

監修医師:
本多 洋介(Myクリニック本多内科医院)
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群馬大学医学部卒業。その後、伊勢崎市民病院、群馬県立心臓血管センター、済生会横浜市東部病院で循環器内科医として経験を積む。現在は「Myクリニック本多内科医院」院長。日本内科学会総合内科専門医、日本循環器学会専門医、日本心血管インターベンション治療学会専門医。
目次 -INDEX-
閉塞性動脈硬化症(末梢動脈疾患)の概要
閉塞性動脈硬化症(末梢動脈疾患)は、足の動脈が狭くなったり詰まったりして血液の流れが悪くなり、足にさまざまな症状を引き起こす病気です。以前は「閉塞性動脈硬化症」あるいは「下肢慢性動脈閉塞症」と呼ばれていましたが、現在はその原因に関係なく、国際的に「下肢動脈疾患(Lower extremity arterial disease)」に統一されています。喫煙と関係の深い「バージャー(Buerger)病」も末梢動脈疾患に含まれます。閉塞性動脈硬化症(末梢動脈疾患)の原因
閉塞性動脈硬化症の主な原因は、動脈硬化によって腹部大動脈から下肢動脈が詰まることです。動脈硬化とは、動脈の壁にコレステロールやほかの脂肪性物質が蓄積し、血管が狭くなる状態です。動脈硬化のリスク因子
高血圧 高血圧は動脈の内壁に負担をかけ、血管の損傷を引き起こします。これにより動脈硬化の進行が早まります。 高脂血症 血液中のコレステロールやトリグリセリドの濃度が高いと、動脈の内壁に脂肪が蓄積しやすくなります。 糖尿病 糖尿病は血管の健康を損なうため、動脈硬化のリスクが大幅に増加します。 喫煙 喫煙は化学物質により、動脈の内壁を直接的に損傷し、動脈硬化の進行を加速させます。 肥満 過体重や肥満は、高血圧や高脂血症、糖尿病などほかのリスク因子を引き起こし、動脈硬化のリスクを高めます。閉塞性動脈硬化症(末梢動脈疾患)の前兆や初期症状について
初期の症状は、しばらく歩行した後のお尻や太もも、ふくらはぎの痛みで、歩行中に痛みが出ることで、間欠性跛行と呼ばれます。これは、歩くことで足の筋肉が酸素を必要としますが、動脈が狭くなっているために十分な血液が供給されないために起こります。症状の進行
- 痛みなく歩行できる距離が短くなる
- 安静時にも痛みが持続
- 足の指の傷が治りにくくなる
- 壊死(組織が死ぬこと)
閉塞性動脈硬化症(末梢動脈疾患)の検査・診断
閉塞性動脈硬化症の診断は、まず足の動脈の脈を触れることや足の血圧を測定することから始まります。最近では、簡便に足の血圧を測定できる装置が多くの総合病院やクリニックで利用されています。詳細な検査
超音波検査(ドプラ超音波検査) 血流の速度や動脈の狭窄・閉塞の程度を視覚的に評価するための検査です。ゼリーを塗って超音波で診るため、非侵襲的な検査と言えます。 動脈造影検査 造影剤を用いて血管の内部構造を詳細に描出し、狭窄や閉塞の部位を特定します。 CTやMRIを用いた血管撮影 非侵襲的に詳細な画像が得られ、動脈の状態をより正確に評価することができます。閉塞性動脈硬化症(末梢動脈疾患)の治療
治療には、まず動脈硬化の進行を防ぐための生活習慣の改善が重要です。具体的には、禁煙、適切な食事、運動習慣の確立、血圧や血糖、コレステロールの管理が含まれます。薬物療法
抗血小板薬 血小板の働きを抑え、血栓の形成を防ぐ薬です。代表的なものにアスピリンやクロピドグレルがあります。 降圧薬 血圧を下げる薬で、高血圧の管理に用いられます。ACE阻害薬やARB(アンジオテンシンII受容体拮抗薬)が含まれます。 スタチン コレステロールを下げる薬で、動脈硬化の進行を抑える効果があります。シンバスタチンやアトルバスタチンなどがあります。 さらに、症状が進行している場合や薬物療法で効果がない場合には、カテーテル治療やバイパス手術が検討されます。カテーテル治療
動脈内に小さな風船を挿入して膨らませることで狭窄部位を広げたり、ステントと呼ばれる金属製のチューブを留置して狭窄を解除し、血管を内側から支えて開存した状態を保ちます。バイパス手術
人工血管や自分の他の部位の血管を使用して、詰まった動脈を迂回する新しい血流経路を作る手術です。 これらの治療法は、個々の患者さんの症状や健康状態に応じて適切に選択されます。閉塞性動脈硬化症(末梢動脈疾患)になりやすい人・予防の方法
閉塞性動脈硬化症になりやすい人は、喫煙者、高血圧、高脂血症、糖尿病などのリスク因子を持つ人です。これらのリスク因子があると、動脈が硬くなりやすくなります。予防のための生活習慣
予防には、いくつかの重要な生活習慣の改善が必要です。以下に、具体的な対策を詳しく説明します。 禁煙 禁煙は動脈硬化の進行を防ぐ最も効果的な方法の一つです。喫煙は動脈の内壁にダメージを与え、プラークの形成を促進します。喫煙を続けると、動脈が硬くなり、血流が悪化するリスクが高まります。禁煙をサポートするためのプログラムや医師の指導を受けることが推奨されます。 適切な血圧管理 高血圧は動脈の壁を傷つけ、動脈硬化を進行させます。血圧を適切に管理するためには、減塩食やバランスの取れた食事、適度な運動が重要です。また、医師の指導のもとで降圧薬を使用することもあります。定期的に血圧を測定し、管理することが大切です。 血糖値の管理 糖尿病は動脈硬化のリスクを大幅に増加させます。血糖値を適切に管理するためには、バランスの取れた食事、適度な運動、そして医師の指導のもとで薬物療法を行うことが必要です。特に、糖尿病患者さんは定期的な血糖値のチェックが重要です。 コレステロール値の管理 高脂血症は動脈の内壁にプラークを形成しやすくします。食事療法では、飽和脂肪やトランス脂肪を避け、果物、野菜、全粒穀物、魚などを多く含む食事を心がけることが大切です。また、スタチンなどの薬物療法が必要な場合もあります。 定期的な運動 運動は血流を改善し、動脈の柔軟性を保つ効果があります。週に少なくとも150分の中程度の有酸素運動(例:速歩き、水泳、サイクリング)を行うことが推奨されます。運動は心臓や血管の健康を維持するだけでなく、体重管理にも役立ちます。 健康的な食事の摂取 健康的な食事は、動脈硬化の予防に重要な役割を果たします。特に、果物や野菜、全粒穀物、魚を多く含む食事は、動脈の健康を保つために有益です。飽和脂肪やトランス脂肪を多く含む食品は避けるべきです。これらの脂肪は動脈の壁にプラークを形成しやすくします。オリーブオイルやナッツ、魚油に含まれる不飽和脂肪酸は、動脈の健康を保つ助けとなります。 体重管理 適切な体重を維持することは、動脈硬化の予防に重要です。肥満は高血圧、高脂血症、糖尿病のリスクを高めるため、動脈硬化のリスクも増加します。バランスの取れた食事と定期的な運動を組み合わせて、健康的な体重を維持することが推奨されます。 ストレス管理 ストレスは血圧を上昇させ、動脈硬化のリスクを高める可能性があります。リラクゼーション法(ヨガ、瞑想、深呼吸など)や趣味の活動、適度な休息を取り入れることでストレスを管理することが大切です。 定期的な健康診断 定期的な健康診断を受けることで、動脈硬化の早期発見と早期治療が可能になります。健康診断では、血圧、血糖、コレステロール値のチェックが行われ、必要に応じて医師の指導を受けることができます。これにより、早期にリスク因子を管理し、動脈硬化の進行を防ぐことができます。 以上のように、閉塞性動脈硬化症(末梢動脈疾患)は、生活習慣の改善と適切な医療管理によって予防・治療が可能な病気です。定期的なチェックと早期対応が、健康を維持する鍵となります。参考文献




