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「子宮外妊娠」の症状・原因・発症する確率はご存知ですか?医師が監修!

 更新日:2023/05/10
「子宮外妊娠」の症状・原因・発症する確率はご存知ですか?医師が監修!

子宮外妊娠とは、子宮内膜以外の場所に受精卵が着床してしまうことです。正しくは「異所性妊娠」といいます。

その名の通り、本来着床するべき場所以外の卵管などに受精卵が着床してしまいます。そのまま妊娠経過が進めば、卵管破裂などの危険も考えられるため注意が必要です。

この記事では、子宮外妊娠の症状・わかる時期・原因・検査・治療・再発についても詳しく解説します。

伊藤 有毅

監修医師
伊藤 有毅(柏メンタルクリニック)

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専門領域分類
精神科(心療内科),精神神経科,心療内科。
保有免許・資格
医師免許、日本医師会認定産業医、日本医師会認定健康スポーツ医

子宮外妊娠とは

お腹をさわる女性

子宮外妊娠とはどのような症状でしょうか?

子宮外妊娠とは、子宮内膜以外の部位に受精卵が着床することです。2009年3月からは「異所性妊娠」と統一されました。
子宮内膜以外とは、具体的に卵管・卵巣・子宮頸管などです。その中でも最も発生しやすいのは卵管妊娠です。異所性妊娠の95%以上は卵管妊娠であるといわれています。本来着床すべき場所とは異なる場所に着床することで、卵管破裂・腹腔内出血などのリスクが高まります。しかし、初期の段階では自覚症状はほとんどありません。
軽い腹痛やお腹の張りを感じることもありますが、ご自身で気付くのは難しいでしょう。なお、腹腔内で出血が進んだ場合には、腹痛・嘔気・嘔吐などの症状がみられることもあります。腹腔内で大量出血が起きれば、出血性ショックにより動悸や意識障害などの危険な状態に陥る可能性もあります。

子宮外妊娠はいつわかるのでしょうか

通常の妊娠では、妊娠反応が陽性となり、妊娠5週ごろのエコー検査で子宮内に「胎嚢」と呼ばれる袋が確認されます。しかし、この時期になっても子宮内に胎嚢が確認できない場合には、異所性妊娠が疑われます。
このとき、卵管周囲の出血や腹腔内の出血が確認されることも考えられるでしょう。

原因を教えてください。

子宮外妊娠の多くは卵管妊娠ですが、その原因となるのは受精卵の通過障害です。例えば、炎症・癒着・奇形などによる卵管の狭窄や閉鎖などによって引き起こされます。その他にも、リスク因子がいくつかあります。

  • 40歳以上
  • 経産婦(特に前回の出産から5年以上経過している場合)
  • クラミジア感染症などによる骨盤内炎症性疾患の既往がある
  • 過去に卵管部の手術を受けたことがある
  • 子宮外妊娠の既往がある
  • 子宮内避妊具使用中の妊娠
  • 子宮内膜症を患っている
  • 体外受精や胚移植による妊娠

子宮外妊娠は20代〜30代によくみられますが、40歳以上では10代と比べて3倍の発症率になるといわれています。また、出産経験がある方で前回の出産から5年以上経っている場合もリスク因子の1つです。
さらに、子宮内避妊具の使用中に妊娠をした場合には、約2〜5%の割合で子宮外妊娠が引き起こされることもあります。避妊具を使用しているからといって安心せず、生理が遅れた場合には産婦人科へ受診するようにしてください。

どのくらいの確率で子宮外妊娠が起こるのでしょうか?

異所性妊娠は、1〜2%の確率で起こるといわれています。例えば、100件の妊娠で考えれば、1〜2件の割合です。全体的にみれば、そこまで多い数ではありません。
しかし、先にお伝えしたリスク因子に該当する場合には注意しましょう。既往歴などに不安がある場合には、産婦人科へ相談することもおすすめです。

子宮外妊娠の検査と治療

女性医師

子宮外妊娠でもつわりは起こりますか?

子宮外妊娠でも、正常な妊娠と同様にホルモンの上昇がみられます。それに伴って妊娠反応が陽性になり、つわりの症状が現れることもあります。そのため、つわりの有無だけで正常な妊娠か異所性妊娠かを判断することはできません。
異所性妊娠は早期治療が重要ですので、生理が2週間以上遅れている場合には妊娠判定を行いましょう。

子宮外妊娠は妊娠検査薬でどのような反応が出ますか?

子宮外妊娠でも妊娠検査薬が陽性反応を示すことがあります。診察の流れとしては、妊娠反応の確認で陽性がみられた後に、胎嚢の確認を行うことが一般的です。
しかし、生理周期に乱れがある場合などは、妊娠5週目に入っても胎嚢が確認できないケースもあります。そのため、5週目を過ぎて胎嚢が確認できないからといって異所性妊娠であるとは限りません。

病院ではどのような検査を行いますか?

まずは、尿検査にて妊娠反応があるかを確認します。その後、内診や超音波検査を行い、血液検査でホルモンの値などを確認することが一般的です。先述の通り、初期であれば異所性妊娠と確定診断をするのは非常に難しいです。
腹腔内出血を確認するために、ダグラス窩穿刺という検査を行うこともあります。これらの検査で確定診断ができない場合には、子宮内除去法や腹腔鏡を用いた検査で確定診断を行います。

子宮外妊娠の治療方法を教えてください

子宮外妊娠の治療においては、手術療法が第一選択です。着床の状態・部位・患者さんの健康状態に応じて、最適な術式が選択されます。再発を防ぐために有効とされるのは、卵管切除術です。
着床した部位ごと卵管を切除することで、根治性を高めます。しかし、手術部位とは逆の卵管で異所性妊娠が起こる可能性は否定できません。
その他の術式としては、卵管保存術という方法です。卵管を残して受精卵のみを取り除く方法ですが、術後に再手術や薬物療法が必要となるケースもあります。なお、手術以外にMTXなどの薬剤を使用する薬物療法のみで治療するケースや待機療法が適用できる場合もあります。

子宮外妊娠の再発・次の妊娠

顔を覆う女性

子宮外妊娠の場合、出産には至らないのでしょうか?

子宮外妊娠の場合、残念ながら出産に至ることはありません。子宮内膜以外で着床した受精卵が成長し大きくなれば、卵管破裂などを引き起こす危険があります。卵管破裂を起こせば大量に出血し、出血性ショックにより命に危険が及ぶ可能性もあります。
本来着床すべきではない場所への着床ですので、妊娠の継続は困難です。妊娠反応が陽性であるものの、着床箇所が確認できない場合には、手術によって着床箇所を確認するケースもあります。腹腔内出血を起こす前に発見し、治療することが重要です。

子宮外妊娠は再発すると聞いたのですが…。

子宮外妊娠の既往歴がある方の場合、1割程度の方は子宮外妊娠を繰り返すことがあるといわれています。また着床が起きた卵管を切除しても、反対側の卵管で異所性妊娠が再び起こる可能性もあるため、注意深く経過をみる必要があるでしょう。
先にも述べましたが、異所性妊娠には様々なリスク因子が関連しています。例えば、年齢や腹部手術の既往歴などにより、再発リスクが高まることも考えられます。
その他にも、クラミジアなどの性感染症が原因となることも考えられるでしょう。性感染症が疑われる場合には、まずはそちらの治療を行うことも重要です。

手術後にすぐ次の妊娠はできるのでしょうか?

手術後は、まず妊娠反応が陰性になったことを確認する必要があります。その上で3~4ヵ月は避妊を行い、経過を確認することが大切です。
子宮卵管造影検査にて子宮や卵管などに異常がないことを確認できれば、次の妊娠への準備が整います。しかし、次の妊娠が疑われる場合には早めに受診したほうが良いでしょう。
異所性妊娠は繰り返すこともありますので、慎重に経過をみていくことが大切です。

最後に、読者へメッセージをお願いします。

異所性妊娠は、全体でみればそこまで多いわけではありません。しかし、人によっては異所性妊娠を繰り返すこともあります。また、子宮内避妊具などを使用している場合でも、異所性妊娠のリスクが高まります。
早期治療のためにも、日頃から生理周期を記録しておくことも心がけましょう。

編集部まとめ

ハート
子宮以外の場所に着床してしまう子宮外妊娠について解説しました。現在は「異所性妊娠」と統一されており、近年では比較的重症化せずに早期治療が可能となっています。

とはいえ、早期治療が重要なことはいうまでもありません。生理が2週間以上遅れている場合には、妊娠検査薬を使用することがおすすめです。

基本的には手術療法が選択されますが、場合によっては薬物療法のみで治療できることもあります。

術式も様々ですので、重篤化する前に適切な治療を受けることが大切です。

この記事の監修医師