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頭痛
勝木 将人

監修医師
勝木 将人(医師)

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2016年東北大学卒業 / 現在は諏訪日赤に脳外科医、頭痛外来で勤務。 / 専門は頭痛、データサイエンス、AI.

頭痛の概要

頭痛とは頭部の痛みの総称で、後頭部や後頚部(首の後ろ)、眼の奥の痛みも頭痛に含まれます。2018年の国際頭痛分類第 3 版(International Classification of Headache Disorders 3rd Edition:ICHD-3)によると、頭痛は「一次性頭痛」、「二次性頭痛」、「有痛性脳神経ニューロパチー、他の顔面痛およびその他の頭痛」に分類されます。
出典:日本頭痛学会「国際頭痛分類第3版(ICHD-3)日本語版」

一次性頭痛は特定の病気が原因ではない慢性頭痛症で、主に片頭痛、緊張型頭痛、群発頭痛などがあります。二次性頭痛は他の病気が原因で発症する頭痛で、脳腫瘍、脳出血、髄膜炎、クモ膜下出血や脳卒中などが原因となります。

頭痛

頭痛の原因

頭痛の原因は頭痛の分類によって異なります。一般的な原因は、以下の通りです。

一次性頭痛

  • 片頭痛
    何らかの刺激により血管に分布する三叉神経(さんさしんけい)が興奮し、炎症が生じて痛みを引き起こすことが原因となっている説が最も有力であるとされています。
  • 緊張型頭痛
    頭部周囲の筋肉(前頭筋、側頭筋、咬筋、翼突筋、胸鎖乳突筋、僧帽筋)の緊張が原因となっており、ストレスやうつ、不安、姿勢の異常などの環境要因や遺伝要因も関係すると考えられています。
  • 群発頭痛
    何らかの原因により血管が拡張し、血流が滞ったり副交感神経が活性化したりすることなどで発症すると考えられていますが、明確な原因は明らかになっていません。

二次性頭痛

頭痛が起こりうる他の疾患の診断がされている場合、二次性頭痛の可能性が高くなります。頭部外傷・傷害、むち打ちによる血管障害、脳腫瘍や脳卒中、髄膜炎や脳炎、感染症、頭蓋骨や顎、眼、耳、鼻、歯、口の障害など、二次性頭痛の原因となる疾患は多岐にわたります。

また片頭痛や緊張型頭痛などによる痛みの緩和を目的に鎮痛薬を過剰に使用することで、薬物乱用頭痛(薬剤の使用過多による頭痛)が起こる場合があります。鎮痛薬の種類によっても異なりますが、月に10~15日以上の服薬を3か月以上続けることで、慢性的な頭痛(月に15日以上の頭痛)があらわれやすくなります。

頭痛の前兆や初期症状について

頭痛の前兆や初期症状は、頭痛の種類によって異なります。

一次性頭痛

  • 片頭痛
    片頭痛には、前兆のある片頭痛と前兆のない片頭痛があります。前兆のある片頭痛で見られる症状は90%以上が視覚症状で、閃輝暗点(せんきあんてん:キラキラした光、ギザギザの光があらわれ見えづらくなる)があらわれます。その次に多いのが感覚症状で、チクチク感や感覚が鈍くなることがあります。そのほか、言葉が出にくくなる言語症状が稀にみられることがあります。これらの前兆は、片頭痛が起こる60分前〜直前に生じます。
  • 緊張型頭痛
    緊張型頭痛は一次性頭痛で最も多く、発症頻度により反復性(月に15日未満)と慢性(3ヶ月を超えて平均して1ヶ月に15日以上)に分かれます。いずれも、一般的に頭の両側に圧迫感または締め付け感の症状があり、30分〜7日間持続します。強さは軽〜中等度で、歩行や階段の昇降などの日常動作によって症状が悪化することがないのが特徴です。
  • 群発頭痛
    群発頭痛は眼の周囲〜前頭部、側頭部にかけて、目がえぐられるような激しい痛みが15〜180分間持続するのが特徴です。数週間から数ヶ月にわたり1日に何度も頭痛発作が起こり、日常生活に支障をきたします。目の充血や涙が流れる、鼻づまりや鼻汁、顔面の発汗、縮瞳や瞼が下がるなどの症状を伴うこともあります。

二次性頭痛

原因となっている疾患の症状のひとつとして頭痛が生じます。症状から片頭痛や緊張型頭痛、群発頭痛のように思われても、何らかの疾患が原因となっている可能性があります。今までに感じたことのないほど激しい痛みのある突然の頭痛や発熱を伴う頭痛、手足のしびれや感覚の異常などの症状がある場合は、生命にかかわる頭痛の可能性もあるため、早急に病院を受診するようにしてください。

頭痛の検査・診断

頭痛の診断では、まず危険な頭痛である二次性頭痛かどうかを見分けることからはじまります。

問診により、頭痛を引き起こしうる他の疾患の診断がなされているか病歴などを聴取します。二次性頭痛のスクリーニングには「SNNOOP10リスト」が用いられることが一般的です。
(出典:日本神経学会・日本頭痛学会・日本神経治療学会「頭痛診療ガイドライン2021」

二次性頭痛が疑われる場合、頭部CT検査や頭部MRI検査による画像診断を行います。さらに発熱など頭痛に伴うほかの症状がある場合、必要に応じて血液検査や心電図、脳波検査などを実施することがあります。

一次性頭痛は、二次性頭痛の可能性を除外したうえで、頭痛の頻度や痛む場所、日常生活への支障度、頭痛の特徴などにより診断されます。

急頭痛の治療

一次性頭痛

  • 片頭痛

    急性期治療と予防療法の2種類があります。急性期治療は頭痛の発作をなるべく早く鎮めるための治療で、薬物療法が中心となります。軽〜中等度の頭痛にはNSAIDs(イブプロフェン、ロキソプロフェンなど)、アセトアミノフェンなどの鎮痛薬を使用します。中等〜重度の頭痛、または軽〜中等度の頭痛でもNSAIDsの効果がなかった場合には、トリプタン製剤などを使用することが推奨されています

    予防療法は、頭痛の発生頻度を減少させ、頭痛が生じた場合でも軽く済むようにしたり、急性期治療薬が効きやすくなるようにしたりすることを目的とした治療です。主な片頭痛予防薬としてはβ遮断薬、抗てんかん薬、抗うつ薬などがあります。

    これらに加えて、近年ではCGRP関連製剤やレイボーといった新薬の開発が進み、片頭痛治療における選択肢の幅が広がりました。

  • 緊張型頭痛

    頻度が少なく、市販薬で痛みが改善するような緊張型頭痛は特別な治療は必要ないと考えられていますが、日常生活に支障をきたす場合や、発生頻度や重症度が増している場合には治療が必要です。治療には、急性期治療と予防治療の2種類があります。

    急性期治療ではアセトアミノフェン、NSAIDs(イブプロフェン、ロキソプロフェンなどなどの鎮痛薬を使用します。しかし、鎮痛薬の使用頻度が高いと薬物乱用による頭痛を生じる可能性が高くなるため、鎮痛薬の使用頻度には注意が必要です。

    予防治療には抗うつ薬が有効であるとされています。薬物を用いない治療法としては、ストレスマネジメント、リラクセーション、理学療法などが推奨されています。

  • 群発頭痛

    群発頭痛の治療は、急性期治療と予防治療を組み合わせることが重要です。群発頭痛には通常の鎮痛薬は効果がありません。急性期治療にはスマトリプタン皮下注射と酸素吸入が効果的だと考えられています。予防治療にはベラパミルが国際的な標準薬として使用されています。

二次性頭痛

二次性頭痛の場合は、対症療法として鎮痛薬などの薬物治療が使用されますが、頭痛の原因となっている疾患の治療が優先されます。

また薬物乱用頭痛(薬剤の使用過多による頭痛)の場合では、薬剤の乱用を中止することが有効な治療法となりますが、場合によっては離脱症状によりさらに強い頭痛が起こることがあります。専門医の指導のもと、適切に薬剤を使用することが重要です。

頭痛になりやすい人・予防の方法

片頭痛、緊張型頭痛のいずれも男性より女性のほうが発症率が高くなっています。ストレスや不安などの心理社会的要因やうつなどの精神疾患と関連性が高いと考えられており、ストレスの高い環境で生活している人、睡眠不足や不規則な食生活など生活習慣が乱れている人は頭痛になりやすい可能性があります。また、片頭痛には遺伝要因もあるため、家族に片頭痛の病歴がある場合、片頭痛を発症する可能性が高くなります。

片頭痛や緊張型頭痛の予防には、マッサージやストレッチなどで後頚筋や側頭筋、僧帽筋など首から肩にかけての筋肉の緊張をほぐすことが有効だと考えられています。ストレスや不規則な生活習慣も頭痛の原因となるため、規則正しい睡眠や食事を心がけるようにしましょう。

群発頭痛は女性よりも男性に多く、20〜40歳での発症が多くなっています。また、アルコールや喫煙習慣との関連も指摘されているため、飲酒や喫煙は控えるようにしましょう。群発頭痛の明確な予防法は少ないとされていますが、予防療法を行っている方は、医師の指示のもと適切に予防薬を使用してください。


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