

監修医師:
五藤 良将(医師)
副腎がんの概要
副腎がんは、腎臓のすぐ上にある副腎に発生するがんです。副腎は左右に1つずつある小さな臓器で、コルチゾールやアルドステロンなど、生命維持に必要なホルモンを分泌する役割を担っています。
副腎がんは非常にまれな病気で、10歳未満の子どもと30〜40歳代の大人に多く、男性よりも女性の発症率が高くなっています。
(出典:国立がん研究センター「副腎皮質がん(ふくじんひしつがん)」)
副腎がんは約半数で副腎から過剰なホルモンの分泌が見られるのが特徴で、ホルモンの種類によってさまざまな症状があらわれます。残りの半数は「非機能性」と呼ばれ、大きくなったがんが周りの組織を圧迫し、ほかの病気の検査中に偶然見つかるケースもあります。
副腎がんは進行が早いうえ、初期段階での発見が難しいがんです。診断時には進行している場合も少なくありません。
副腎がんの原因
副腎がんの原因は完全に解明されていませんが、一部の副腎がんで遺伝的な要因が関係していることがわかっています。
具体的には、リ・フラウメニ症候群という病気の原因でもある「TP53」という遺伝子の異常によって、副腎がんを含むさまざまながんの発症リスクを高めるとされています。また、家族性大腸腺腫症やベックウィツ・ヴィーデマン症候群、多発性内分泌腫瘍症1型なども副腎がんの発症と関連があるとされています。
また、環境的な要因として、喫煙や経口避妊薬も副腎がんのリスクを高める可能性があります。
副腎がんの前兆や初期症状について
副腎がんの症状は、分泌されるホルモンの種類と量、がんの大きさによって異なります。ただし、初期には症状がない場合も多いです。
副腎がんの約半数は、通常より多くのホルモンが分泌されます。。コルチゾール(ストレスホルモン)が過剰に分泌されると、顔が丸くなる、体の中心部だけが太る、手足の筋肉がやせる、皮膚に紫色の線ができる、血圧が上がる、血糖値が高くなるといった症状が出ます。
男性ホルモンの分泌が過剰になると、女性では顔や体の毛が増える、声が低くなる、にきびができる、月経が止まるなどの症状が出ます。子どもの場合は早期に思春期の変化があらわれることもあります。
女性ホルモンの分泌が過剰になると、男性では胸が発達する、性欲が減退するなどの症状があらわれます。
アルドステロン(血圧を調整するホルモン)が過剰に分泌されると、血圧の上昇や、体内のカリウム減少による筋力低下やしびれ、頭痛が起こることがあります。
がんが進行して大きくなった場合は、腹部や腰の痛み、腹部の膨満感、体重減少、食欲不振などの症状が出ます。
副腎がんの検査・診断
副腎がんの検査では、血液検査、尿検査、画像検査、組織検査が実施されます。
はじめに血液と尿の検査で各ホルモン値を測定します。副腎皮質がんでは、コルチゾール、アルドステロン、男性ホルモン、女性ホルモンなどのホルモン値が高くなることがあります。
画像検査ではCT検査やMRI検査が行われます。副腎がんの場合、境界が不規則で内部が均一でない特徴が見られます。
確定診断は、採取したがんの一部の組織検査によって行われます。 がんの進行度(ステージ)は、がんの大きさや周りへの広がり、転移の有無によって判断されます。
副腎がんの治療
副腎がんの治療は、がんの進行度や患者の年齢、全身状態などから総合的に判断して決定されます。治療の中心は手術です。
手術ではがんを完全に取り除くことを目指します。がんが大きい場合や周りに広がっている場合は、開腹手術が行われます。
手術後は再発を防ぐために、副腎でのホルモン分泌を妨げてがん細胞の増殖を抑える薬が使われることがあります。がんが、進行している場合は、抗がん剤の使用や放射線治療が検討されます。
また、過剰分泌しているホルモンによる症状に応じた治療も必要になります。
副腎がんになりやすい人・予防の方法
リ・フラウメニ症候群やベックウィズ・ヴィーデマン症候群など、特定の遺伝性疾患がある人は副腎がんのリスクが高いとされており、定期的な検査が推奨されます。
副腎がんの予防法は確立されていませんが、禁煙や定期的な運動、規則正しい食事などの健康的な生活習慣は、あらゆるがんのリスクを下げるのに役立ちます。
遺伝性疾患の家族がいる場合や、副腎がんの症状に気づいた場合は、早めに医師に相談しましょう。とくに原因不明の腹部の痛みや膨満感、急な体重減少、ホルモンの異常による症状があらわれた場合は、速やかに医療機関を受診することが大切です。




