー科、感染症科
目次 -INDEX-
精巣上体炎の概要
精巣上体炎とは、精巣の後ろにある精巣上体に炎症が起こる病気です。副睾丸炎とも呼ばれます。発症すると陰嚢の腫れや痛み、全身の発熱などを伴うことが少なくありません。多くのケースで片側の陰嚢から症状が始まり、進行すると両側に広がります。
精巣上体炎の原因は、35歳未満の男性では性感染症、35歳以上の男性では大腸菌による尿路感染症が多い傾向にあります。
精巣上体とは、精巣から精子を受け取って成熟させ、精管へ送り出す器官です。精管の先は、精子を貯蔵する精嚢と、前立腺の中を通る射精管を経て尿道につながっています。尿路感染が起きると細菌が精嚢や精管を逆行し、精巣上体まで達してしまうことがあるのです。
精巣上体炎を放置すると精子の数や質に影響し、不妊の原因となるかもしれません。慢性化して不快な症状が続く場合もあります。性感染症が原因であればパートナーにうつしてしまう恐れもあるため、早期に適切な治療を受けるのが大切です。
精巣上体炎の原因
精巣上体炎の主な原因は、細菌による尿路感染症です。尿道や膀胱あるいは前立腺に感染した細菌が、精管を通って精巣上体へ達し、炎症を引き起こします。
感染症
性的に活発な年代の男性が精巣上体炎になった場合、多くの原因は性感染症です。主には淋菌とクラミジアで、同時に感染するケースも少なくありません。
中高年男性では、大腸菌などによる尿路感染症から精巣上体炎に進展することが多くなります。ストレスや基礎疾患が発症に影響する場合もあります。
原因菌がわからない場合も少なくありません。痛みや腫れの症状が乏しければ、結核菌による血行性感染も考えられます。過去に感染した結核菌が体内に残っており、血流に乗って精巣上体に感染する場合があるのです。免疫機能が低下している患者さんでは、ウイルスや真菌も精巣上体炎を引き起こす恐れがあります。
感染症以外の原因
思春期以前の小児では、感染を伴わない炎症である特発性精巣上体炎も珍しくありません。内科疾患や先天性疾患が背景にある場合もあります。
陰嚢の外傷も精巣上体炎の原因となります。陰嚢に強い衝撃が加わると、精巣上体へ尿が逆流して刺激となり、炎症が起きるかもしれません。重い物を持ち上げるなどして強い腹圧がかかっても、同様に尿が逆流する可能性があります。
精巣上体炎の前兆や初期症状について
精巣上体炎は、陰嚢の痛みと全身の発熱で急激に発症することが多い傾向です。精巣の裏側を触ると、腫れた精巣上体がしこりとして触れるかもしれません。排尿時の痛みや頻尿といった尿道炎の症状が先行することもあります。一方で、症状が軽い場合や、尿道炎の症状が出ない場合もあります。
淋菌感染症による精巣上体炎は、激しい症状が特徴です。陰嚢が腫れ上がり、歩けないほど痛むこともあります。高熱を伴うことも少なくありません。尿道のかゆみや痛み、大量の膿が出るといった尿道炎の症状も伴います。
一方でクラミジア感染症は、症状が軽い場合も珍しくありません。尿道炎の症状がまったくないのに精巣上体炎を発症することもあります。
精巣上体炎かもしれないと思ったら泌尿器科を受診しましょう。症状が軽くても、放置すると不妊につながる可能性があります。精巣の腫瘍が隠れている可能性も否定できません。なるべく早く泌尿器科で診察を受けるのが大切です。
精巣上体炎の検査・診断
精巣上体炎の診断には、問診と身体診察を行います。また、ほかの疾患との鑑別や原因菌の特定のため、超音波検査や尿検査といった検査を行います。特に思春期頃の男性では、緊急に治療が必要な精巣捻転症との鑑別が欠かせません。
診察
まず、症状と病歴の問診があります。そして陰嚢の視診・触診で、陰嚢の赤みや圧痛の程度、腫れている部位などをチェックします。明らかに精巣上体だけが腫れていれば、触診だけで精巣上体炎と診断されるかもしれません。
超音波検査
超音波(エコー)検査では陰嚢内部を観察し、どの部位が腫れているか、液体が溜まっていないかなどをチェックします。精巣上体だけでなく、精巣や周辺の状態も確認します。
血流を見られるドップラー超音波検査は、精巣捻転症との鑑別に有用です。精巣上体炎であれば、血流が減ったり止まったりすることはありません。
尿検査
尿検査は、尿路感染の有無を調べるために行います。尿中の白血球が増加していれば、感染が原因だと推定可能です。
原因菌を特定するには、尿の培養検査やPCR検査を行います。尿道からの分泌物を調べることもあります。性感染症の場合、抗菌薬が効きにくい耐性菌が問題となっているため、どの薬なら効くか調べる薬剤感受性検査を行うかもしれません。
そのほかの検査
ほかには、血液検査で体内の炎症の有無や程度を調べたり、MRIやCTでの評価を行ったりする場合もあります。
精巣上体炎を繰り返す場合は、尿道に異常がないか調べるかもしれません。小児が初めて発症したときは、腎臓のエコー検査を実施する場合もあります。
精巣上体炎の治療
精巣上体炎の治療は抗菌薬が基本です。ほかに対症療法として、以下の治療を組み合わせます。
- 陰嚢を冷やす
- 安静にする
- 鎮痛薬を服用する
- 陰嚢サポーターを着用する
陰嚢をサポーターで固定すると、わずかな振動による痛みが軽減されます。
抗菌薬での治療期間は1〜7日間が目安ですが、重症度や原因菌によって、もっと長くなる場合もあります。全身症状が強い場合は、入院が必要となるかもしれません。
性感染症による精巣上体炎の治療
淋菌やクラミジアが確認されれば、対応する抗菌薬を使って治療します。両者は有効な抗菌薬が異なるため、どちらに感染しているのか確認してから治療するのが重要です。また、抗菌薬の効きにくい薬剤耐性菌が増えているため、効果のある抗菌薬を調べてから治療を開始する場合もあります。
淋菌感染症の場合は、1日1〜2回の点滴を1〜7日間、重症度に応じて使用します。あるいは筋肉注射を1〜2日に分けて実施します。
クラミジア感染症の場合は内服薬です。1回飲み切りの抗菌薬または7日間続ける抗菌薬を服用します。症状が激しい場合は、点滴と内服を3〜5日間併用してから、内服薬に切り替える場合もあります。
性感染症の検査と治療は、必ずパートナーも一緒に受けましょう。また、症状が消えても菌が残っているケースもあるため、服薬後に治癒を確認するのが大切です。特にクラミジアでは、治癒確認の検査が必須とされます。
精巣上体炎になりやすい人・予防の方法
精巣上体炎になりやすいのは、以下のような感染しやすい要因を持つ人です。
- 性的に活発な人
- 尿路に基礎疾患がある人
- 免疫機能が低下している人
- 尿道カテーテルを留置している人
- 尿道や前立腺の外科処置を受けた人
予防方法も確認していきましょう。
精巣上体炎の予防方法
性的に活発な人は、性感染症にかかる可能性も高くなります。予防のためにはコンドームの使用が効果的です。性行為の最初から最後まで、正しくコンドームを装着することで感染の可能性を下げられます。
尿路結石や前立腺肥大といった尿路の基礎疾患を持つ人は、尿路感染を起こしやすい傾向があります。糖尿病やHIV感染症といった免疫機能が低下しやすい基礎疾患を持つ方も、感染を起こしやすい状態です。基礎疾患の治療をすることで、感染の確率を下げられる可能性があります。
健康な方でも、ストレスや寝不足によって免疫力が下がると尿路感染症を発症しやすくなるかもしれません。なるべくストレスを溜めず、規則正しい生活を送るのが理想的です。もし尿道炎の症状が現れたら、早期に治療することで、精巣上体炎への進展を抑えられるかもしれません。
性器をきちんと洗って清潔を保つことも大切です。尿道カテーテルを使用している患者さんも、定期的に交換したり、清潔な取り扱いを心がけることで、精巣上体炎の予防につながります。
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参考文献




