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林 良典

監修医師
林 良典(医師)

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【出身大学】
名古屋市立大学
【経歴】
東京医療センター総合内科、西伊豆健育会病院内科、東京高輪病院感染症内科、順天堂大学総合診療科、NTT東日本関東病院予防医学センター・総合診療科を経て現職。
【資格】
医学博士、公認心理師、総合診療特任指導医、総合内科専門医、老年科専門医、認知症専門医・指導医、在宅医療連合学会専門医、禁煙サポーター
【診療科目】
総合診療科、老年科、感染症、緩和医療、消化器内科、呼吸器内科、皮膚科、整形外科、眼科、循環器内科、脳神経内科、精神科、膠原病内科

上室性頻拍の概要

上室性頻拍(SVT:Supraventricular Tachycardia)とは、心臓の上部で発生する異常な電気信号によって、脈拍が異常に速くなる不整脈の一種です。
安静にしているときの正常な心拍数は1分間に60~100回程度ですが、上室性頻拍の発作中はそれを大きく上回る150~200回/分にも達し、突然発症して突然止まるという特徴があります。発作が起こっている間は心臓が十分に血液を送り出せず、全身への血流が低下するため動悸やめまいなどの症状を引き起こします。とはいえ、もともと心臓に病気がない健康な方では、この頻拍発作そのものが命に直結することは少なく、心臓が突然止まってしまうような危険性は通常高くありません。

上室性頻拍は発作性上室性頻拍とも呼ばれ、実際にはいくつかの異なるタイプの不整脈の総称です。年齢や性別を問わず発生しうる不整脈であり、小児や乳幼児において最も多くみられる不整脈でもあります。成人でも若い世代から中高年まで幅広く発症し、特に女性に多い傾向が報告されています。

上室性頻拍の原因

上室性頻拍の直接の原因は、心臓内部の電気信号の回路のショートのような現象にあります。通常、心臓の電気信号は洞結節で生じて、心房から房室結節を経由し心室へと一定の経路で伝わります。しかし、上室性頻拍では、この電気信号の経路に異常があり、心室より上の部分で電気信号がグルグルと回る回路(リエントリー回路)ができてしまうことがあります。この結果、心臓が自分自身の電気刺激で高速に駆動され、脈拍が急激に速くなります。

多くの上室性頻拍は生まれつき存在する心臓の電気経路の異常によって起こります。代表例がWPW症候群で、通常の房室結節以外に心房と心室をつなぐ副伝導路と呼ばれる通常とは異なる電気の通り道が先天的に存在する状態です。この副伝導路と通常の伝導路の間で電気信号がグルグル回ってしまい、発作性の頻拍発作を引き起こすことがあります。

ほかにも、心疾患(冠動脈疾患や心筋症など)がある方や高血圧症のある方では心臓の電気系統に負荷がかかり不整脈を誘発しやすくなります。そして、慢性的な肺の病気(COPDなど)、重度の貧血、甲状腺機能亢進症なども不整脈の要因となりえます。このように、体内の状態や基礎疾患も上室性頻拍に影響を与えます。

そして、上室性頻拍の発作を誘引する要因は疾患以外にもさまざまなものがあります。

  • 身体的・精神的なストレス
  • 激しい運動
  • カフェインやアルコールなどの刺激物質の過剰摂取
  • 喫煙
  • コカインなどの薬物使用
  • 睡眠不足
  • 極度の疲労
  • 脱水

これら誘因があると、上室性頻拍の症状が出やすくなることがあります。

上室性頻拍の前兆や初期症状について

上室性頻拍の発作は多くの場合、予兆なく突然に始まります。ただし、人によっては発作が始まる直前に胸が一瞬「ドキッ」とする感じや脈がひと拍飛ぶような感覚を覚えることがあります。こうした前兆は必ずしも毎回感じられるものではなく、感じないまま突然強い動悸へ移行することも少なくありません。

そして、上室性頻拍の主な症状は、突然始まる激しい動悸です。胸が激しく脈打つのを自覚し、多くの場合は脈拍の急激な増加を本人がはっきり感じ取ります。脈が速くなるだけでなく、胸部に違和感や圧迫感を覚えることもあります。頻拍が続くと十分に血圧を保てなくなるため、めまいやふらつき、視界が暗くなるといった症状を伴うことがあります。
発作中は不安感や冷や汗を伴うこともあり、人によって症状の出方はさまざまです。しかし、脈がもとに戻ればこうした症状は速やかに消失するのが通常で、発作が終われば体調も元どおりになります。

このような上室性頻拍が疑われる症状があれば、早めに医療機関を受診することが望ましいです。受診すべき診療科目は、循環器内科になります。まずは一般の内科でも構いませんが、症状を説明すれば必要に応じて循環器内科への紹介となるでしょう。

上室性頻拍の検査・診断

上室性頻拍が疑われる場合、心電図検査による確認が重要です。動悸発作が起きている最中に医療機関を受診できれば、心電図で拍動の様子を記録し、SVT特有のリズムをとらえることで診断が可能です。一方、発作が終わってしまうと心電図は正常に戻ってしまうことが多いため、発作が起きていないタイミングで病院を受診しても異常が検出されない場合があります。

発作が頻繁でタイミング良く病院に行けない場合や、発作の間隔が空いていてとらえにくい場合には、ホルター心電図といった長時間記録のできる機器を用いて検査を行います。ホルター心電図は小型の心電図計を24時間から数日間装着して日常生活中の心電図を記録する検査で、発作が起きた瞬間の波形を後から確認することができます。

上室性頻拍の診断や原因検索のために、心電図以外の検査が行われることもあります。心臓超音波検査(心エコー)では心臓の構造的な異常がないかを調べます。また、運動負荷心電図によって、運動時の心拍数の変化や不整脈の誘発のされやすさを確認することもあります。必要に応じて血液検査で甲状腺ホルモン値の測定や電解質バランスの確認などが行われ、ほかの原因で脈が速くなっていないか総合的に評価されます。

上室性頻拍の治療

発作が起きた際には、まず速やかに頻拍を止めるための治療が行われます。代表的な方法として、迷走神経刺激法(いきむ・冷水で顔を冷やすなど)に加えて、カルシウム拮抗薬やβ遮断薬の静脈注射が用いられることがあります。

また、上室性頻拍は一度発作が起きても、それきりで二度と起こらない方もいれば、繰り返す方もいます。再発を防ぐための治療としては、大きく分けて薬による治療カテーテルアブレーションによる治療があります。

薬物治療としては、心拍数を抑えたり不整脈を起こしにくくする薬を毎日内服する方法があります。一般的によく使われるのはβ遮断薬やカルシウム拮抗薬で、これらは心臓の拍動そのものをゆっくりにする作用があり、発作の頻度や程度を和らげる効果が期待できます。ほかにも発作予防のために抗不整脈薬が用いられることもあります。

上室性頻拍を根本的に治す治療法はカテーテルアブレーションです。カテーテルアブレーションは、細いカテーテルを血管内から心臓まで挿入し、頻拍の原因となっている余分な電気回路や異常興奮の局所を高周波エネルギーや冷凍エネルギーで焼灼して壊す治療法です。治療後は心電図が正常化し、その不整脈発作は起こらなくなります。患者さんにとっては身体への負担が少ない低侵襲な治療です。しかし、心臓内にカテーテルを入れる侵襲的手技であるためまれですが血管穿刺部の出血や心タンポナーデなどの合併症のリスクがあります。

上室性頻拍になりやすい人・予防の方法

上室性頻拍は健康な方にも起こりえますが、上室性頻拍になりやすい方がいます。

  • 女性
  • WPW症候群
  • 高血圧症や心疾患(冠動脈疾患、心不全など)など
  • 慢性の肺疾患(COPD、睡眠時無呼吸症候群など)
  • 貧血がある方
  • 更年期の女性
  • 妊娠中の女性

これらに該当する場合は上室性頻拍の症状を起こしやすい傾向にあります。
そして、上室性頻拍そのものを完全に防ぐ確実な方法はありません。しかし、日常生活での工夫により発作の誘因を減らすことは可能です。次に、発作予防に役立つポイントをいくつか挙げます。

  • ストレスをできるだけ避け、リラックスを心がける
  • 十分な睡眠と休養をとる
  • 過度なカフェインやアルコールを控える
  • 禁煙する
  • 水分をしっかり補給する
  • 急激な動作や過度の運動を避ける

これらの生活上の工夫により、上室性頻拍の発作頻度を減らせる可能性があります。ただし、前述のとおり上室性頻拍は生まれつきの回路が原因で起こることも多く、生活改善だけで完全に発作を予防することは難しい場合もあります。発作の頻度や程度が改善しないようであれば、医療機関を受診するようにしてください。

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