低アルブミン血症
大坂 貴史

監修医師
大坂 貴史(医師)

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京都府立医科大学卒業。京都府立医科大学大学院医学研究科修了。現在は綾部市立病院 内分泌・糖尿病内科部長、京都府立医科大学大学院医学研究科 内分泌・糖尿病・代謝内科学講座 客員講師を務める。医学博士。日本内科学会総合内科専門医、日本糖尿病学会糖尿病専門医。

低アルブミン血症の概要

低アルブミン血症とは、血液中のアルブミンというタンパク質の濃度が低下した状態を指します。アルブミンは、肝臓で作られる主要なタンパク質の一つであり、血液中の水分を維持し、栄養の運搬、ホルモンや薬物の結合、免疫機能のサポートなど、さまざまな重要な役割を果たしています。血液中のアルブミン濃度が低下すると、体内の水分バランスが崩れ、むくみ(浮腫)や栄養不足、免疫の低下などの問題が発生することがあります。
一般的に、血液中のアルブミン濃度は4.0~5.0g/dLの範囲が正常とされており、3.5g/dL未満になると低アルブミン血症と診断されます。重度の場合は、血管内の水分が外に漏れやすくなり、全身の浮腫や腹水、さらには肺水腫を引き起こすこともあります。低アルブミン血症の原因は多岐にわたり、肝疾患、腎疾患、消化器系の疾患、慢性的な栄養不足、炎症性疾患などが関与することが多いです。
この状態は、単にアルブミンが不足するだけでなく、体全体の健康状態を示す指標にもなります。したがって、低アルブミン血症が見つかった場合は、その背景にある病気や原因を特定し、適切な治療を受けることが重要です。

低アルブミン血症の原因

低アルブミン血症の原因には、大きく分けて三つのメカニズムが関与しています。まず、肝臓でのアルブミンの合成が低下することが挙げられます。アルブミンは肝臓で作られるため、肝硬変や慢性肝炎、肝不全などの肝疾患では、アルブミンの産生が減少します。肝機能が低下すると、アルブミンだけでなく、血液凝固因子やその他のタンパク質の合成も低下し、出血しやすくなるなどの症状が現れることがあります。
次に、アルブミンが過剰に消費または分解される場合も、低アルブミン血症の原因となります。重度の炎症や感染症、がん、火傷などの状態では、体が大量のタンパク質を必要とし、アルブミンの分解が進みます。また、慢性疾患による持続的な炎症もアルブミンの消費を増やす要因となります。特にがん患者では、炎症や腫瘍の影響でアルブミンの合成が抑制されることがあり、低アルブミン血症が進行することがあります。
さらに、アルブミンが異常に失われることも考えられます。腎臓の病気であるネフローゼ症候群では、尿中にアルブミンが大量に漏れ出し、血液中のアルブミン濃度が低下します。同様に、消化管の異常によってアルブミンが過剰に失われることもあります。例えば、重度の下痢や腸の炎症性疾患(クローン病や潰瘍性大腸炎など)では、腸からのタンパク質の漏出が増加し、アルブミンの低下を引き起こします。

低アルブミン血症の前兆や初期症状について

低アルブミン血症の初期症状は、比較的緩やかに進行することが多いため、自覚しにくい場合があります。しかし、アルブミンが低下すると、体内の水分バランスが崩れるため、さまざまな症状が現れることになります。最も特徴的なのは、むくみ(浮腫)です。血液中のアルブミン濃度が低くなると、血管内の水分を保持する力が弱まり、余分な水分が組織に移動しやすくなります。その結果、特に足や顔がむくみやすくなります。むくみが進行すると、手足が腫れたり、靴がきつく感じられることもあります。
さらに、低アルブミン血症が進行すると、腹水や胸水が溜まることがあります。これは、体内の水分が血管外に漏れ出しやすくなるために起こるもので、重症化すると呼吸困難を引き起こすこともあります。また、筋力の低下や全身の倦怠感、食欲不振なども見られることがあります。特に高齢者では、栄養不足が進行すると体重減少や免疫力の低下が起こり、感染症にかかりやすくなるため注意が必要です。

低アルブミン血症の検査・診断

低アルブミン血症の診断には、血液検査が基本となります。血清アルブミン濃度を測定し、4.0 g/dL未満であれば低アルブミン血症と診断されます。さらに、低アルブミン血症の原因を特定するために、肝機能検査、腎機能検査、尿検査、炎症マーカーの測定などが行われます。
肝臓の異常が疑われる場合は、AST(GOT)やALT(GPT)、γ-GTP、ビリルビンなどの肝機能関連の項目を調べます。一方、腎臓の病気が関与している可能性がある場合は、尿タンパクの測定やクレアチニン、BUN(尿素窒素)などの腎機能検査が行われます。また、慢性的な炎症が原因となる場合もあるため、CRP(C反応性タンパク)や白血球数などを確認することもあります。

低アルブミン血症の治療

低アルブミン血症の治療は、原因に応じて異なります。まず、栄養不足が原因の場合は、十分な食事を摂取することが重要です。特に、タンパク質を多く含む食品(肉、魚、卵、大豆製品など)を適量摂取し、体内のアルブミンを増やすことが求められます。重度の栄養障害がある場合は、栄養補助食品や経管栄養、点滴による栄養補給が行われることもあります。
肝疾患が原因の場合は、肝機能の改善を目的とした治療が必要です。例えば、肝硬変の進行を抑えるための薬物療法や食事療法が行われることがあります。腎疾患が関与している場合は、タンパク質の尿中漏出を抑える治療や、場合によっては透析治療が必要になることもあります。
また、炎症性疾患が原因である場合は、基礎疾患の治療が優先されます。例えば、関節リウマチやがんが原因の場合は、それに対する適切な治療が低アルブミン血症の改善につながります。

低アルブミン血症になりやすい人・予防の方法

低アルブミン血症になりやすいのは、高齢者慢性疾患を持つ人栄養摂取が不十分な人です。予防のためには、バランスの良い食事を心がけ、適度な運動を取り入れることが重要です。また、定期的な健康診断を受け、肝臓や腎臓の機能に異常がないかを確認することも大切です。特に高齢者は、食欲が低下しやすいため、無理のない範囲で栄養をしっかり摂取することが予防につながります。


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