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認知機能低下
勝木 将人

監修医師
勝木 将人(医師)

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2016年東北大学卒業 / 現在は諏訪日赤に脳外科医、頭痛外来で勤務。 / 専門は頭痛、データサイエンス、AI.

認知機能低下の概要

認知とは「理解・判断・論理などの知的機能のこと」を指します。認知機能とは「見る・聴く・触る・嗅ぐ・味わうといった五感から得た情報をもとに、周りの状況を理解して行動する能力のこと」です。

一般的に、認知機能は年齢とともに低下します。一方で、病気や外的要因によって、認知機能の低下が急激に悪化する場合もあります。特に、普段の生活の中で認知機能の低下が明らかになると、生活の質が大きく損なわれます。

重症化を防ぐために、早期に診断して適切な治療を受けることが重要です。

認知機能低下

認知機能低下の原因

認知機能低下の原因は多岐にわたります。

加齢は、認知機能低下が起こる要因のひとつです。60歳以上の高齢者で、認知症が生涯発生する確率は50%と報告されています。年齢を重ねることで、脳の細胞が減少したり機能の低下が進んだりすることで、記憶力や注意力などに影響をきたします。
(出典:日本老年学会「高齢者および高齢社会に関する検討ワーキンググループ報告書2024」

アルツハイマー型認知症や血管性認知症なども認知機能の低下を引き起こす原因です。これらの病気は、脳内の異常なタンパク質の蓄積や血管の損傷によって、脳の機能が徐々に衰えることで発症します。

他にも、高血圧や糖尿病、脂質異常症などの生活習慣病は、長期間にわたり血管や神経にダメージを与え脳血流の障害を引き起こすため、認知機能低下のリスクを高めます。

加えて、慢性的なストレスや睡眠不足も脳機能に悪影響を与える要因です。これらのリスクを軽減するためには、生活習慣の見直しや定期的な健康チェックが重要です。

認知機能低下の前兆や初期症状について

認知機能低下の前兆や初期症状は、日常生活で気づきにくい場合があります。

認知機能低下は「認知症」と診断される前の状況であり、日常生活を送ることができるケースもあるためです。認知機能低下の主な症状は、以下の表のとおりです。

症状 ポイント
記憶障害 生理的な老化現象による物忘れに対して、病的な物忘れが起こる(例:自分が言ったことを思い出せない、昼ご飯を食べたこと自体を忘れる)
失語(しつご) 言葉に関わる脳の部分が機能しなくなり「聞く」「読む」「話す」などの行為が正常にできなくなる
(例:固有名詞が出てこなくなり「これ」「あれ」を多用する、聞こえていても理解できなくなる)
失行(しっこう) 日常生活で普通におこなっている行動ができなくなる
(例:洋服が着られないようになる、仕事の道具を使えなくなる)
失認(しつにん) 見ている物が何か分からず、物体を認識できなくなる
(例:普段よく行くスーパーに行けなくなる、醤油を取ってとお願いされても醤油を認識できなくなる)
遂行機能障害 物事に計画的に取り組めなくなる
(例:料理ができなくなる、これまでできた仕事を進められなくなる)

できるだけ早く対処しなければ、進行が進みやすくなるため早期予防や治療が重要です。

認知機能低下の検査・診断

認知機能低下の検査・診断は、主に医療機関で行われ、認知症や軽度認知障害の早期発見を目的としています。

まず問診を行い、患者さんや家族の話をもとに生活の中での変化や症状の現れ方を確認します。特に、物忘れや時間感覚の混乱、日常的な判断力の低下が見られる場合は、認知機能低下のサインとなる場合があります。

その後「HDS-R(改訂版長谷川式簡易知能評価スケール)」や「MMSE(Mini-Mental State Examination)」などで認知機能を評価します。記憶力や注意力、言語能力、計算能力、時間や場所の認識などを評価します。

さらに、詳細な診断が必要な場合は、MRIやCTなどの画像診断を行い、脳の萎縮や血管の状態をチェックします。

また、血液検査によって甲状腺機能の異常やビタミン不足など、認知機能に影響を与える病気の有無を確認することも重要です。血液検査の結果により、適切な治療方針を立てやすくなります。

認知機能低下の治療

認知機能低下の治療は、主に原因によってアプローチが異なります。

例えば、慢性硬膜下血腫が認知機能低下の原因である場合は、頭の中に溜まった血腫(血の塊)を外科的な手術で取り除きます。ほかにも、甲状腺機能やビタミン不足が要因となっているケースでは、薬物療法を行うことがあります。

また、軽度の認知機能低下の場合は、生活習慣の改善や脳トレーニングが推奨されます。特に、適度な運動やバランスの取れた食事、十分な睡眠は脳の健康に寄与し、認知機能を保つ助けになります。

さらに、社会的な活動や趣味を通じての交流も、脳を刺激する良い方法です。

治療は個々の症状や状態に合わせて行う必要があり、早期発見と早期介入が治療効果を高めるために不可欠です。

認知機能低下になりやすい人・予防の方法

認知機能低下は、さまざまな要因により発生します。

認知機能低下は加齢による影響を受けるため、高齢者は症状が現れやすいと言えます。他にも、遺伝的な要因や生活習慣が関連する可能性があります。特に、運動不足や不適切な食生活、高血圧、糖尿病、喫煙などの生活習慣は、認知機能低下のリスクを高める要因です。

また、社会的孤立や精神的ストレスも、脳に悪影響を及ぼし、結果として認知機能低下を起こす恐れがあります。

認知機能低下を予防する方法は、健康的な生活習慣の確立です。具体的には、ウォーキングや水泳、ヨガなど定期的に運動したり、バランスの取れた食事を心掛けたりします。

さらに、認知機能を鍛えるための脳トレーニングやパズル、読書、楽器演奏なども効果的です。社会的な活動を通じて人とのつながりを大切にし、ストレス管理を行うことも予防には欠かせません。

メンタルヘルスの向上を図るために、趣味やリラクゼーション活動も取り入れると良いでしょう。定期的な健康診断や医療機関での脳の状態チェックも、早期の認知機能低下の予防につながります。


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