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ジストニア
勝木 将人

監修医師
勝木 将人(医師)

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2016年東北大学卒業 / 現在は諏訪日赤に脳外科医、頭痛外来で勤務。 / 専門は頭痛、データサイエンス、AI.

ジストニアの概要

ジストニアは、持続性の筋収縮を呈する症候群であり、しばしば捻転性または反復性の運動や異常な姿勢をきたし、随意運動が障害されます。
ジストニアの主な特徴は、持続性または間欠的な筋収縮、異常な姿勢や運動パターン、動作特異性(特定の動作で症状が誘発される)、感覚トリック(特定の感覚刺激で症状が軽減する)、オーバーフロー現象(ある動作の際に、本来不要な筋が不随意に収縮する)、早朝効果(しばしば起床時に症状が軽い)などです。

原因については完全には解明されていませんが、大脳基底核、視床、小脳、大脳皮質などの中枢神経系の機能異常が関与していると考えられています。ジストニアは、罹患部位によって局所性・分節性・多巣性・片惻性・全身性に分類されます。
一般に発症年齢が低いほど広汎に罹患する傾向があります。遺伝性ジストニアも存在し、20以上の責任遺伝子が同定されています。これらは「DYTシリーズ」と呼ばれ、常染色体顕性遺伝や潜性遺伝、X連鎖性潜性遺伝などの様々な遺伝形式をとります。根治治療は確立されていません。

対症療法として、抗コリン薬や筋てんかん薬などの薬物療法、ボツリヌス毒素の局所注射療法、重症例では定位的凝固術などの外科療法が行われます。早期発見と適切な治療により、症状の進行を遅らせたり、生活の質を改善させ得る可能性があります。

ジストニアの原因

完全には解明されていませんが、以下のような要因が関与していると考えられています。

  • 遺伝的要因
    20以上の責任遺伝子が同定されており、これらは「DYTシリーズ」と呼ばれています。遺伝形式は常染色体顕性、潜性、X連鎖性潜性など様々です。
  • 神経系の機能異常
    大脳基底核、視床、小脳、大脳皮質などの中枢神経系の機能異常が関与していると考えられています。
  • 環境要因
    特定の職業や反復動作が局所性ジストニアの発症に関連している可能性があります。例えば、書痙や音楽家のジストニアなどが挙げられます。
  • 脳の損傷
    脳卒中や外傷などによる脳の特定部位の損傷がジストニアを引き起こす可能性があります。
  • 薬物誘発性
    長期的な抗精神病薬の使用が遅発性ジストニアを引き起こすことがあります。
  • ほかの神経疾患
    パーキンソン病や脳性麻痺などの神経疾患に伴って二次的にジストニアが発症することもあります。

ジストニアは複雑な病態であり、これらの要因が単独または複合的に作用して発症すると考えられています。個々の患者さんで原因が異なる可能性があるため、専門医による詳細な評価が重要です。

ジストニアの前兆や初期症状について

通常軽微で徐々に進行します。主な初期症状は、手足やまぶたの軽い痙攣や異常な動き、頭部や首の回転、姿勢の歪み、特定の動作(字を書く、楽器を演奏するなど)の際の困難さ、声の出しにくさなどです。これらの症状は、患者さんの意思とは無関係に発生し、特定の動作をする際に悪化したり、繰り返し発生したりする傾向があります。さらに日常生活に支障をきたすこともあります。注意すべき点として、症状は朝方に比較的軽く、午後から悪化する「早朝効果」があります。また、精神的な緊張により症状が増悪することもあります。ジストニアの初期症状はほかの神経疾患と似ていることがあるため、正確な診断には専門医による詳細な評価が重要です。

ジストニアの病院探し

小児科や神経内科(脳神経内科)の診療科がある病院やクリニックを受診して頂きます。

ジストニアの経過

遺伝性ジストニアの多くは小児期から青年期に症状が現れ始めます。局所性ジストニアは通常20〜30代で始まり、最初は特定の活動に関連して収縮が起こります。時間とともに、筋痙攣の頻度が徐々に高まり、安静時にも続くようになります。
小児の場合、症状の拡大は一側の上肢や下肢から始まり、進行性に身体のほかの部位に広がっていきます。最終的に体軸の捻転を伴う全身性ジストニアに進展することがあります。

日内変動を認め、「早朝効果」がしばしば見られます。進行すると、患部が捻転した状態になり、ときに痛みを伴う姿勢で固定してしまい、重度の身体障害が残ることがあります。
稀に、急激な症状の増悪(dystonic storm)により、呼吸不全や全身の消耗、横紋筋融解などを生じ、生命が脅かされることもあります。長期的には、発作回数は時間とともに減少する傾向がありますが、神経学的後遺症は永続的で進行性であり、歩行障害や運動失調などが残ることがあります。

ジストニアの検査・診断

主に臨床症状に基づいて行われます。

  • 問診
    症状の詳細、発症時期、進行状況、家族歴などを確認します。
  • 神経学的診察
    筋肉の異常な動きや姿勢、感覚トリックの有無などを評価します。
  • 画像検査
    MRIやCTスキャンを行い、脳の構造的異常やほかの神経疾患を除外します。ただし、多くの場合、画像検査では異常が見つからないことに注意が必要です。
  • 遺伝子検査
    遺伝性ジストニアが疑われる場合、DYTシリーズと呼ばれる遺伝子の検査を行うことがあります。
  • 筋電図
    筋肉の電気的活動を測定し、異常な筋収縮のパターンを確認します。
  • 薬物反応性テスト
    レボドパなどの薬物に対する反応を評価することで、特定のタイプのジストニアを診断することがあります。

ジストニアの診断は複雑で、ほかの神経疾患との鑑別が重要です。そのため、神経内科医や運動障害専門医による詳細な評価が必要となります。

ジストニアの治療

薬物療法

抗コリン薬(トリヘキシフェニジルなど)が全身性ジストニアに使用されます。ベンゾジアゼピン系薬剤(クロナゼパムなど)や筋弛緩薬(バクロフェン)も使用されます。レボドパとカルビドパの併用が、特にドパ反応性ジストニアの患者さんで効果的な場合があります。なお、厳密には、ジストニアを適応症とする内服薬は国内に存在せず適応外使用となります。

ボツリヌス毒素療法

問題のある筋肉に適切な量のボツリヌス毒素を注射し、筋緊張を緩和します。

外科的治療

  • 脳深部刺激療法
    重度の全身性ジストニアや薬物療法が効果的でない場合に考慮されます。大脳基底核に電極を埋め込み、微弱な電気刺激を与えます。
  • 高周波凝固手術
    定位的凝固術は、脳の深部に電極を挿入し熱を発生させることで、標的とする構造物を熱凝固する方法です。体内に器械の埋め込みを要さずに効果を得ることができます。適応となる疾患は脳深部刺激療法と同一ですが、手や足などの身体の片側に限局しているジストニアに対して、最もよい適応があります。
  • バクロフェン髄腔内投与療法
    全身性で難治性のジストニア患者さんに適用されます。

理学療法・作業療法

症状の軽減や日常生活動作の改善を目的として行われます。

認知行動療法

特に職業関連のジストニアに対して、症状出現の不安を軽減するために導入されています。

補助療法

装具による固定、バイオフィードバックなどの心理療法、再チューニング法などが、局所的なジストニアに対して行われることがあります。治療法の選択は、ジストニアの種類、重症度、原因などに応じて個別に検討されます。多くの場合、複数の治療法を組み合わせて最適な効果を得ることが重要です。

ジストニアになりやすい人・予防の方法

ジストニアになりやすい人には以下の特徴があります。

  • 遺伝的要因
    家族歴がある場合、特に遺伝性ジストニアのリスクが高まります。
  • 職業的要因
    音楽家、アスリート、理髪師など、特定の動作を繰り返す職業に従事する人がリスクにさらされます。
  • 薬物使用
    抗精神病薬や制吐剤の長期使用が遅発性ジストニアを引き起こすことがあります。
  • 神経疾患
    パーキンソン病や脳性麻痺などの神経疾患を持つ人もリスクが高いです。
    ジストニアの予防は難しいですが、長時間同じ動作を繰り返さないようにし、適切な休憩を取ることが重要です。また、過度なストレスを避け、リラクゼーション法を取り入れることが推奨されます。バランスの取れた食事、適度な運動、十分な睡眠を心がけることが全体的な健康維持に寄与します。また、抗精神病薬や制吐剤の使用は医師の指導の下で行い、必要に応じて定期的に見直します。これらの対策を講じることで、ジストニアの発症リスクをある程度低減できる可能性があります。

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