

監修医師:
佐伯 信一朗(医師)
乳管内乳頭腫の概要
乳管内乳頭腫は、乳腺内の乳管に発生する良性腫瘍であり、乳頭からの分泌物やしこりとして発見されることが多い疾患です。この疾患は、乳腺内の上皮組織が異常増殖することで発生し、乳管の中に小さな乳頭状の病変を形成します。乳管内乳頭腫は良性であるものの、一部は異型細胞を伴い、乳がんとの鑑別が必要となることがあります。特に、乳管内乳頭腫は単発性と多発性に分類され、単発性乳頭腫は通常、乳頭の近くに発生し、乳がんとの関連は低いと考えられています。一方で、多発性乳頭腫は、乳腺内の末梢乳管に複数発生することがあり、乳がんの発生リスクが高いとされます。
乳管内乳頭腫の原因
乳管内乳頭腫の正確な発生メカニズムは完全には解明されていませんが、乳管内の上皮細胞の過形成が原因の一つと考えられています。加齢によるホルモンの変化やエストロゲンの影響が発生に関与している可能性が指摘されています。また、乳腺の慢性的な炎症やホルモンバランスの乱れが乳頭腫の形成を促すこともあると考えられています。特に、多発性乳管内乳頭腫の場合、乳腺の組織変化や遺伝的要因が関与している可能性が示唆されています。
乳管内乳頭腫の前兆や初期症状について
乳管内乳頭腫の主な症状としては、乳頭からの異常分泌、乳房内のしこり、圧痛などが挙げられます。特に、血性または漿液性の乳頭分泌は乳管内乳頭腫の典型的な症状であり、この症状を伴う場合には医療機関での精査が推奨されます。しこりは小さく、触診では発見が難しいこともありますが、超音波検査やマンモグラフィによって確認されることが多いです。また、一部の症例では痛みを伴うこともありますが、無症状のまま定期検診で偶然発見されることもあります。
乳管内乳頭腫の検査・診断
乳管内乳頭腫の診断には、視診、触診、画像診断、病理検査が組み合わされます。最も一般的な画像診断方法は乳房超音波検査であり、乳管内に小さな腫瘍が形成されているかを確認します。また、マンモグラフィも補助的に使用されることがありますが、小さな乳頭腫は発見されにくいことがあります。乳頭分泌がある場合には、乳管造影が行われることもあり、乳管の中に充填される病変の存在を確認できます。
さらに、確定診断のためには針生検や吸引生検が行われ、病理組織学的に良性か悪性かを判別します。特に、異型細胞を伴う場合には、乳がんとの鑑別が重要となります。
乳管内乳頭腫の治療
乳管内乳頭腫の治療方針は、腫瘍の性質や患者の症状によって異なります。一般的には、良性と診断された単発性の乳管内乳頭腫は、経過観察を行うことが多く、特に症状が軽度の場合には定期的なフォローアップで管理されます。しかし、多発性乳頭腫や異型細胞を伴う乳頭腫の場合は、乳がんへの進展リスクを考慮し、外科的切除が推奨されます。
外科的治療では、乳頭腫を含む乳管の部分切除(乳管腺葉切除)が行われることが一般的です。近年では、低侵襲な方法として吸引生検が治療の一環として用いられることもあり、従来の外科的手術と比べて回復が早い利点があります。また、乳頭分泌のある患者においては、症状の改善を目的として手術が選択されることもあります。
乳管内乳頭腫になりやすい人・予防の方法
乳管内乳頭腫の発生リスクは、主に加齢やホルモンバランスの変化と関連しています。特に、30歳以上の女性では乳管内乳頭腫の発生頻度が高まる傾向にあります。また、エストロゲンの影響を受けることから、ホルモン補充療法を受けている女性は慎重なフォローアップが必要とされます。
予防策としては、定期的な乳がん検診を受けることが重要です。乳房超音波検査やマンモグラフィを適切なタイミングで受診することで、乳管内乳頭腫を早期に発見し、適切な対応を行うことが可能になります。また、乳頭分泌やしこりなどの症状が見られた場合には、速やかに医療機関を受診し、必要な検査を受けることが推奨されます。
関連する病気
- 線維腺腫
- 乳腺症
- 乳管拡張症
- 乳管癌
- パジェット病
- 乳頭異常分泌
- 血性乳頭分泌
- ホルモン異常
- プロラクチノーマ
- 視床下部・下垂体疾患
参考文献
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