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着床出血
西野 枝里菜

監修医師
西野 枝里菜(医師)

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【経歴】
東京大学理学部生物学科卒
東京大学薬学部薬科学専攻修士課程卒
名古屋大学医学部医学科卒
JCHO東京新宿メディカルセンター初期研修
都立大塚病院産婦人科後期研修
久保田産婦人科病院
【保有資格】
産婦人科専門医
日本医師会認定産業医

着床出血の概要

着床出血は、妊娠初期に受精卵(胚)が子宮内膜に着床する際に起こる軽度の出血のことです。妊娠初期の兆候の一つとして知られており、多くの場合、妊娠検査で陽性反応が出る前に発生します。着床出血は正常な妊娠過程の一部であり、通常は心配する必要はありません。

着床出血の原因

着床出血は、受精卵が子宮内膜に着床する過程で起こります。

  • 受精:精子が卵子内に入り、受精卵(胚)が形成される
  • 移動:卵管内で受精し、受精卵は卵管を通って子宮に向かって移動する
  • 着床:子宮に到達した受精卵が、栄養豊富な子宮内膜に潜り込む
  • 出血:着床するとき子宮内膜の血管が傷つき、軽度の出血が起こる

このような経過で着床出血が起こるのは、排卵後6〜12日頃になります。

着床出血の前兆や初期症状について

着床出血は病気ではありませんので、前兆や初期症状はみられません。着床出血の具体的な症状と生理の違いを解説します。

着床出血の症状

  • 軽度の出血(スポッティング):通常、1〜3日間続く
  • 腹部の軽い不快感

妊娠初期なので、妊娠に関連した症状を伴うこともあります。

  • 乳房の張りや痛み
  • 疲労感
  • 頭痛
  • 吐き気(つわり)
  • 頻尿
  • 気分の変化

着床出血と生理の違い

着床出血と生理出血は以下の点で異なります。

  • 出血量:着床出血は通常、生理よりもはるかに量が少ない
  • 持続時間:着床出血は1〜3日程度だが、生理は通常5〜7日続く
  • 出血の色:着床出血は薄いピンク色や茶色がかった色が多い一方、生理は明るい赤色や濃い赤色が多い
  • タイミング:着床出血は通常の生理予定日より数日早く起こることがある

該当するような症状があった場合、着床出血の可能性もありますが、急いで産婦人科を受診しても妊娠検査薬や超音波などの検査が行えない時期であることもあります。
出血が少量で体調不良がなければ、自宅で安静にするなど様子をみましょう。次回の生理が予定の時期を1週間以上遅れた場合は、妊娠検査薬を試してみて、陽性なら受診することをお勧めします。

着床出血の検査・診断

着床出血と思われる出血症状があった方に対して産婦人科では、以下の対応を行います。

  • 症状の確認:出血の量、色、持続時間などを問診で確認する
  • 妊娠検査:妊娠検査尿キットや血液検査で人絨毛性ゴナドトロピン(hCG)ホルモンを確認
  • 超音波検査:妊娠の確認や他の出血原因の除外のために行うことがある

ただし、着床出血が起こってすぐはhCGレベルがまだ低いため、妊娠検査で陰性結果が出る可能性があります。着床出血から3〜6日後に検査を行うことが推奨されます。

着床出血の治療

着床出血は通常、治療を必要としない正常な現象です。以下のような対応が推奨されます。

  • 経過観察:出血は通常1〜3日で自然に止まる
  • 安静:激しい運動や性行為を控えることが推奨される
  • パンティライナーの使用:軽度の出血に対応するため

ただし、以下のような症状がある場合は、すぐに医療提供者に相談してください。

  • 重度の出血(生理用ナプキンが濡れるほどの量)
  • 強い腹痛
  • 発熱悪寒

着床出血になりやすい人・予防の方法

着床出血は正常な妊娠過程の一部であるため、予防することはできません。しかし、以下の点に注意することで、妊娠初期を健康に過ごすことができます。

  • バランスの取れた食事と適度な運動
  • ストレス管理
  • 十分な睡眠
  • 禁煙・禁酒
  • 定期的な産前検診の受診

着床出血は多くの場合、心配する必要のない正常な現象です。しかし、出血が重度になったり、強い痛みを伴ったりする場合は、すぐに受診することが重要です。早期の妊娠ケアは、母体と胎児の健康を確保するために不可欠です。なお、妊娠経過としては着床出血がないケースの方が多いため、妊娠に着床出血は必須ではありません。

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