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自己免疫性出血病XIII
五藤 良将

監修医師
五藤 良将(医師)

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防衛医科大学校医学部卒業。その後、自衛隊中央病院、防衛医科大学校病院、千葉中央メディカルセンターなどに勤務。2019年より「竹内内科小児科医院」の院長。専門領域は呼吸器外科、呼吸器内科。日本美容内科学会評議員、日本抗加齢医学会専門医、日本内科学会認定医、日本旅行医学会認定医。

自己免疫性出血病XIIIの概要

自己免疫性出血病XIIIは、血液を固めるために必要な「凝固第XIII因子」が減少し、わずかな刺激でも容易に出血してしまう疾患です。

比較的まれな疾患である「自己免疫性後天性凝固因子欠乏症(厚生労働省/指定難病288)」の中に見られる病態の1つとして分類されています。 60〜70代での発症報告がもっとも多いとされますが、男女ともに全世代で発症する可能性があります。

自己免疫性出血病XIIIの原因は、凝固第XIII因子に対する自己抗体(誤って自己を攻撃・排除してしまう免疫)が産生されてしまうことです。自己抗体の攻撃対象となった凝固第XIII因子は著しく減少します。その結果、血液を固める機能が正常に働かなくなります。 自己抗体ができてしまう原因はよくわかっていませんが、がんや悪性疾患、自己免疫疾患、感染症、妊娠などが、この病気の発症のきっかけになるケースもあることが知られています。

自己免疫性出血病XIIIを発症すると皮膚や筋肉などに突然大量の出血が生じることがあります。 出血量によっては貧血やショック状態におちいることもあります。 特に頭蓋内出血や胸腔内出血は、脳神経系や循環器系に重篤な障害をもたらしたり、生命を脅かしたりすることがあります。

診断は主に血液検査によっておこなわれ、凝固第XIII因子の量や自己抗体の存在を確認します。 治療の中心は第XIII因子製剤の投与であり、自己抗体の産生を抑制するために免疫抑制剤も併用されます。

自己免疫性出血病XIIIは突然発症することが多く、出血死後に確定診断される例もあります。 また、一度状態が安定しても再発する可能性があるため、長期にわたる経過観察が必要です。

血液凝固因子とは

ケガによる出血であれ、体内での出血であれ、血管が傷つき出血を起こしたときに、血が止まるしくみは複雑です。血管の収縮、血小板の働きのほか、最終的には「フィブリン」が働くことで正常に止血されます。

血液凝固因子は、このフィブリンを作り出すために働きます。それぞれローマ数字のついた12種類(番号は1~13だが、6番は欠番)が知られており、それらが複数の過程を経て連鎖的に反応しフィブリンとなります。 凝固因子にいずれか1つでも不足・障害があると、必要なフィブリンを合成できない可能性があります。自己免疫性出血病XIIIでは、第13因子が不足します。

自己免疫性出血病XIIIの原因

自己免疫性出血病XIIIは、体内で凝固第XIII因子に対する自己抗体が作られることが主な原因です。 自己抗体は「凝固第XIII因子の機能を直接阻害すること」「凝固第XIII因子と結合してその複合体が体内から速やかに除去されること」の2つの問題を引き起こします。

これらの作用により、血液中の凝固第XIII因子が著しく減少し、正常な血液凝固がさまたげられ、出血傾向が生じます。

発症のきっかけとなる要因として、がん、悪性疾患、他の自己免疫疾患、感染症、妊娠、分娩などが示唆されています。 しかし、約半数の症例では特定の原因が見つからない特発性のケースです。 また、高齢者に多いことから、加齢も発症の一因と考えられています。

自己抗体が産生される根本的なメカニズムは現在も不明で、さらなる研究が必要とされています。

自己免疫性出血病XIIIの前兆や初期症状について

自己免疫性出血病XIIIの主な症状は突然の出血です。 出血は体のどの部位でも起こる可能性がありますが、特に皮膚、筋肉、粘膜などの柔らかい組織で多く見られます。

大量出血の場合、貧血やショック状態におちいることがあります。 出血部位によっては、コンパートメント症候群や気道圧迫などの合併症が生じる可能性もあります。

特に危険なのは頭蓋内、胸腔内、腹腔内の出血で、これらは脳神経系や循環器系に重篤な障害を引き起こし、致命的な状態におちいる可能性があります。

自己免疫性出血病XIIIの検査・診断

自己免疫性出血病XIIIの診断は主に血液検査に基づいておこなわれます。 凝固第XIII因子の著しい減少と、それに対する自己抗体の存在が確認されることが診断の鍵となります。

自己免疫性出血病XIIIは「自己免疫性後天性凝固因子欠乏症」の一種で、さまざまな凝固因子が原因となり得るため、正確な診断が治療方針の決定に重要です。

診断基準には、過去1年以内の出血症状の発症や、血友病などの出血性疾患の家族歴や既往歴がないこと、抗凝固薬や抗血小板薬の過剰投与がないことなども考慮されます。

これらの検査結果と臨床症状を総合的に評価し、自己免疫性出血病XIIIの診断が確定します。

自己免疫性出血病XIIIの治療

自己免疫性出血病XIIIを根本的に治療する方法は、現在のところ見つかっていません。

自己免疫性出血病XIIIの治療は、大量出血が発生した場合のような急性期においては止血処置や輸血をおこなうことから始まります。 血液検査で第XIII因子の著しい減少が確認されたら、速やかに第XIII因子製剤を投与します。

第XIII因子製剤の投与により体内の第XIII因子レベルを上昇させると出血を抑えることができますが、自己抗体の存在により効果が短時間で失われる傾向があります。 そのため、自己抗体の産生を抑制するために、副腎皮質ステロイドやシクロフォスファミドなどの免疫抑制剤の内服や注射も併用されます。

自己免疫性出血病XIIIの治療では、このように血液製剤と薬物療法を組み合わせて止血機能を保ち「寛解 (かんかい=症状が落ち着いた状態)」を目標とするのが一般的です。

ただし、自己免疫性出血病XIIIは突然発症し、急速に病態が進行することが多く、出血死後に確定診断される例や急性期治療中に死亡する例も報告されています。 また、一度状態が安定しても再発の可能性があるため、長期にわたる経過観察が不可欠です。 治療の目標は重篤な出血を防ぎ、患者の致命的な状態から救出することと、生活の質を維持することです。

自己免疫性出血病XIIIになりやすい人・予防の方法

自己免疫性出血病XIIIになりやすい特定の因子は、現在のところ明確ではありません。がんや悪性疾患、関節リウマチや全身性エリテマトーデスなどの自己免疫疾患、感染症、妊娠、分娩などが発症のきっかけになることがあるとされます。

自己免疫性出血病XIIIの発症自体は確実に予防する方法がありません。しかし、早期発見と適切な医療介入により、患者さんは生活の質を維持できる可能性があります。

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