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慢性硬膜下血腫
勝木 将人

監修医師
勝木 将人(医師)

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2016年東北大学卒業 / 現在は諏訪日赤に脳外科医、頭痛外来で勤務。 / 専門は頭痛、データサイエンス、AI.

慢性硬膜下血腫の概要

慢性硬膜下血腫(Chronic Subdural Hematoma, CSDH)は、脳を覆う硬膜と脳の表面の間に血液がゆっくりと溜まる状態を指します。慢性硬膜下血腫は特に高齢者に多く見られ、アルコール摂取や抗血栓薬の内服がリスクを上昇させます。 一般的に軽く頭をぶつけるといった軽度と言われる頭部外傷の後、血液がゆっくりと数週間から数ヶ月にわたって溜まり、脳を圧迫することで症状が緩やかに進行します。頭をぶつけたことも覚えていない方も少なくなく、原因がはっきりしない場合もあります。脳を血腫が圧迫する影響で認知機能の低下や運動機能の障害が引き起こされることがあります。ほとんどが片側に生じますが、両側性に生じることもあります。

治療は病気の程度によりますが、内服薬だけでは治療ができないことも多く、手術が必要になります。手術は局所麻酔で可能なことが多く、頭蓋骨に1cm程度の穴を開けて、そこから血腫を洗い流すドレナージを行います。通常は手術で症状は改善することがほとんどですが、5〜10%で血腫が再度溜まり、再手術が必要になる場合があります。

慢性硬膜下血腫の原因

慢性硬膜下血腫の主な原因は、頭部外傷です。特に高齢者では脳が萎縮するため、脳と硬膜の間に隙間ができやすく、この部分の小さな血管が破れて出血しやすくなるとされています。また、軽微な外傷でも血管が破れることがあり、その結果、慢性的に少量の出血が続くことがあります。さらに、抗凝固薬や抗血小板薬の使用も慢性硬膜下血腫のリスクを高めます。これらの薬剤は血液の凝固を防ぐため、出血が止まりにくくなり、血腫が形成されやすくなります。

慢性硬膜下血腫の前兆や初期症状について

慢性硬膜下血腫の初期症状は多岐にわたり、ほかの疾患と紛らわしいことがあります。一般的な症状には、頭痛、認知機能の低下、意識障害、手足の麻痺、歩行困難、言語障害などが含まれます。これらの症状は緩やかに進行するため、発症から診断までに時間がかかることがあります。認知症や歩行障害のための詳しい検査を進める中で見つかることもあります。特に認知症の中でも治療が可能な疾患の代表ですので、診断された場合は脳外科を受診し、治療についてぜひ相談してみてください。

慢性硬膜下血腫の検査・診断

診断には主に画像診断が用いられます。CTやMRIは、脳内の異常を迅速に見つけることができます。血腫は三日月状に映ることが多く、これらの画像診断により、血腫の大きさや位置を正確に把握することができます。症状が強い場合や、脳の圧排が強い場合などは治療を急ぐ場合もあります。

慢性硬膜下血腫の治療

慢性硬膜下血腫の治療は、症状の重症度や患者さんの全身状態に応じて異なります。治療法としては以下の方法がありますが、基本的には手術により血腫を除去します。歩行障害を伴うこともあるため、入院で治療を行う場合があります。血腫が溜まって診断がつくまでに時間がかかり、下肢の筋力が低下していることもあります。そのため手術後にリハビリが必要になり、程度によってはリハビリテーションを行うためによりリハビリテーションに特化した病院に転院になる場合もあります。

保存的治療

軽度の症状や血腫が小さい場合、経過観察を行いながら自然吸収を期待することがあります。ほかにも漢方薬の内服などが行われることがあります。この場合、定期的な画像診断を行い、血腫の変化を観察する必要があります。

外科的治療

血腫が大きく症状が顕著な場合や保存的治療が効果を示さない場合、外科的治療が選択されます。一般的には、穿頭血腫除去術が行われます。これは、局所麻酔で頭蓋骨に小さな穴を開けて血腫を排出する方法です。また、場合によっては全身麻酔を選択することもあります。

慢性硬膜下血腫になりやすい人・予防の方法

慢性硬膜下血腫になりやすい人には、以下のような特徴があります。

高齢者 脳の萎縮により、脳と硬膜の間のスペースが広がり、血管が破れやすくなります。 飲酒 長期間に及ぶ飲酒は脳の萎縮をきたすほか、飲酒により酩酊状態になると転倒するリスクも高まります。飲酒の際は適度な量にとどめておくことが重要です。 抗凝固薬や抗血小板薬の使用者 これらの薬剤は血液の凝固を防ぐため、出血のリスクが高まるとされています。 過去に頭部外傷を受けた人 特に軽微な外傷でも出血が引き起こされる可能性があります。

予防の方法としては、以下の点が重要です。

頭部外傷の防止 特に高齢者は転倒防止のために住環境を整えることが重要です。例えば、滑りにくい床材の使用や手すりの設置などが有効です。 薬物療法の見直し 抗凝固薬や抗血小板薬を使用している場合、定期的に医師と相談し、適切な用量や使用期間を確認することが重要です。ただし、そもそも脳梗塞や心筋梗塞といった重篤な疾患の予防のために内服されている場合も多く、内服薬の見直しは必ず主治医と相談しながら行ってください。 定期的な健康診断 特に高齢者は定期的に脳の健康状態をチェックするための定期的な受診が推奨されます。

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