

監修医師:
中路 幸之助(医療法人愛晋会中江病院内視鏡治療センター)
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胆のう摘出後症候群の概要
胆のう摘出後症候群とは、胆石や胆のう炎などで胆のうを取り除く手術をした後も、胆石があった時と同じような症状が続いたり、新たに別の症状があらわれたりする状態です。お腹の痛みや不快感、脂っこい食べ物を食べたときの不調、吐き気、胸やけ、お腹の張り、下痢などの症状があらわれます。症状は手術直後に出ることもあれば、数ヵ月から数年後に出ることもあります。
症状は胆嚢摘出術をした30〜40%の患者に見られます。自然治癒するケースもありますが、発症者の半数は薬物療法や手術による治療の適用になります。

胆のう摘出後症候群の原因
胆のう摘出後症候群にはさまざまな原因があります。
胆のうは肝臓でつくられた胆汁を貯める役割を持ち、食事のときに胆管を介して十二指腸に放出させて脂肪の吸収や消化を助けます。
体内の胆のうが摘出された場合、胆管内の石の残存や新しい胆石の生成、胆管の狭窄、胆汁の漏れ、十二指腸の開口部の狭窄、胆汁の流れを調整する筋肉の機能不全などが生じることがあります。
それにより胆汁の流れ方に異常が生じ、胆汁が過剰に十二指腸に流れ込んだり、流れが制限されたりして、さまざまな症状を引き起こします。
また、膵臓の炎症、食道への胃液の逆流、過敏性腸症候群、胃や十二指腸の潰瘍、精神的なストレス、神経の障害などによっても起こる場合があります。
胆のう摘出後症候群の前兆や初期症状について
胆のう摘出後症候群の多くに共通して生じるのが、お腹の右上や上部の痛みです。この痛みは食事の後(とくに脂っこいものを食べた後)に強くなることが多く、背中に広がることもあります。痛みの強さは軽い不快感から激しい痛みまでさまざまで、数分から数時間続くことがあります。
吐き気や嘔吐も頻繁に起こります。とくに脂っこい食事を摂った後に悪化することが多いです。胸やけや消化不良の感覚も一般的で、食べ物がうまく消化されていない感じがしたり、胃の部分が焼けるような感覚があったりします。
お腹の張りやガスが増えることも多く、「おなかがゴロゴロする」と表現する人もいます。また、食後の下痢も特徴的な症状です。便が普段より水っぽく、薄い色になることもあります。
胆管が詰まっている場合は、まれに皮膚や白目が黄色くなる(黄疸)こともあります。細菌に感染している場合は、発熱によって悪寒や震えをともなうこともあります。
胆のう摘出後症候群の検査・診断
胆のう摘出後症候群は血液検査や画像検査を行い、症状の原因となる病気がなく、原因がはっきりしない場合に診断が下されます。
血液検査では肝臓や膵臓の状態を確認し、超音波検査やCT検査で各臓器の状態を調べます。さらに詳しく調べる必要がある場合は、MRI検査で胆管や膵管の画像を撮ったり、内視鏡を使って胆管や膵管に造影剤を入れて調べる検査(ERCP)などを行うこともあります。
胆のう摘出後症候群の治療
胆のう摘出後症候群の治療は、主に薬物療法が行われますが、薬物療法での改善が見られない場合は手術が必要になります。
薬物療法
症状に応じた薬による治療が行われます。下痢が主に見られる場合は、腸の中で余分な胆汁酸と結合して便と一緒に排出させる薬を使い、下痢や腹痛を軽減します。
腹痛や腹部のけいれんには、腸の筋肉の収縮を和らげる薬が使われます。消化不良の症状には消化を助ける薬が使用され、消化酵素を補充し、食べ物の消化と栄養吸収を助けます。
胸やけや胃の不快感には、胃酸の分泌を抑えたり中和したりする薬が処方されます。
手術治療
手術は主に患者への負担が少ない内視鏡治療で行います。内視鏡治療では口から内視鏡を入れ、胆管の異常を直接確認しながら治療します。胆管に胆石がある場合は取り除き、胆管が狭くなっている場合は広げる処置を行います。また、胆汁の流れを改善するための処置を行うこともあります。
胆のう摘出後症候群になりやすい人・予防の方法
胆のう摘出後症候群の発症リスクが高い特定の人はいません。
予防には、手術前の正確な検査が重要です。胆管に胆石がありそうな場合は、手術前か手術中に調べて、あれば取り除きます。手術後はできるだけ脂分の多い食事を避け、経過とともに徐々に普通の食事に戻しましょう。
もし、胆のうを取った後に新しい症状が出たり、前と同じような症状が続いたりする場合は、早めに医師に相談することが大切です。
参考文献




