口角びらん

監修医師：
五藤良将（医師）

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防衛医科大学校医学部卒業。その後、自衛隊中央病院、防衛医科大学校病院、千葉中央メディカルセンターなどに勤務。2019年より「竹内内科小児科医院」の院長。専門領域は呼吸器外科、呼吸器内科。日本美容内科学会評議員、日本抗加齢医学会専門医、日本内科学会認定医、日本旅行医学会認定医。

目次 -INDEX-

口角びらんの概要

口角びらんは、口の両端（口角）が赤くただれたり、ひび割れたりした状態のことです。さまざまな原因で起こり、場合によっては他の病気が影響していることもあります。

口角びらんは痛みをともなうことが多く、日常生活における会話や食事などに支障をきたします。見た目の問題で悩む方も少なくありません。

自然治癒する場合もありますが、症状が長期間にわたり続く場合や再発を繰り返す場合は、医師の診察と治療を受けることが推奨されます。

口角びらんの主な原因の一つは、カンジダ菌という真菌（カビの一種）や細菌の感染です。皮膚のバリア機能が低下している状態や亀裂が生じている際に、真菌や細菌への感染リスクが高まります。

また、栄養不足や偏りによる発症も多くみられます。とくに鉄分が不足して貧血になっている方や、ビタミンB2、B6、B12が不足している方は口角びらんが生じやすくなります。また、亜鉛やたんぱく質が不足している場合も発症リスクが高まるとされています。

日常生活における原因としては、入れ歯が合っていないことや、歯の噛み合わせが悪いことが挙げられます。他にも、大きな食べ物を頻繁に食べたり、歯磨きの際に口を大きく開けすぎたりする習慣も原因となることがあります。

さらに、口呼吸が多い方や、マスクを長時間着用することによる蒸れも原因の一つです。唾液が多すぎる場合や逆に少なすぎる場合も、口角びらんを引き起こす原因となることがあります。

また、糖尿病やシェーグレン症候群など、全身の病気が原因で発症することもあります。

口角びらんの初期段階は、口の端が少し赤みを帯び、軽い違和感を感じる程度です。その後、口角の皮膚が白っぽくなったり、薄皮が剥けたりする症状があらわれ始めます。

症状が進行すると、皮膚に亀裂が入り、口を開けたときに痛みを感じるようになります。出血をともなうことも珍しくありません。亀裂が入ると、食事の際に酸味の強い食べ物や、しょうゆなどの塩分の多い調味料がしみて痛むようになります。

こうした症状は片側だけにあらわれることもあれば、両側に起こることもあります。口角に限らず、口の周りの皮膚が赤くなったり、かさかさしたりすることもあります。

口角に亀裂が入った状態で放置すると、傷口から細菌が入り込んで感染が広がり、症状が悪化することもあるため早めの治療が大切です。

口角びらんの診断では、いつから症状が出始めたのか、普段の生活習慣はどうか、持病はないかなどを確認した後、視診で口の状態を調べます。

口角びらんの原因は多岐にわたるため、口角以外の症状も確認したうえで必要な検査を見極めます。

例えば、カンジダ菌や細菌感染が疑われる場合は、口角の皮膚をわずかに採取して顕微鏡で調べます。鉄欠乏性貧血や自己免疫疾患であるシェーグレン症候群が原因として疑われる場合は、血液検査を行うことがあります。血液検査では、ビタミン・亜鉛などの栄養状態や血糖値を確認します。

口角びらんの治療は、原因や症状に応じて行われます。

カンジダ菌の感染が原因の場合は、抗真菌薬の軟膏や内服薬を使用します。細菌感染が疑われる場合は、抗生物質の軟膏や内服薬を処方します。
炎症が強い場合は、医師の指示のもとでステロイド軟膏を併用することもあります。

口角の乾燥が原因で亀裂が生じたケースに対しては、白色ワセリンなどの保湿剤を使って保護します。就寝前の塗布が効果的で、夜間の悪化を防ぐことができます。過度な乾燥を防ぐため、室内の湿度管理なども重要です。

鉄分不足による貧血やビタミンB群の不足が原因の場合は、食事改善とともに、それぞれ鉄剤やビタミン剤を処方します。サプリメントは、自己判断で過剰摂取せず、医師の指示に従い適切な量を摂取することが大切です。

入れ歯の不適合や噛み合わせの問題が原因の場合は、歯科医院での調整が必要です。一時的な症状の治療だけでなく、入れ歯の適合性の改善や、噛み合わせの修正など、根本的な原因への対処が求められます。

糖尿病や自己免疫疾患などの全身疾患が原因の場合は、それらの治療が優先されます。例えば、糖尿病では血糖値のコントロール、シェーグレン症候群では唾液分泌の管理など、基礎疾患の治療を並行して行います。

口角びらんは高齢者、入れ歯を使用している方、栄養バランスの偏りがある方、口呼吸が多い方に生じやすい傾向があります。また、糖尿病やシェーグレン症候群などの持病がある方も注意が必要です。

予防のためには、日頃からのケアが重要です。食後の歯磨きと口角の清潔を保ち、就寝前にはワセリンなどで保湿を心がけましょう。
入れ歯を使用している方は、定期的に歯科医院を受診し、適合状態を確認しましょう。また、口を過度に大きく開ける習慣を避け、口角に負担をかけないようにすることが大切です。

口角びらんを放置すると細菌感染リスクが高まり、悪化する恐れがあるため、口角に違和感を覚えたら、早めに医療機関を受診することが推奨されます。