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WPW症候群
本多 洋介

監修医師
本多 洋介(Myクリニック本多内科医院)

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群馬大学医学部卒業。その後、伊勢崎市民病院、群馬県立心臓血管センター、済生会横浜市東部病院で循環器内科医として経験を積む。現在は「Myクリニック本多内科医院」院長。日本内科学会総合内科専門医、日本循環器学会専門医、日本心血管インターベンション治療学会専門医。

WPW症候群の概要

WPW症候群(ウォルフ-パーキンソン-ホワイト症候群)は、心臓の電気伝導路に、正常の経路以外に余分な電気伝導路(副伝導路)が存在することによって頻脈発作を起こすことがある症候群です。

WPW症候群の主な特徴は以下の通りです。

  • 特徴的な心電図所見がある:PQ間隔の短縮、QRSにデルタ波
  • 頻脈発作(心臓の拍動が異常に速くなる)、動悸や息切れなどの症状
  • まれに失神や心停止のリスク

この症候群は、1000人に数人の割合で発生すると言われています。男女差はなく、多くは10代から20代前半で症状が現れますが、乳児期や60歳以上で発症することもあります。

WPW症候群の原因

WPW症候群の主な原因は、心臓の心房と心室の間に存在する余分な電気伝導路(副伝導路)です。この副伝導路は「ケント束」と呼ばれ、生まれつき存在しています。

通常、心臓の電気信号は洞結節から発生し、心房を通って房室結節に達し、そこで一時的に遅延した後、心室に伝わります。しかしWPW症候群では、この正常な経路に加えて副伝導路が存在するため、電気信号が正常と異なる経路を通って心室に早く到達してしまいます。この異常な電気伝導のパターンにより、心電図上で「デルタ波」と呼ばれる特徴的な波形が現れます。ただし、頻脈発作を起こしたときだけデルタ波が出現する、潜在性WPW症候群と呼ばれるタイプもあります。

WPW症候群の前兆や初期症状について

WPW症候群自体は症状を起こしませんが、頻脈を起こすことで一般的に以下のような症状が出ます。

  • 突然の動悸
    心臓が速く、または不規則に拍動しているように感じます。
  • 胸部不快感
    胸がドキドキしたり、締め付けられるような感覚があります。
  • めまい
    頭がふらつく感じがします。
  • 息切れ
    通常の活動でも息苦しさを感じることがあります。
  • 失神(稀)
    意識を失うことがあります。

これらの症状は、特に運動中や精神的ストレスがある時に現れやすく、数秒から数時間続くことがあります。多くの場合、症状は突然始まり、突然終わるのが特徴です。
なお乳児の場合は、以下のような症状が見られることがあります。

  • 息切れ
  • 意識の低下
  • 十分に食事をとらない
  • 胸部に視認できる速い拍動

これらの症状が現れたら循環器内科を受診しましょう。

WPW症候群の検査・診断

WPW症候群の診断には、主に以下の検査が用いられます。

1. 心電図(ECG)

最も重要な検査で、WPW症候群に特徴的な「デルタ波」と呼ばれる波形を確認します。また、PQ間隔の短縮やQRS波の延長なども観察されます。

2. ホルター心電図

24時間以上にわたって心電図を記録する検査です。日常生活中の不整脈の発生を捉えることができます。

3. 運動負荷心電図

トレッドミルや自転車エルゴメーターを使用して運動中の心臓の反応を観察します。

4. 心臓超音波検査(エコー)

心臓の構造や機能を評価し、ほかの心臓疾患の有無を確認します。WPW症候群はEbstein奇形などの先天性心奇形を合併することがあるため、乳幼児では必須です。

5. 電気生理学的検査

カテーテルを用いて心臓内の電気的活動を詳細に調べる検査です。特に、潜在性WPW症候群(通常の心電図では見つからないタイプ)の診断に有用です。

これらの検査により、WPW症候群の診断だけでなく、副伝導路の位置や特性も把握することができます。

WPW症候群の治療

WPW症候群そのものへの治療は、症状の程度や頻度、患者さんの状態によって異なります。

1. 経過観察

心電図所見のみで頻脈発作がない場合は、定期的な検査と経過観察とします。

2. 薬物療法

抗不整脈薬を使用して発作を抑制します。ベータ遮断薬やIaまたはIc群のNaチャネル遮断薬が用いられます。なお、一部の不整脈に用いられるジギタリスは、副伝導路の不応期を短縮させ房室結節の伝導性を抑制する特性から、致死的不整脈である心室細動を誘発する危険性があるため、WPW症候群がある方へのジギタリス投与は絶対禁忌です。

3. カテーテルアブレーション

頻脈発作の頻度と重症度で根治療法が必要な場合などには、最も効果的な治療法の一つです。カテーテルを用いて副伝導路を焼灼(しょうしゃく)し、異常な電気伝導を遮断します。この方法は高い成功率を示し、多くの場合で根治が期待できます。

4. 外科的治療

カテーテルアブレーションが困難な場合や、ほかの心臓手術が必要な場合に行われますが稀です。

頻脈発作への治療については、ショック状態や肺水腫など重篤な場合は直流通電またはペーシングにより緊急に頻脈を停止させる必要があります。緊急を要しない発作性上室性頻拍に対しては迷走神経刺激、ベラパミルやアデノシン三リン酸(ATP)の静注を行います。一方、それらが無効だった場合や発作性心房細動があれば、Naチャネル遮断薬やアミオダロンを投与します。WPW症候群に伴う心房細動は心拍数が200回/分以上に上昇し心室細動に移行するリスクがあるため、迅速な対応が必要です。

WPW症候群になりやすい人・予防の方法

WPW症候群は先天性の異常であるため、特定の人がなりやすいということはありません。しかし、以下のような要因が症状の発現や悪化に関連する可能性があります。

  • 年齢
    多くの場合、10代から20代前半で症状が現れやすくなります。
  • ストレス
    精神的ストレスが頻脈発作のトリガーとなることがあります。
  • 運動
    激しい運動が頻脈発作を誘発する可能性があります。
  • アルコールや刺激物の過剰摂取
    不整脈を引き起こす可能性があります。

WPW症候群そのものを予防することはできませんが、診断を受けた方は以下の点に注意することで症状のコントロールに役立つ可能性があります。

  • 定期的な医療機関の受診
    症状の変化や治療の効果を確認するために重要です。
  • 処方された薬の確実な服用
    医師の指示通りに薬を服用しましょう。
  • 生活習慣の改善
    過度の飲酒や喫煙を避け、バランスの取れた食事と適度な運動を心がけましょう。
  • ストレス管理
    リラックス法やストレス解消法を身につけることは有効です。
  • 十分な睡眠
    良質な睡眠を取ることで、心臓への負担を軽減できます。
  • 症状の記録
    頻脈発作の頻度や持続時間、関連する要因などを記録して医師に報告しましょう。

WPW症候群は適切な管理と治療により、多くの場合良好な予後が期待できます。しかし、症状が気になる場合や新たな症状が現れた場合は、早めに医療機関を受診し、医師の診断を受けることが重要です。特に、失神や持続的な動悸がある場合は、緊急の医療処置が必要となる可能性があるため、速やかに医療機関を受診してください。

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