

監修医師:
大坂 貴史(医師)
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京都府立医科大学卒業。京都府立医科大学大学院医学研究科修了。現在は綾部市立病院 内分泌・糖尿病内科部長、京都府立医科大学大学院医学研究科 内分泌・糖尿病・代謝内科学講座 客員講師を務める。医学博士。日本内科学会総合内科専門医、日本糖尿病学会糖尿病専門医。
目次 -INDEX-
サルモネラ感染症の概要
サルモネラ感染症は、サルモネラ菌という細菌が原因で発生する食中毒の一種です。特に、十分に加熱されていない食肉や卵を摂取することで感染しやすく、学校や福祉施設、病院などで集団感染が起こることもあります。 主な症状は腹痛や下痢、発熱などで、通常は数日で回復しますが、小さな子どもや高齢者は重症化することがあるため注意が必要です。治療には抗菌薬が使われますが、軽症の場合は十分な水分補給と腹痛を和らげることが主な治療となります。また、予防のためには食肉や卵を保存する際に低温保存にすることや、十分に加熱してから食べることが重要です。(参考文献1)サルモネラ感染症の原因
サルモネラ感染症はサルモネラ菌が原因となります。サルモネラ属菌は2000種類以上に分類されており、腸チフスの原因となるチフス菌やパラチフス菌なども含まれます。ここではヒトの胃腸炎の原因となるサルモネラ属菌について説明します。 サルモネラ菌は自然界のさまざまな場所に存在する細菌で、ペット、鳥類、爬虫類、両生類などに生息していることが多いです。そのため、特に以下のような食品に含まれていることが多いです。 感染しやすい食品 ・生または加熱が不十分な肉(特に鶏肉・豚肉・牛肉)・生卵または半熟卵
・未殺菌の乳製品
・汚染された水
サルモネラ菌は動物の腸内にいることが多く、糞を通じて食品に広がることがあります。たとえば、感染した鶏が産んだ卵の殻にはサルモネラ菌が付着していることがあります。 そして、サルモネラ菌の感染経路としては以下のような経路が考えられます。
・汚染された食べ物を摂取する
・汚染されたまな板や包丁を使用する
・サルモネラ菌を持つペット(カメやトカゲなど)に触れた後、手を洗わない
特に、生の肉を触った手でそのまま他の食品を調理すると、サルモネラ菌が広がってしまうため、十分な注意が必要です。(参考文献1, 2)
サルモネラ感染症の前兆や初期症状について
サルモネラ感染症は通常8〜48時間の潜伏期間を経て発症します。ただ、一部の菌では3〜4日後に症状が出ることもあります。 主な症状としては以下が挙げられます。 ・腹痛・下痢(1日数回〜10回以上)
・嘔吐
・発熱(38度以上になることもある)
・悪寒(さむけ)
通常、症状は3〜4日で治まりますが、1週間以上続くこともあります。特に、小さな子どもや高齢者は脱水症状になりやすく、重症化してけいれんや意識障害を起こす可能性もあるため、注意が必要です。(参考文献1)
サルモネラ感染症の検査・診断
38 ℃以上の発熱、1日10回以上の水っぽい下痢、血便、腹痛がみられる場合、まずサルモネラ感染症が疑われます。 検査としては炎症の程度などを見るための血液検査と、確定診断のための培養検査が行われます。 血液検査では白血球数やCRPなどの検査値が炎症の程度に応じて上昇します。そして、便や血液などから菌が検出されると確定診断となります。 サルモネラ菌を特定するための迅速検査はなく、確定診断には時間がかかることがあります。(参考文献1)サルモネラ感染症の治療
サルモネラ感染症は、多くの場合、自然に回復するため、特別な治療を行わないことが一般的です。 下痢止め(止瀉薬)は、菌を体外に排出する妨げになるため、基本的には使用しません。また、解熱剤も抗菌薬との併用が禁止されているものがあり、また脱水を悪化させる可能性もあるため、できるだけ使用しないことが望ましいです。そして、抗菌薬は重症の場合のみ使用されます。これは、抗菌薬の使用により症状が消えたとしてもサルモネラ菌が他の人に感染する可能性が残ることや薬剤耐性菌を発生させてしまう危険性があるためです。 したがって、サルモネラ菌による胃腸炎の治療としては脱水に対する水分補給が基本となります。(参考文献1)サルモネラ感染症になりやすい人・予防の方法
サルモネラ感染症、中でもサルモネラ菌による食中毒は、日本国内でもカンピロバクター菌と並ぶ代表的な食中毒の一つです。特に、学校や病院、福祉施設などで集団感染が起こりやすいとされています。 予防方法としては、 以下のように食品の取り扱いに気をつけたりペットと接触した後の衛生管理が重要となります。- 1. 肉や卵を十分に加熱する 肉は75℃以上、卵はしっかり固まるまで加熱することで、サルモネラ菌を死滅させることができます。
- 2. 調理器具の消毒を徹底する 生肉を切った包丁やまな板は、しっかり洗い、熱湯や消毒液で除菌することが重要です。 また、調理中に生肉を触った後は、必ず手を洗うようにしましょう。
- 3. 食品の適切な保存 食肉や卵は冷蔵庫(10℃以下)で保存し、なるべく早く食べるようにしましょう。
- 4. ペットとの接触後の手洗い カメやトカゲなどの爬虫類はサルモネラ菌を持っていることがあるため、触れた後は手をしっかり洗うことが大切です。 (参考文献1,2)
参考文献




