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心疾患
井筒 琢磨

監修医師
井筒 琢磨(医師)

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江戸川病院所属。専門領域分類は内科(糖尿病内科、腎臓内科)
2014年 宮城県仙台市立病院 医局
2016年 宮城県仙台市立病院 循環器内科
2019年 社会福祉法人仁生社江戸川病院 糖尿病・代謝・腎臓内科
所属学会:日本内科学会、日本糖尿病学会、日本循環器学会、日本不整脈心電図学会、日本心血管インターベンション治療学会、日本心エコー学会

心疾患の概要

心疾患とは心臓に起こる病気の総称であり「心臓に何らかの障害が起こり、血液の流れが悪くなる病気」のことです。代表的な病気には、虚血性心疾患(狭心症・心筋梗塞)・不整脈・心臓弁膜症・心不全などがあります。

令和2年における全国死因別の死亡者数のうち心疾患は全体の15.0%(205,596名)を占めており、悪性新生物(がん)に次いで2番目に多い病気です。

(出典:厚生労働省「令和2年(2020)人口動態統計(確定数)の概況」
心疾患

心疾患の原因

心疾患の主な原因は動脈硬化です。動脈硬化の原因はさまざまなものが考えられ、危険因子として以下が挙げられます。

  • 高血圧
  • 脂質異常症
  • 糖尿病(高血糖)
  • 内臓脂肪型肥満
  • 喫煙
  • ストレス
  • 不規則な生活習慣

特に、高血圧・高血糖・脂質異常症・内臓脂肪型肥満のうちいずれか2つ以上に当てはまっている状態はメタボリックシンドロームと呼ばれ、心疾患の発症リスクを高めます。

生活習慣に関連する要因のほかに、遺伝的な要因も関係していると考えられています。

心疾患の前兆や初期症状について

心疾患のうち、ここでは虚血性心疾患・不整脈・心臓弁膜症・心不全の前兆や初期症状について解説します。

虚血性心疾患

虚血性心疾患は、動脈硬化や血栓(血の塊)などによって心臓にある冠動脈が狭くなったり閉塞したりして、心筋に血液がいかなくなることで起こります。

冠動脈が狭くなった病態が「狭心症」であり、閉塞した病態が「心筋梗塞」です。

狭心症の主な初期症状は、胸の痛みや違和感です。鋭い痛みではなく、胸のあたりを押されたり締めつけられたりするような感覚と言われます。

狭心症の病状が徐々に進行すると心筋梗塞に至ります。心筋梗塞に移行すると血液が届かなくなることで心筋が壊死するため、激しい胸の痛みが30分以上続き、命に関わる状態になります。

不整脈

不整脈とは、脈が早くなったり(1分間に100回以上)遅くなったり(1分間に50回以下)、もしくは脈のリズムが不規則になったりする状態のことです。

脈が速くなると動悸や息切れ、めまいなどの症状が現れることがあります。一方で、脈が遅い場合は身体を動かすのがつらくなり、動くと息切れの症状が現れます。

リズムが不規則になると、胸の違和感を覚えます。

ただし、不整脈の種類によっては突然激しい胸痛や失神などが現れるケースもあるため、普段から少しでも気になる症状がある方は早めに医療機関を受診しましょう。

心臓弁膜症

心臓弁膜症とは、心臓にある大動脈弁・僧帽弁・三尖弁・肺動脈弁といった4つの弁(血液が流れるときに開き、終わったら逆流防止のために閉じる役割を持つ)が異常をきたす病気です。

心臓弁膜症の初期は、自覚症状がほとんどありません。病状が進行すると動悸や息切れ、むくみなどが現れます。

心臓弁膜症の患者さんのなかには、不整脈や感染性心内膜炎(細菌により弁が破壊される病気)をきたす場合もあります。

心不全

心不全は、心臓のポンプ機能が正常に働かなくなり、症状をきたした状態のことです。

心臓から十分な血液が送られなくなり、身体に酸素や栄養が足りなくなるため、坂道を歩くと息切れや疲れやすさを感じます。

病状が進行すると尿量が減って身体の中に水分が溜まり、むくんだり体重が増加したりします。

心疾患の検査・診断

心疾患の主な検査は、以下4つの病気でそれぞれ異なります。患者さんの病状によっては、表の内容に加えて検査が追加される場合もあります。

病名 検査
虚血性心疾患 ・12誘導心電図検査
・運動負荷心電図検査(運動をして心臓に負荷をかけたときの心電図の変化をみる検査)
・超音波検査(心エコー)
・心筋シンチグラフィー(微量の放射線物質により血液が血管にいき渡っているか確認する検査)
・冠動脈のCT検査
・心臓カテーテル検査
・採血検査
不整脈 ・12誘導心電図検査
・運動負荷心電図検査
・長時間心電図検査
・採血検査
心臓弁膜症 ・超音波検査
・経食道エコー検査
・採血検査
心不全 ・胸部レントゲン検査
・採血検査
・超音波検査

それぞれの病気は、医師が問診・診察した結果とそれぞれの検査結果をもとに診断されます。

心疾患の治療

心疾患の主な治療は、以下4つの病気でそれぞれ異なります。

必須条件 必須条件
虚血性心疾患 ・薬物療法(抗血小板薬、血管拡張薬など)
・経皮的冠動脈形成術(PCI)
・冠動脈バイパス術(CABG)
不整脈 ・薬物治療(抗不整脈薬、抗凝固薬など)
・カテーテルアブレーション術
・外科的手術(左心耳閉鎖術)
・デバイス治療(ペースメーカー、植込み型除細動器、心臓再同期ペースメーカー治療)
心臓弁膜症 ◯外科手術
・弁形成術:自身の弁を残しつつ修復する手術
・弁置換術:機能しない弁を人工弁に取り替える手術
・ダビンチロボットによる低侵襲手術

◯カテーテル治療
・大動脈弁狭窄症:経カテーテル的大動脈弁置換術(TAVI/TAVR)
・僧帽弁閉鎖不全症:経カテーテル的僧帽弁修復術(マイトラクリップMitraClip)

心不全 ・薬物療法(利尿薬、アンジオテンシン変換酵素阻害薬など)
・心不全の原因となっている病気への治療

心不全の治療法では、主に薬物療法を行いますが、原因がはっきりしている場合は、その病気に対して治療を行います。
虚血性心疾患が原因で心不全が起こっているケースであれば、経皮的冠動脈形成術や冠動脈バイパス術などを行います。

心疾患になりやすい人・予防の方法

心疾患になりやすい人は高血圧・高血糖・脂質異常症・内臓脂肪型肥満に当てはまる人です。心疾患の主な予防法は以下の通りです。

  • 健康的な食事を摂る
  • 適度に運動する
  • 禁煙する
  • ストレスを避ける

栄養のバランスの取れた食事を摂ったり、ジョギングやウォーキングなどの有酸素運動を実施したりすることで心疾患の予防につながります。

タバコは動脈硬化の危険因子であるため禁煙することが大事です。ストレスになりやすい場面から避けたり、気分転換をしたりしてストレスを溜めないことも、心疾患の予防には欠かせません。


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