

監修医師:
本多 洋介(Myクリニック本多内科医院)
目次 -INDEX-
群発頭痛の概要
群発頭痛は、眼周囲から前額部、側頭部にかけての激しい頭痛が数週〜数ヶ月の期間群発することが特徴で、三叉神経の刺激が副交感神経の反射性活性化をもたらすという病態に基づいています。一次性頭痛の「三叉神経・自律神経性頭痛(Cluster headache and other trigeminal autonomic cephalalgias:TACs)」に分類されます。発作の持続時間が15〜180分(3時間)であることがTACsを含めたほかの一次性頭痛と鑑別されます。
発症年齢は通常20〜40歳台であり、男性に多く発症します。群発期に入ると深夜から未明の決まった時刻に起こることが多いようです。治療は、スマトリプタン皮下注射や100%酸素吸入を行います。また、群発頭痛は激痛発作のため、仕事の生産性が低下し、経済的損失も問題となっています。
群発頭痛の原因
群発頭痛の病態生理は、
- 視床下部のgenerator(circadian rhythmに関係したメラトニンなどの変化がある)の存在
- ニューロペプチドと一酸化窒素(NO)などの変化により、三叉神経と血管との関係から解明
- 内頸動脈の周囲に症候発生の起源を求める(海綿静脈洞やその近傍、破裂孔近傍に自律神経症状を伴う疼痛発生起源がある
- 三叉神経の活動興奮による副交感神経の活性化
以上の4つの考え方に分類されています。
誘発および増悪因子には、アルコール飲料、ヒスタミンまたはニトログリセリン(血管拡張薬)が挙げられます。また群発頭痛では大酒家、ヘビースモーカーが多いようです。
群発頭痛の患者数
有病率は10万人あたり56〜401人程度と報告されており、片頭痛に比べその患者数は少ないようです。男性における有病率は女性の3〜7倍です。
群発頭痛の前兆や初期症状について
群発頭痛は、短期持続型の発作(15〜180分)、強烈な痛み、一側性、眼窩部とその周辺、自律神経症状を伴いますが、悪心・嘔吐は少ないなどの特徴があります。発作の前に「寝つきが悪い」、「夜中に突然目覚める」、「目の奥をえぐるような激しい痛みで目が醒める」ことが多く、あまりの激しさに患者さんはじっとしていられず、「落ち着きのない、興奮した」状態となります。
群発頭痛の経過・予後
1回で終わる患者さんから繰り返す患者さんまでさまざまです。長期経過観察を行ったところ、2回目の群発発作は3年以内に83%で見られるという報告があります。また、10年以上経過観察したところ、反復性群発頭痛と当初診断された症例の13%が慢性群発頭痛へと移行し、慢性群発頭痛と当初診断された症例の33%が反復性群発頭痛へと移行した報告があります。
群発期の長さは、数週間から半年を超える患者さんもいます。1年以上続くものは慢性群発頭痛と言われます。
群発頭痛の前兆や初期症状が見られた場合に受診すべき診療科は、脳神経内科や脳神経外科の診療科、頭痛の外来がある病院やクリニックです。群発頭痛は強烈な頭痛発作を特徴とし、神経内科で診断と治療が行われています。
群発頭痛の検査・診断
頭痛の診断には、頭痛分類と診断基準の知識が必要です。現在の頭痛分類は、2018年に国際頭痛学会(HIS)から提案された国際頭痛分類第3版(ICHD-3)が新しい版(日本語版もあり)です。これに基づいて、問診、神経所見、画像所見、採血検査などを行います。一次性頭痛か二次性頭痛かを見分けることが大切です。群発頭痛は一次性頭痛に分類されます。
ICHD-3 診断基準
群発頭痛
A. B〜Dを満たす発作が5回以上ある
B. (未治療の場合に)重度〜きわめて重度の一側の痛みが眼窩部、眼窩上部または側頭部のいずれか1つ以上の部位に15〜180分間持続する
C. 以下の1項目以上を認める
① 頭痛と同側に少なくとも以下の症状あるいは徴候の1項目を伴う
a) 結膜充血または涙流
b) 鼻閉または鼻漏(あるいはその両方)
c) 眼瞼浮腫
d) 前額部および顔面の発汗
e) 縮瞳または眼瞼下垂(あるいはその両方)
②落ち着きのない、あるいは興奮した様子
D. 発作の程度は1回/2日〜8回/日である
E. ほかに最適なICHD-3の診断がない
問診では、頭痛の頻度(2日に1回から1日1〜8回の幅あり)、持続時間(15〜180分)、群発期の有無、特徴(一側性、重度〜きわめて重度)、随伴症状(結膜充血または涙流、鼻閉または鼻漏、眼瞼浮腫、前額部および面の発汗)などを丁寧に聞き取ります。見逃しを防止するには、「どこが痛いですか、手で指してください」という質問が大切です。片方の眼窩部を示す場合は群発頭痛を疑います。
神経学的診察では、項部硬直の有無、麻痺や感覚障害など身体的な異常の有無を確認します。
画像検査では、ほかの原因がありその症状として起こる頭痛(二次性頭痛)を否定するために頭部CTやMRI・MRA検査、頸動・静脈エコーなどを行います。
生化学検査では、採血を行い、頭痛をきたす全身性疾患の鑑別を行います。
群発頭痛の分類
国際頭痛分類第3版(ICHD-3)では群発頭痛は一次性頭痛の「三叉神経・自律神経性頭痛(TACs)」に分類されています。TACsに分類される疾患は、短時間、片側性の頭痛発作と結膜充血、流涙、鼻漏などの頭部副交感神経系の自律神経症状を伴うことが特徴です。5つのタイプに分類されています。グループ(1桁)とタイプ(2桁)は国際頭痛分類第3版(ICHD-3)を参照下さい。ただし、専門診療、頭痛センターなどの診療では、サブタイプ(3桁)レベルまでの診断が勧められます。ICHD-3の頭痛分類は暗記することを意図していないので、必要に応じて調べてください。
3.1 群発頭痛
3.1.1 反復性群発頭痛
3.1.2 慢性群発頭痛
鑑別診断
確定診断にあたっては、副鼻腔疾患、下垂体疾患などによる二次性頭痛との鑑別が必要です。特に、二次性頭痛には生命予後に影響を及ぼす疾患が多くあります。見逃してはいけない疾患として、くも膜下出血、脳出血、髄膜炎・脳炎、脳腫瘍、高血圧性脳症、内頸動脈・椎骨動脈解離、緑内障や側頭動脈炎などがあります。
頭痛をきたす全身性疾患には、膠原病、高カルシウム血症、褐色細胞腫、甲状腺疾患、肝疾患、腎不全、貧血、低血糖、低酸素・高二酸化炭素血症などがあり、これらの鑑別を行います。
群発頭痛の治療
群発頭痛は毎日のように起こる激しい頭痛なので予防療法が最優先です。特に、慢性群発頭痛は長時間に及び激しい頭痛発作を繰り返すため、疾患そのものによる支障度だけでなく、社会的支障度も極めて高く、予防療法は必須です。生活上の注意点として、「禁酒」を行うことが重要です。さらに、群発頭痛は重症のため通常OTC医薬品での治療では改善しないので、医療機関での治療が勧められます。
また、夜間に発作が多いため、発作中に医療機関を受診することが困難であり、また頭痛持続時間が短い(15〜180分)ことから、即時性にすぐれ、発作時に直ちに対処できるスマトリプタン在宅自己注射が有効な治療手段となっています。処方にあたっての留意点は、患者さん自身が片頭痛あるいは群発頭痛の判断ができることが重要です。
1. 急性期療法
推奨度A(行うように強く勧められる)
スマトリプタン皮下注射、100%酸素吸入(マスクで純酸素7〜10L/分、15分間)
推奨度B(行うように勧められる)
スマトリプタン点鼻液、ゾルミトリプタン経口投与
推奨度C(行うように勧めるだけの根拠が明確ではない)
ソマトスタチン、リドカイン、コカイン、ジヒデルエルゴタミン鼻腔内投与、鎮痛薬
2. 予防療法
- 反復性群発頭痛
- 慢性群発頭痛
推奨度B:ベラパミル塩酸塩、副腎皮質ステロイド
推奨度C:ロメリジン、エルゴタミン、シバマイド、トリプタン、メラトニン
推奨度C:炭酸リチウム、バルプロ酸ナトリウム、ガバペンチン、トピラマート、divalproex sodium、バクロフェン、神経ブロック
*civamide(シバマイド)点鼻薬(カプサイシンと類似の構造を持つ)は反復性群発頭痛の予防療法として有効と海外で報告されていますが、本邦で臨床試験は未実施です
**抗CGRP抗体薬(ガルカネズマブ)は海外では予防薬として使われていますが、日本では保険適用外です
3. 非薬物療法
- 行動療法:リラクゼーション法など
- 理学療法:運動、鍼
- ニューロモデュレーション:非侵襲的迷走神経刺激装置
これらの療法には健康保険の適応外のものや副作用の報告もあるので、使用にあたっては個人の特性を考慮に入れ、副作用について十分に説明することが重要です。
*ニューロモデュレーションとはデバイスを用いて神経機能を可逆的に調節する治療で、日本では保険適用がありません
群発頭痛になりやすい人・予防の方法
群発頭痛のなかに家族内発症例があり、遺伝要因が関与する可能性があります。患者さんの1親等に群発頭痛を有する確率は、一般より5〜18倍高く、2親等の場合には1〜3倍高くなることが示されています。しかし、原因遺伝子や疾患感受性遺伝子の同定まではまだ至っていません。
予防は、日頃から規則正しい生活を送ることです。発作期間は必ず禁酒してください。




