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本多 洋介

監修医師
本多 洋介(Myクリニック本多内科医院)

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群馬大学医学部卒業。その後、伊勢崎市民病院、群馬県立心臓血管センター、済生会横浜市東部病院で循環器内科医として経験を積む。現在は「Myクリニック本多内科医院」院長。日本内科学会総合内科専門医、日本循環器学会専門医、日本心血管インターベンション治療学会専門医。

B型肝炎の概要

B型肝炎は、B型肝炎ウイルス(HBV:B type hepatitis)にさらされる肝臓の感染症です。このウイルスに感染すると、肝臓が炎症を起こし、急性(短期間)または慢性(長期間)に肝臓が障害されます。B型肝炎は世界中で診断されており、特にアジアやアフリカで高い感染率となっています。

B型肝炎は、感染していることに気づかないことも多い傾向です。症状がない場合でも、ウイルスは肝臓にダメージを与え続けています。非活動性キャリアと呼ばれる状態では、ウイルスが体内に存在するものの、肝臓に大きなダメージを与えていない状態です。しかし、この状態でも肝細胞癌(肝臓の癌)を発症するリスクがあるため、定期的な検査と経過観察が重要となってきます。

治療方法の一つにインターフェロン治療があります。この治療は24〜48週間続けることが一般的で、特にペグインターフェロン治療では48週間の投与が推奨されています。インターフェロンはウイルスの増殖を抑える効果があり、治療の余地があります。

B型肝炎の原因

B型肝炎の主な原因は、B型肝炎ウイルス(HBV)の感染です。このウイルスは、主に血液や体液を介して感染します。感染経路としては、以下のようなものがあります。

母子感染 出産時に母親から赤ちゃんに感染することがあります。 注射や医療機器の使い回し 汚染された注射針や医療機器を使用することで感染します。 性行為 感染者との性行為によって感染が起こります。 感染者との直接的な血液や体液の接触 傷口などから感染が起きることがあります。

B型肝炎の前兆や初期症状について

B型肝炎の初期症状は、ほかの病気と区別がつきにくいことがあります。以下のような症状が見られることがあります。

倦怠感(だるさや疲れやすさ) 疲労感やだるさが続くことがあります。 食欲不振 食欲がなくなることがあります。 吐き気や嘔吐 消化管の不快感や実際に吐いてしまうことがあります。 黄疸(皮膚や白目が黄色くなる) 肝臓の機能に影響を与えることで、ビリルビンという物質が体内に蓄積し、皮膚や白目が黄色くなります。 腹痛 肝臓がある右上腹部に痛みを感じることがあります。

これらの症状が現れた場合は、早めに医療機関で検査を受けてください。B型肝炎は無症状で進行することも多いため、症状がない場合でも定期的な検査が必要となることもあります。

B型肝炎の前兆や初期症状が見られた場合に受診すべき診療科は、肝臓内科です。B型肝炎は肝臓のウイルス感染症であり、肝臓内科で診断と治療が行われています。

B型肝炎の検査・診断

B型肝炎の診断には、主に血液検査が用いられます。以下の項目を検査します。

HBs抗原(HBsAg) ウイルスの存在を確認するための検査です。HBsAgが陽性であれば、感染していることを示します。 HBs抗体(Anti-HBs) ウイルスに対する免疫があるかどうかを確認するための検査です。過去に感染したか、ワクチン接種により免疫ができていることを示します。 HBc抗体(Anti-HBc) 感染したことがあるかどうかを確認します。IgM抗体が陽性であれば急性感染、IgG抗体が陽性であれば過去の感染を示します。 HBV DNA量 体内のウイルス量を測定します。ウイルス量が多いほど感染が進行していることを示します。

これらの検査結果を総合して、感染の有無や進行度を評価します。追加の検査として以下の方法も用いられます。

超音波検査 肝臓の状態をリアルタイムで確認できます。特に肝臓の形状や大きさ、腫瘍の有無を調べるのに有用です。 CT検査(コンピュータ断層撮影) より詳細な肝臓の画像を取得し、腫瘍やその他の異常を確認します。CTスキャンはX線を使用して、肝臓の詳細な断層画像を提供します。これにより、肝臓の構造的な異常や病変、腫瘍の有無を評価することができます。また、CTスキャンは血管の状態や肝硬変の評価にも有効です。 MRI検査(磁気共鳴画像法) CTと同様に詳細な画像を提供しますが、異なる技術を使用しています。MRIは強力な磁場とラジオ波を使用して、体内の組織を詳細に描写します。肝臓の腫瘍や炎症、線維化の評価に特に有用であり、肝臓の組織の違いを明確にすることで、CTスキャンでは見逃される可能性のある病変を検出できます。MRIは放射線を使用しないため、被曝を避けることもできます。 肝生検(肝臓の組織を取り出して調べる) 最も正確に肝臓の状態を評価できる方法で、肝炎の重症度や進行度を確認します。針などを刺して組織のサンプルを採取し炎症の程度や肝細胞の損傷、線維化の有無を詳細に評価できます。

これらの検査は、感染の有無を確認し、感染が急性か慢性か、さらには肝臓のダメージの程度を評価するのに重要です。

B型肝炎の治療

B型肝炎の治療には、主に抗ウイルス療法肝庇護療法(かんひごりょうほう)の2つがあります。

抗ウイルス療法

以下の2種類の薬があります。

核酸アナログ製剤 ウイルスの増殖を抑える効果があります。 インターフェロン製剤 身体の免疫力を高め、ウイルスと戦う力を高めます。

これらの治療を長期間続けることで、肝炎の症状を抑え、肝癌の予防が期待できます。

核酸アナログ製剤

核酸アナログ製剤にはいくつかの種類があり、それぞれの特徴があります。

エンテカビル ウイルスの増殖を強力に抑制する効果があります。長期間使用することでウイルスが耐性を持つリスクがありますが、肝臓の炎症を抑えるのに有効です。 テノホビル エンテカビルと同様に強力な抗ウイルス効果を持ち、特にウイルス耐性を防ぐ効果があります。 ラミブジン 以前から使用されている薬剤で、効果はありますが、長期間の使用でウイルスが耐性を持つリスクがあります。

インターフェロン治療

インターフェロン治療には、標準的なインターフェロンとペグインターフェロンの2種類があります。

標準的なインターフェロン 通常、週に3回注射を行います。治療期間は通常6ヶ月から1年です。 ペグインターフェロン 週に1回の注射で済むため、患者さんの負担が少ないです。治療期間は通常1年です。

治療の継続と中止

治療を中止すると、ウイルスの再増殖や肝炎の悪化が起こる可能性があるため、医師の指示に従い、適切な治療を続けることが大切です。治療を長期間続けることで、肝臓の炎症や損傷を抑え、肝癌の発生リスクを低減する効果が期待できます。

肝庇護療法

肝臓が破壊されるのを防ぎ、肝機能を改善させることを目的とした治療法です。 原因であるB型肝炎ウイルス(HBV)を直接攻撃するわけではないので、長期間続ける必要があります。 代表的なものに、グリチルリチン製剤、ウルソデオキシコール酸、小柴胡湯(しょうさいことう)があります。

B型肝炎になりやすい人・予防の方法

B型肝炎に感染しやすい人は、以下のような特徴があります。

  • 医療従事者や介護従事者
  • 性行為の頻度が高い人
  • 注射薬を使用する人
  • B型肝炎患者さんの家族

予防方法としては、以下のようなものがあります。

ワクチン接種 B型肝炎のワクチンを接種することで、感染を防ぐことができます。 安全な性行為 コンドームを使用することで、性行為による感染を予防できます。 医療機器の使い回しを避ける 使い捨ての注射針と医療機器を使用するようにしてください。 感染者との接触を避ける 血液や体液に触れる場合には、手袋などの防護具を使用します。

B型肝炎の予防や管理には、生活習慣の改善も必要です。以下のような対策を心がけましょう。

健康的な食事 バランスの取れた食事を心がけ、肝臓に負担をかけないようにします。アルコールの摂取は控えめにしましょう。 定期的な運動 適度な運動は免疫力を高め、全体的な健康状態を確認します。 ストレス管理 ストレスは免疫力を低下させるため、リラクゼーション法や趣味を取り入れて、ストレスを管理しましょう。

社会的支援と心理的サポート

B型肝炎に感染した場合、社会的支援や心理的サポートが受けられます。 以下のようなサポートを活用しましょう。

医療機関のサポート 定期的に医師と相談し、適切な治療とアドバイスを受けましょう。 支援グループ 同じ病気を持つ人々と情報や経験を共有することで、心理的な支えとなります。 カウンセリング 専門のカウンセラーと話すことで、安全な負担を軽減することができます。 <

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参考文献

  • 日本肝臓学会肝炎診療ガイドライン作成委員会 編「B型肝炎治療ガイドライン」2022年6月

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