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細菌性赤痢
大坂 貴史

監修医師
大坂 貴史(医師)

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京都府立医科大学卒業。京都府立医科大学大学院医学研究科修了。現在は綾部市立病院 内分泌・糖尿病内科部長、京都府立医科大学大学院医学研究科 内分泌・糖尿病・代謝内科学講座 客員講師を務める。医学博士。日本内科学会総合内科専門医、日本糖尿病学会糖尿病専門医。

細菌性赤痢の概要

細菌性赤痢は 赤痢菌による細菌感染症で、主に汚染された水や食品を介して経口感染します。感染者の便を介した二次感染も多く、日本では海外からの持ち込み例が大半を占めます 発症までの潜伏期間は1〜3日で、発熱、腹痛、下痢が初期症状です。 通常は自然軽快しますが、重症化すると腎障害や高度な脱水症状を引き起こすこともあるため、注意が必要です。 診断では発熱や便の性状、海外渡航歴などの情報が重要で、便の写真を医師に見せるのも診断の助けになります。便中の赤痢菌検出をもって確定診断とします。 治療の基本は対症療法と抗菌薬治療です。感染力の強い感染症なので、患者以外の保菌者も抗菌薬治療の対象となる場合があります 細菌性赤痢は世界中どこでも見られる感染症ですが、衛生状態の悪い地域では特に感染リスクが高いです。現地における衛生管理の徹底が最も重要 です。生水の摂取を避け、煮沸した水や市販のボトル水を利用し、生野菜や加熱不十分な食品を避けてください。特に手洗いの励行は感染防止に重要です。

細菌性赤痢の原因

細菌性赤痢は、赤痢菌 (Shigella属) によって引き起こされる細菌感染症です。赤痢菌には4つの菌群があり、それぞれ異なる特徴を持っています (参考文献 1, 2) 。 感染は経口感染によって広がります。赤痢菌に汚染された飲食物を介して体に侵入します。赤痢菌は非常に感染力が強い病原体で、少ない菌量でも感染が成立します。皿や箸についた微量の赤痢菌でも感染が広がることが知られているほか、国内でも集団食中毒や施設での集団感染が報告されています (参考文献 1, 2, 4) 。

細菌性赤痢の前兆や初期症状について

細菌性赤痢は通常1〜3日の潜伏期間の後に発症し、次のような症状が現れます (参考文献 1-3) 。 初期症状として典型的なのは、発熱、腹痛、下痢です。便に血が混じる血便や、便意があっても便がでない「しぶり腹」という症状を伴うこともあります 。 基本的には自然軽快する疾患ですが、稀に急激な腎障害を伴なったり、高度な脱水状態に陥ることにより重症化する場合があります (参考文献 2) 。 後述するような感染リスクの高い方で、細菌性赤痢を疑う症状がある場合には、 お近くの総合病院の内科を受診してください。診断には問診による情報収拾が重要ですので、自分に当てはまる感染リスク因子も忘れずに担当の医師へ伝えてください。

細菌性赤痢の検査・診断

細菌性赤痢の診断には、患者の症状、渡航歴、流行状況の確認とともに、病原体を特定するための検査が必要 です。 まずは問診による症状の評価が重要です。いつから発熱をしているのか、便の性状などを聴取していきます。便の写真があると分かりやすいので、スマホで写真を撮って医師に見せると便利です。直近の海外渡航歴は細菌性赤痢を考えるきっかけになる重要な情報ですので、忘れずに伝えてさい。 診断の決め手となるのは糞便からの赤痢菌の検出です。便を培養し、培養やPCR検査で赤痢菌の存在を確認します (参考文献 3) 。

細菌性赤痢の治療

細菌性赤痢の治療では、対症療法抗菌薬療法を組み合わせます。 軽症例では自然治癒も期待できます。整腸剤の投与やスポーツ飲料の摂取、口からの水分摂取が困難な場合には点滴での水分補給が代表的な対症療法になります (参考文献 3) 。 細菌性赤痢は少数の菌量でも感染が成立することが知られています。目に見えないような大きさの赤痢菌が10-100個体に侵入するだけで感染し、家庭内での二次感染は40%のケースでみられるとされています (参考文献 3) 。 発症している患者本人はもちろんですが、無症状の保菌者に対しても抗菌薬投与が行われることがあります (参考文献 4) 。一般的には、ニューキノロン系の抗菌薬が第一選択ですが、耐性がある場合にはマクロライド系が用いられます (参考文献 4) 。抗菌薬の投与期間は重症度にもよりますが、一般的には3-5日、免疫機能の低下した患者は7-10日の抗菌薬治療が推奨されています (参考文献 4) 。 下痢止めを使いたくなるかもしれませんが、赤痢菌や毒素の排出が遅れて回復には逆効果です。下痢止めは使わないでください。

細菌性赤痢になりやすい人・予防の方法

日本における細菌性赤痢は、国外で感染した患者が多くを占めています。細菌性赤痢は世界中で見られる感染症ですが、特に衛生状態の悪い地域では感染リスクが高く、直近で発展途上地域に渡航した方、渡航中の方の発症リスクが高いと言えます。 細菌性赤痢は適切な衛生管理によって予防できます。食事面では生水の摂取を避け、飲料水は煮沸したものや市販のボトル水を利用することが重要です。また、生野菜や加熱が不十分な食品を避け、衛生状態の悪い場所での食事を控えることも大切です。手洗いは感染予防の基本であり、食事の前やトイレの後には石鹸と流水でしっかり手を洗うようにしましょう。特に集団感染のリスクが高い環境では、感染者との接触を避けることも重要です。

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