

監修医師:
山本 佳奈(ナビタスクリニック)
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滋賀医科大学医学部 卒業 / 南相馬市立総合病院や常磐病院(福島)を経て、ナビタスクリニック所属/ 専門は一般内科
目次 -INDEX-
胃下垂の概要
胃下垂は一般的にいう病気ではなく、胃の形態や機能の異常の呼び名です。具体的には、胃の位置が通常よりも低い位置にある場合に、胃下垂と呼びます。胃が骨盤の位置まで下がることもあります。 胃下垂自体は病気ではありませんので、その多くは無症状です。 しかし、胃の中に食べ物が停滞することで、胃もたれや腹痛などを感じる患者さんもいらっしゃいます。胃下垂の原因
胃下垂は病気ではないため、詳しい原因を突き止めることはできていません。しかし胃下垂の方を対象にした調査によって、るい痩者(るいそうしゃ)に胃下垂の方が多いことがわかっています。 るい痩者とは以下のいずれかの基準を満たす方です。- 標準体重を20%以上下回っている
- 6カ月以内に体重が10%以上減っている
胃下垂の前兆や初期症状について
胃下垂の前兆
胃下垂は病気ではありません。またそのほとんどが無症状ですので、前兆を感じることは難しいといえます。胃下垂の初期症状
胃下垂は多くの場合無症状です。しかし胃下垂によって、胃壁の筋肉の緊張が低くなることでさまざまな消化器障害が生じることがあります。こういった、胃の運動機能が低下する消化器系の障害を、胃アトニーと呼び、胃下垂と併発することがあります。 胃アトニーは、胃無力症とも呼ばれます。体内の食べ物は食道や胃、腸などを移動します。その移動を促すための収縮運動を蠕動運動と言います。胃アトニーでは、筋力の低下やストレスなどによって胃における蠕動運動の機能が低下し、食べたものが十二指腸に送られずに消化不良を引き起こします。また、食べ物を消化をするために胃酸を過剰に分泌して胃炎を起こすことがあります。胃アトニーの主な症状は以下の通りです。 腹痛 消化できずに胃の中に残存した食べ物が胃痛や腹痛の原因となります。 また、過剰に分泌された胃酸によって引き起こされる胃炎が原因となることもあります。 食欲の不振 胃に残った残存食物や胃炎などによって食欲がわかなくなります。 腹部膨満感 過剰な胃酸の分泌による胃炎に伴って胃もたれ、吐き気、ゲップなどの症状も現れることがあります。 自律神経失調症 頭痛やめまい、倦怠感など、自律神経失調症の症状が引き起こされることもあります。 こういった症状がみられる場合は、内科や胃腸内科、消化器内科の受診を検討しましょう。胃下垂の検査・診断
胃下垂を疑う場合、主に腹部におけるX線検査を実施します。X線検査の際は、造影剤を飲むことで、胃の形状を確認します。その結果、胃が低い場所に位置していれば、胃下垂と診断されます。また、胃角部(胃が折れ曲がった角の部分)が、腸骨の左右をつないだ線よりも低下している場合に、胃下垂と診断されることもあります。 ただし、胃下垂の症状として表れる腹痛や食欲不振などの症状は、ほかの病気でもみられる症状であるため、胃内視鏡検査を行うこともあります。胃内視鏡検査を行うことで、胃潰瘍や胃癌などの合併症や、同様の症状を引き起こす病気の可能性を除外することが可能です。胃下垂の治療
胃下垂は病気ではないので、何らかの症状がでていない場合には、治療の必要はありません。 しかし、胃アトニーの症状がみられる場合には、生活習慣の改善、薬物療法を中心とした治療が行われます。また、胃下垂自体の改善や、胃アトニー症状の緩和のために生活習慣も見直す必要があります。胃下垂における薬物治療
胃下垂自体は症状のないものが多い傾向ですが、稀に現れる腹痛などの症状に対しては、胃の運動機能を高める薬や、消化を助ける薬、胃酸の分泌を抑える薬などを処方することがあります。これは胃アトニーに対しても同様です。胃下垂における生活習慣の見直し
胃下垂であることが明らかになっている場合には、胃アトニー症状を起こさないために、生活習慣を見直してみましょう。 胃下垂が認められている場合に生じる胃アトニーは、以下のような生活習慣や食習慣によって引き起こされやすいと言われています。- 暴飲暴食を行う
- ストレスを溜める
- 熱すぎるものを食べる
- 冷たいものばかり食べる
胃下垂になりやすい人・予防の方法
胃下垂になりやすい人
胃下垂になりやすいのは以下に該当する方です。- 女性
- るい痩者
- 運動不足の人
- 過労気味の人
- 暴飲暴食の多い人
- 高齢者
胃下垂の予防法
胃下垂の予防に有効と考えられるものは以下の通りです。 運動 腹筋など、胃の周辺の筋肉を鍛えることによって胃を支えられるようになります。また胃の蠕動運動の機能を高められます。 規則的な食事 食事の量が少ない方は、食事回数を多くして少量ずつでもたくさん食べられるようにしましょう。食べる量が増えることによって体重の増加が見込めます。また腹部の筋肉を増やす場合には、意識的にタンパク質を摂取しましょう。 ストレスや睡眠不足の解消 生活習慣や睡眠不足などを改善して、ストレスの緩和に努めましょう。ストレスが緩和することで消化器官の機能の向上を促し、胃の蠕動運動が活発になります。参考文献




