

監修医師:
久高 将太(琉球大学病院内分泌代謝内科)
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琉球大学医学部卒業。琉球大学病院内分泌代謝内科所属。市中病院で初期研修を修了後、予防医学と関連の深い内分泌代謝科を専攻し、琉球大学病院で内科専攻医プログラム修了。今後は公衆衛生学も並行して学び、幅広い視野で予防医学を追求する。日本専門医機構認定内科専門医、日本医師会認定産業医。内分泌代謝・糖尿病内科専門医。
目次 -INDEX-
低血圧の概要
低血圧は、血圧が正常範囲よりも低い状態を指します。血圧とは、心臓が血液を全身に送り出す際に血管壁にかかる圧力のことで、通常は収縮期血圧(上の血圧)と拡張期血圧(下の血圧)の二つで表されます。低血圧に明確な基準はなく、一般的に収縮期血圧が100mmHg以下を低血圧とすることが多いです。血圧が低いと、全身の臓器や組織に十分な血液が供給されにくくなり、めまいや疲労感、さらには失神などの症状を引き起こすことがあります。 低血圧は、時間経過によって急性低血圧と慢性低血圧の二種類に分類されます。急性低血圧は、突然の血圧低下によって生じるもので、ショック状態や脱水症状、あるいは薬の副作用などが原因となります。一方、慢性低血圧は、長期間にわたって血圧が低い状態が続くもので、特に若い女性や痩せ型の人に多く見られます。慢性低血圧は、日常生活において特に大きな問題を引き起こすことはあまりありませんが、症状が強く、日常生活に支障をきたす場合は治療が必要です。 低血圧は、高血圧と比較して一般的に軽視されがちですが、症状によっては生活の質を低下させかねません。低血圧の症状に悩まされている場合は、医師に相談することが重要です。低血圧の原因
低血圧の原因は多岐にわたりますが、大きく分けて一次性低血圧、二次性低血圧、起立性低血圧に分類されます。一次性低血圧
一次性低血圧は原因が明確ではなく、体質や遺伝的要因が関与していると考えられている低血圧です。本態性低血圧とも呼ばれていて、低血圧の約9割がこのタイプと言われており、若い女性や痩せ型の人に多く見られます。二次性低血圧
二次性低血圧は、特定の病気や状態が原因で生じる低血圧です。症候性低血圧とも呼ばれており、心疾患や内分泌疾患、神経疾患、あるいは重篤な感染症などが原因となります。また、脱水症状や出血、大量の発汗などによって体内の血液量が急激に減少することでも起こり得ます。加えて、特定の薬物、例えば降圧薬や利尿薬、抗うつ薬などで引き起こされる可能性がある低血圧です。起立性低血圧
起立性低血圧は、急に立ち上がったり、身体を起こしたりした時に血圧が下がり、めまいや立ちくらみを起こす低血圧です。加齢により増加することが分かっており、医療機関を受診している高齢者の5〜30%にみられています。起立性低血圧は、自律神経の機能低下や血液循環の調整機能の低下が関与しており、転倒やけがのリスクを高めるため注意が必要です。 低血圧の原因を特定するためには、詳細な問診と各種検査が重要です。患者さんの生活習慣や既往歴、現在の服薬状況などを詳しく聞き取り、必要に応じて血液検査や心電図、エコー検査などを実施します。これにより、低血圧の原因を突き止め、適切な治療方法を見つけ出すことが可能となります。低血圧の前兆や初期症状について
低血圧の前兆や初期症状は、個人差があるものの、次のような症状が現れます。一般的に多い症状は、めまいや立ちくらみです。特に急に立ち上がった際に血圧が一時的に低下する起立性低血圧の場合、この症状が顕著に現れることがあります。これに伴い、頭がぼんやりする感じや集中力の低下も見られることがあります。 また、疲労感や倦怠感も低血圧でよく見られる初期症状です。体内の臓器や筋肉に十分な酸素や栄養が供給されないため、体が常にだるいと感じます。さらに、冷え性や手足の冷感も低血圧に関連する症状の一つです。血流が悪くなることで末梢の血液循環が低下し起こり得るのです。 時には、動悸や息切れを感じることもあります。これらの症状は、心臓が効率的に血液を送り出そうとするために発生します。また、消化不良や食欲不振などの消化器系の症状が現れることもあり、これが原因で体重減少が見られる場合もあります。 低血圧の症状は一時的なものから慢性的なものまでさまざまであり、その強さも人によって異なります。症状が軽度であれば、特に治療の必要はないこともありますが、日常生活に支障をきたす場合は、早めに医師に相談しましょう。低血圧が心配な場合、内科や循環器科の診察を推奨します。低血圧の検査・診断
低血圧は問診、血圧測定、血液検査、心電図検査やエコー検査などの検査を実施し、検査結果をもとに診断します。具体的には、以下の通りです。問診
低血圧の検査・診断は、詳細な問診から始まります。医師は、患者さんの症状の出現頻度や状況、既往歴、現在の服薬状況などを詳しく聞き取り、低血圧の原因や関連する要因を特定する手がかりを得ます。血圧測定
血圧測定も重要な検査です。血圧は、安静時の状態で測定することが基本ですが、起立性低血圧が疑われる場合は、立ち上がった直後の血圧も測定します。これにより、体位の変化による血圧の変動を確認できます。血圧測定は、一般的な診療所や病院で簡単に行えるため、初期診断の重要な手段です。血液検査
さらに、低血圧の原因を特定するために血液検査が行われます。血液検査では、貧血や電解質異常、ホルモンバランスの乱れなどがないかを確認します。特に、甲状腺機能や副腎機能の異常が低血圧の原因となり得るため、これらのホルモン検査は重要です。心電図検査やエコー検査
心電図検査や心エコー検査も低血圧の診断に役立ちます。これらの検査では、心臓の拍動が不規則ではないか、心筋の収縮力が低下していないかなど、心臓の機能や構造の異常の有無が把握可能です。心電図やエコー検査で異常が見られた場合、心臓が低血圧の原因である可能性があります。低血圧の治療
低血圧の治療は、原因や症状の程度に応じて異なります。本記事では、生活習慣の改善や、弾性ストッキングの着用といった非薬物療法の治療と、薬を使う薬物療法についてご紹介します。生活習慣の改善
低血圧の治療は、生活習慣の改善が基本です。適度な運動を取り入れることで、血液循環が改善され、低血圧の症状が軽減しやすくなります。また、バランスの取れた食事を心がけることも重要です。特に、塩分や水分を適切に摂取することが推奨されます。他にも、座った状態や寝た状態から立ち上がるときには、頭を下げてゆっくりと立ち上がるのを意識するとよいでしょう。弾性ストッキングの着用
場合によっては弾性ストッキングの使用も効果的です。弾性ストッキングは、血液が足の静脈から心臓まで戻るのを補助する目的で装着するもので、ふくらはぎから太ももにかけて着用します。ただし、適切なサイズを選択しなければ、加圧が十分にかからない可能性があるので、サイズを選ぶ際は注意しましょう。薬物療法
薬物療法は症状が重度で生活に支障をきたす場合に行われます。例えば、血圧を上昇させる効果がある薬剤や、血管を収縮させて血圧を高める薬剤が使用されることがあります。これらの薬物は、医師の指示に従って正しく使用することが重要です。低血圧になりやすい人・予防の方法
低血圧になりやすい人は、性別や体質、遺伝的な要因などの特徴があります。また、生活習慣を整えることは低血圧の予防につながります。具体的に確認していきましょう。低血圧になりやすい人の特徴
低血圧になりやすい人には、いくつかの特徴やリスクファクターがあります。まず、若い女性や痩せ型の人は低血圧になりやすいです。また、遺伝的な要因も関与しており、家族に低血圧の方がいる場合、その傾向が受け継がれることがあります。 また、長時間の立ち仕事をしている人や、運動不足の人も低血圧に影響しやすいでしょう。これらの人々は、血液循環が悪くなりがちであり、結果として低血圧の症状が現れることがあります。さらに、特定の持病を持つ人、例えば甲状腺機能低下症や糖尿病なども低血圧のリスクが高まります。低血圧の予防二次性低血圧はそれぞれの疾患の予防となりますので、この章では一次性低血圧と起立性低血圧の予防についてご紹介します。
予防には、日常生活での対策が必要です。まず、規則正しい生活を送ることが基本となり、毎日同じ時間に起床し、適度な運動を行うことで血液循環が改善されます。夜更かしは低血圧の症状を悪化させるため、7〜8時間は睡眠時間が取れるように意識しましょう。また、バランスの取れた食事を心がけることも大切です。特に、塩分や水分を適切に摂取することで血圧を安定させることができます。朝食を食べるよう習慣付け、気温が高い日は味噌汁や漬け物などを意識して食べると、低血圧の予防効果が期待できるでしょう。 また、日常生活での注意点としては、急な立ち上がりを避けることが挙げられます。立ち上がる際はゆっくりと動作することで、起立性低血圧を予防できます。特に高齢者や持病を持つ人は血液循環が悪くなっている方が多いため、立ち上がる前にふくらはぎや太ももなどの足の筋肉を動かすようにしましょう。めまいがした時は、倒れて怪我につながる可能性もあるので、すぐに座れる状況や手を付ける環境を整えておくことが推奨されます。参考文献




