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出血性ショック
岡本 彩那

監修医師
岡本 彩那(淀川キリスト教病院)

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兵庫医科大学医学部医学科卒業後、沖縄県浦添総合病院にて2年間研修 / 兵庫医科大学救命センターで3年半三次救命に従事、近大病院消化器内科にて勤務 /その後、現在は淀川キリスト教病院消化器内科に勤務 / 専門は消化器内科胆膵分野

出血性ショックの概要

出血性ショックは、大量に出血した結果全身の血流を維持できなくなり、臓器障害などを呈する状態です。

ショックは原因や病態から「循環血液量減少性ショック」「血液分布異常性ショック」「心原性ショック」「心外閉塞・拘束性ショック」に分類され、出血性ショックは循環血液量減少性ショックに該当します。

心臓はポンプのような動きをして、全身に血液を循環させています。血液には酸素や栄養分が含まれ、血液が全身を循環することで各臓器に酸素や栄養分が届けられ、健康が維持できています。

しかし、大量に出血すると脳や主要な臓器への血流が減少し、意識障害などを引き起こすことがあります。
医療現場では、一般的に大量出血により上の血圧(収縮期血圧)が90mmHg以下に低下した場合に出血性ショックと診断されます。

出血性ショック

出血性ショックの原因

出血性ショックの原因は大量に出血を起こす病気やケガになります。交通事故など外傷による出血のほか、胃潰瘍や十二指腸潰瘍、食道静脈瘤破裂などの消化管出血や大動脈瘤破裂などが挙げられます。

また周産期においては子宮破裂や常位胎盤早期剝離なども大量出血をきたしやすく、出血性ショックを引き起こす原因となりえます。

出血性ショックの前兆や初期症状について

出血性ショックでは、全身への血流が低下することで以下のような徴候がみられます。

  • 頻脈が弱く、早くなる
  • 顔色が青白くなる
  • 手足が冷たくなる
  • 冷や汗が出る

また出血量が増加し、出血性ショックが進行すると血圧の低下や意識障害などの重篤な症状が現れ、命を落とす恐れがあります。そのため、上記で挙げたような症状がみられた場合は、一刻も早く治療を開始する必要があります。

出血性ショックの検査・診断

大量出血が疑われるときは、脈拍や血圧、呼吸状態、体温などのバイタルサインを測定し、急激な悪化がみられる場合に出血性ショックと診断されます。

一般的には、大量出血により収縮期血圧が90mmHg以下に低下した場合に出血性ショックと判断されますが、平常時の血圧が低い(収縮期血圧100mmHg以下)または高い(収縮期血圧130mmHg以上)人は、必ずしもこの基準ではありません。

また消化管からの出血など、出血箇所が目視で確認できない場合には、必要に応じて超音波検査やレントゲン撮影などを行います。これらの検査では、出血の有無を確認し、ショックの原因が出血かどうか判断します。
ショック状態を離脱した、あるいは状態が少し安定した時点で、造影CTなど他の画像検査で出血源の特定を行います。

出血性ショックの治療

出血性ショックでは、原因や出血量に応じた治療が行われます。

外傷の場合には、出血箇所を圧迫して止血する処置が行われます。出血量が増えれば増えるほどショックが進行し、最悪の場合命に関わります。そのため、交通事故などの外傷の場合は、本人または周囲の人が可能な限り止血を試みることが求められます。

救急で運ばれたあとは、出血箇所の止血とあわせて、血液量を維持するためにアルブミン製剤やリンゲル液などを用いた輸液の投与、血液製剤の輸血を行います。

消化管からの出血の場合には、内視鏡を用いて医療用のクリップで出血部位を止血したり、出血部位に止血剤を注入したりする処置が行われます。また消化管のなかでも胃潰瘍や十二指腸潰瘍など潰瘍からの出血の場合は、出血箇所を焼却して止血させる処置を行うことが多いです。

出血性ショックの治療時には全身状態のモニタリングが重要であり、意識障害がみられる場合には、気管へチューブを挿入(気道挿管)して気道の確保を行います。

いずれの場合も一刻も早い処置が必要であり、できるだけ早く止血を行い、失われた血液を補うための治療が行われます。

出血性ショックになりやすい人・予防の方法

胃潰瘍や十二指腸潰瘍、食道静脈瘤を発症している人や、大動脈瘤がある人は出血性ショックを発症するリスクがあるといえるでしょう。そのため、胃潰瘍、十二指腸潰瘍、食道静脈瘤、大動脈瘤を認める場合には、悪化予防のため適切な治療を受けることが出血性ショックの予防につながります。

また交通事故のほか、高齢者の転倒やスポーツ中のケガなどによる外傷も出血性ショックを引き起こすことがあるため、日常的にこれらのケガの予防に努めましょう。


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