五藤 良将

監修医師
五藤 良将(医師)

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防衛医科大学校医学部卒業。その後、自衛隊中央病院、防衛医科大学校病院、千葉中央メディカルセンターなどに勤務。2019年より「竹内内科小児科医院」の院長。専門領域は呼吸器外科、呼吸器内科。日本美容内科学会評議員、日本抗加齢医学会専門医、日本内科学会認定医、日本旅行医学会認定医。

慢性腹膜炎の概要

慢性腹膜炎は、腹膜に長期間にわたって炎症が持続する疾患です。
腹膜炎とは、腹腔内(横隔膜の下から骨盤までの空間)の細菌感染などによって、腹膜(腹腔内にある臓器を覆っている膜)に炎症が生じる状態を指します。
腹膜炎には大きくわけて急性と慢性の2種類があり、慢性腹膜炎はより緩やかに進行する特徴があります。

慢性腹膜炎の主な原因には、がん、結核、手術後の合併症、腹膜透析などが挙げられます。
症状としては、数ヶ月にわたって微熱が続いたり、我慢できる程度の腹痛が持続的に現れたりします。
また、腹水の貯留や全身の倦怠感、食欲不振なども特徴的な症状です。
急性腹膜炎のような激しい腹痛はありませんが、これらの症状が長期間持続します。

診断は主に血液検査や画像診断によっておこなわれます。
CT検査や超音波検査などの画像診断により、腹水の有無や腹腔内の異常所見を確認します。
腹水検査をおこない、腹水の性状を調べることもあります。

治療は主に薬物療法が中心となり、原因疾患に応じて抗生物質や抗結核薬などが使用されます。
腹水が多量に貯留している場合は、管を用いて腹水を排出させることもあります。
慢性腹膜炎の管理には、原因疾患の治療と並行して、症状のコントロールや合併症の予防が重要です。

慢性腹膜炎の原因

慢性腹膜炎は、がん、結核、肝硬変、真菌の感染、アスベストの曝露、特定の薬剤の使用、手術後の合併症、腹膜透析などが関連して発症します。
これらが原因で、腹膜に慢性的な炎症が起こることにより発症します。

がんによる慢性腹膜炎は胃がんや大腸がん、卵巣がんが進行し、腹膜に転移することで発症します。
結核では、肺結核や結核性胸膜炎から血液やリンパ管を介して腹膜に結核菌が感染することで慢性腹膜炎につながることがあります。
手術による慢性腹膜炎は、開腹手術によって腸管が癒着することが原因で、腹膜に炎症が生じて発症します。
腹膜透析では汚染されたカテーテルを挿入することで、腹腔内に細菌感染が広がって慢性腹膜炎が生じる可能性があります。

慢性腹膜炎の前兆や初期症状について

慢性腹膜炎の初期症状は、数ヶ月にわたって持続する微熱や、軽度から中等度の腹痛が主な特徴です。
多くの場合、腹水の貯留も見られ、腹部膨満感が生じることがあります。
全身症状として、倦怠感や食欲不振なども現れます。
初期段階では無症状の場合もあり、症状が緩やかに進行するため気づきにくいこともあります。

慢性腹膜炎の症状は、急性腹膜炎のような激しい腹痛ではなく、より穏やかで持続的な不快感として現れることが多いです。
しかし、症状を放置すると徐々に悪化し、最終的には全身に細菌が広がって多臓器不全や敗血症を引き起こす可能性があります。
この状態におちいると生命の危険にさらされるため、できるだけ早く発見し適切な治療を受けることが重要です。

慢性腹膜炎の検査・診断

慢性腹膜炎の診断は、問診や血液検査、画像診断、腹水検査などを組み合わせておこなわれます。
問診では腹痛の性質や持続時間、ほかの症状などを詳細に聴取し、症状の経過や特徴を把握します。
血液検査では、炎症の指標となる白血球数やCRP値の上昇、腎機能や肝機能の状態を確認します。
画像診断では、CT検査や超音波検査が主に用いられ、腹水の有無、腹腔内の炎症所見、原因疾患の特定などをおこないます。

腹水が認められる場合は、腹腔穿刺による腹水検査がおこなわれます。
採取した腹水の性質や細菌の状態を確かめることにより、炎症の程度や原因菌の同定が可能になります。
慢性腹膜炎の場合、腹水中に白血球の増加や原因疾患に関連する細菌が検出されることがあります。
これらの検査結果を総合的に判断し、慢性腹膜炎の診断が確定されます。

慢性腹膜炎の治療

慢性腹膜炎の治療は主に薬物療法を中心におこなわれます。
薬物療法では、原因となる菌に対して効果的な抗生物質を投与し、細菌の感染を抑えます。
また、原因疾患に応じた治療も並行しておこなわれ、結核性腹膜炎の場合は抗結核薬が使用されます。

腹水が過度に貯留している場合は、管を挿入して排液することがあります。
これにより、腹水による腹部膨満感や呼吸困難などの症状を軽減できます。

腹膜透析に関連した慢性腹膜炎の場合は、カテーテルの一時的な使用中止や交換、透析方法の変更などが検討されます。

手術後の癒着が原因で発症し、保存的治療で改善が見込めない場合は、癒着剥離術を行うこともあります。

慢性腹膜炎になりやすい人・予防の方法

慢性腹膜炎は、特定の条件下にある人が発症しやすい傾向にあります。
消化器系や婦人科系のがん、結核に罹患(りかん:病気にかかること)している人が主なリスク群です。
消化器系の開腹手術を受けた人や腹膜透析をおこなっている人も、慢性腹膜炎のリスクが高くなります。

予防法としては、原因となる疾患の適切な管理が必要になります。
がんや結核がある場合は、十分な検診や治療を受けて腹膜炎の合併を防ぐことが重要です。
腹膜透析をおこなっている場合は、カテーテルの取り扱い時に手洗いを徹底し、感染リスクをできるだけ抑えます。

また、慢性腹膜炎は早期発見・早期治療が重要であるため、発熱や食欲不振、全身の倦怠感などの症状が続く場合は、速やかに医療機関を受診することが大切です。
定期的な健康診断や検査を受けることも、慢性腹膜炎の予防と早期発見に役立ちます。


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