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リウマチ熱
山田 克彦

監修医師
山田 克彦(佐世保中央病院)

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大分医科大学(現・大分大学)医学部卒業。現在は「佐世保中央病院」勤務。専門は小児科一般、小児循環器、小児肥満、小児内分泌、動機づけ面接。日本小児科学会専門医・指導医、日本循環器学会専門医。

リウマチ熱の概要

リウマチ熱とは、A群β溶血性レンサ球菌(溶連菌)感染後に発症する非化膿性の炎症性疾患です。
A群β溶血性レンサ球菌による咽頭炎にかかり、症状が軽減する2〜4週間後に発症します。
5〜15歳が好発年齢とされており、3歳未満や大人にはほとんどみられません。

主な症状には、心炎、関節炎、小舞踏病(しょうぶとうびょう)、輪状紅斑(りんじょうこうはん)、皮下結節が挙げられます。主症状としては関節炎が最も多く、約70%にみられます。リウマチ熱は心臓弁膜症や不整脈などの後遺症を残すことや、心不全に移行するケースも報告されています。

心炎を合併したリウマチ熱は、治療終了後も二次予防が重要です。A群β溶血性レンサ球菌に再感染した場合、心炎を繰り返すことで心臓弁膜症が重症化するリスクが高まるとされています。

日本ではA群β溶血性レンサ球菌による咽頭炎の迅速検査の普及や抗菌薬による治療の普及により、リウマチ熱の患者は激減しています。
しかしリウマチ熱の原因であるA群β溶血性レンサ球菌による咽頭炎は、毎年流行がみられる集団感染の1つです。

リウマチ熱は治療開始が遅れると重症化してしまい、様々な合併症を引き起こします。そのため早期発見、早期治療が重要です。

リウマチ熱

リウマチ熱の原因

リウマチ熱は、A群β溶血性レンサ球菌感染後の免疫反応が原因となって起こります。

リウマチ熱の感染を疑って受診する際には症状だけでなく、過去にA群β溶血性レンサ球菌感染があったことも医師へ伝えるようにしましょう。

リウマチ熱の前兆や初期症状について

リウマチ熱で見られる症状として、関節痛、発熱、胸痛や動悸、けいれんのような自分の意思では止められない不随意運動、発疹、皮下結節が挙げられます。

リウマチ熱は、体のどの部位に炎症が起こるかによって症状が異なります。

関節

関節に炎症がおこると、関節痛が生じます。関節炎は発熱を伴い、熱感と腫れがみられます。膝や足首、肩、肘などの大きな関節にみられることが多いです。時間の経過とともに痛む部位が移動することが特徴です。

心臓

リウマチ熱の症状のうち、特に心炎は重要です。心炎の症状としては、高熱がでたり胸が痛くなったりします。

心炎はリウマチ熱の症状のうち、関節炎の次に多い症状といわれています。子どもの場合、約50〜60%でみられます。脈拍数が多かったり、心臓に雑音が聞かれたりすることで気づかれることが多いです。発熱や関節炎がでてから、1~2週間以内に症状が現れます。

神経系

中枢神経に炎症をおこすと、体が勝手に動く小舞踏病(しょうぶとうびょう)を起こすこともあります。小舞踏病はA群β溶血性レンサ球菌感染症の2〜6ヶ月後に発症するため、発症する時期にはリウマチ熱による炎症が改善していることが多いです。

皮膚

皮膚に炎症が及ぶと、輪状紅斑(りんじょうこうはん)や皮下結節(皮下のしこり)が出現します。輪状紅斑は痛みを伴わない赤みがかった輪状の皮疹で、体幹や手足にみられます。

リウマチ熱の検査・診断

リウマチ熱の診断には、2015年に改訂されたJonesの診断基準が用いられます。
A群レンサ球菌感染(咽頭培養、迅速検査、ASO値上昇)が確認され、かつ下記の主症状2項目以上、また主症状1項目に副症状が2項目以上の場合、リウマチ熱の可能性が疑われます。

①主症状
心炎、移動性多発性関節炎、舞踏病、輪状紅斑、皮下小結節

②副症状
多発関節痛、38.5度以上の発熱、赤沈値が60mm/h以上またはCRPが3mg/dl以上、心電図PR時間延長

リウマチ熱の検査方法としては以下が挙げられます。

咽頭培養検査

のどに綿棒を入れて液体をぬぐい取り、レンサ球菌の有無や量を確認します。

血液検査

体内で炎症が起きているかや、炎症の程度をみます。
また、ASO値の上昇でレンサ球菌による免疫反応が起きたのかどうかを確認します。

心電図

心臓を流れる電気信号の強さや向きを記録する検査です。
リウマチ熱の症状の1つに心炎があるため、心炎が原因の不整脈がないかを調べます。電極を体に装着しますが、痛みを伴わずに検査できます。

心臓超音波検査

超音波を使用して心臓の構造の画像をみる検査です。心臓の弁の異常や炎症を調べます。プローブとよばれる器機を胸の上から当てることで心臓の画像を見ることができるため、痛みはありません。

リウマチ熱の治療

リウマチ熱の治療は薬物療法が基本となります。関節痛や小舞踏病(しょうぶとうびょう)、心炎がある場合には、安静が必要となります。

抗菌薬

抗菌薬は、A群β溶血性レンサ球菌の増殖を防いだり殺したりする働きがあります。

非ステロイド系鎮痛薬

関節の痛みが強い場合には、炎症と痛みを抑えるために使用されます。

ステロイド薬

心臓の炎症がひどい場合に用いられます。検査結果が良くなり炎症が治っていることを確かめながら、徐々に薬の量を減らしていきます。

再発予防のための治療

リウマチ熱は再発しやすい病気です。
一度リウマチ熱を発症すると、20~50%は再発するといわれています。再発はA群β溶血性レンサ球菌の再感染によって起こります。

心臓に後遺症が残った場合は、再発するとさらに心臓の状態が悪くなります。そのためA群β溶血性レンサ球菌の再感染予防として、抗菌薬の予防投与をおこなうこともあります。

リウマチ熱になりやすい人・予防の方法

人口が密着している地域に住んでいる場合や保育園や学校などの集団生活をしている場合は感染症にかかるリスクが高まるため、リウマチ熱になりやすいと考えられます。
リウマチ熱は、原因となるA群β溶血性レンサ球菌咽頭炎の治療を確実に行うことで予防できます。そのとき重要になるのは、正しく抗生剤を飲むことです。

A群β溶血性レンサ球菌咽頭炎は薬を飲み始めると、数日でのどの痛みがやわらいできます。リウマチ熱発症を防ぐためには、処方された薬を確実に飲み切ることが重要です。処方薬を全て飲み切ることで、確実にA群β溶血性レンサ球菌を退治することができます。自己判断で薬の量を減らしたり、中止したりすることがないようにしましょう。

あわせて日頃からうがいや手洗い、マスクの着用など基本的な感染症予防に努めることが重要です。


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