大人になれば治る?小児気管支喘息の原因や治療法を徹底解説
喘息(ぜんそく)は、空気の通り道である気管や気管支が狭くなってしまうことによって引き起こされる、呼吸困難や咳などの症状です。成人では約4%、小児は約8%から10%が気管支喘息の症状がみられるといわれています。とくに小児期に多くみられる気管支喘息ですが、大人になってからの喘息と小児喘息ではいろいろと異なる点もあるのをご存知ですか。
そこでこのページでは小児気管支喘息の原因や治療法に使われる薬などについて、Medical DOC編集部がお届けします。
檜垣 博嗣 (みなみ野こどもクリニック 院長)
目次 -INDEX-
小児喘息の主な原因はアレルギー
大人の喘息のほとんどは風邪による咳やタバコの煙などによって、気管や気管支が刺激されて引き起こされるのが特徴です。対して小児喘息は、アレルギーによって引き起こされることがとても多く、それ以外にも天気や環境の変化、精神的な要因などがいくつも重なりあうことでも症状が現れます。ここでは、小児喘息を引き起こす原因となるアレルゲンにはどんなものがあるのかについて説明します。
小児喘息の原因 アレルギー
小児喘息はアトピー型と非アトピー型の2つに分類されていますが、アレルゲンと接触することで引き起こされる小児喘息がアトピー型です。アトピー型はアレルゲンとなる物質に接触することで、いつでも喘息の症状が現れてしまうのが特徴です。そして、やっかいなことに喘息の発作を引き起こすアレルゲンは、私たちが普段生活する中で身近に存在するものもたくさんあります。
家庭内にある主なアレルゲンは、ほこりやカビといったハウスダストやダニなどです。また、ペットで飼っている動物の毛もアレルゲンとなるので注意が必要です。自分の家では動物を飼っていなくとも、ペットを飼っている人に近づいただけでも喘息の症状が現れることもあります。屋外に存在するアレルゲンは、花粉(ブタクサ、ヒノキ、杉など)や昆虫などです。
食品でアレルゲンとなるものは、卵、牛乳、ナッツ類、そばなどです。このように私たちが普段生活する中には、小児喘息のアレルゲンとなりうるものがたくさん存在します。そのためアトピー型の小児喘息はとてもやっかいな病気であるといえます。
アレルギー以外の小児喘息の原因
アレルギーによって引き起こされる以外にも、小児喘息の原因となるものはたくさんあります。それではアレルギー以外にはどのようなものが小児喘息の原因となりうるのか、それぞれ詳しく紹介していきます。
運動
とくに空気の乾燥した寒い時期に注意したいのが、運動誘発性喘息と呼ばれるものです。運動誘発性喘息とは、激しい運動をすることによって気管支の粘膜が水分蒸発し、その刺激によって体内にヒスタミンなどをはじめとしたアレルギー物質が生成され、喘息の発作が引き起こされることをいいます。この運動誘発性喘息には、運動直後に発作が起きる「即時型」と運動した後8時間から12時間後に発作が起きる「遅発型」があります。
とくに遅発型は、運動会や特別なイベントなどの行事があった日の夜に多くみられるのが特徴です。運動誘発性喘息は、年長児から学童児へとお子さんが成長し、負荷の大きな運動をする機会が増えることによって発生のリスクが高まります。また、幼少期に大笑いしたり、はしゃすぎたりした時などに「コンコン」「ヒューヒュー」といった咳をしているのが多くみられる場合は、運動誘発性喘息を原因とする発作の可能性が高いといえます。
空気の汚れ
私たちの生活の中に存在するさまざまな「煙」も小児喘息を引き起こす大きな原因の一つに数えられます。これは煙が気管や気管支を通過するときに、粘膜を直接刺激することで喘息の発作を誘発してしまうためです。屋内では、タバコの煙や魚を焼いたときに出る煙、仏壇にあげた線香の煙などに注意が必要です。屋外では、自動車の排気ガスをはじめ工場から出る煙、花火の煙などに注意しましょう。
小児喘息の場合にとくに注意したいのが、タバコの煙と自動車の排気ガスです。タバコにはニコチンをはじめ200種類以上の有害物質が含まれており、その煙は小児喘息を引き起こす大きな原因となります。また、大人に比べて低い位置で呼吸をしている子供は、自動車の排気ガスを常に吸いやすい状態でもあります。そのため、自動車の交通量が多いような場所を歩くときには、とくに注意する必要があります。
天気の変化
小児喘息の場合は、アレルギーと同じくらい天気の変化に気をつける必要があります。とくに注意したいのが、春先や秋口などの季節の変わり目や台風の接近による気圧の変化の影響です。急激な気温や気圧の変化は喘息の発作を誘発する原因となります。とくに空気が乾燥している冬場は、冷たい空気によって普段よりも気管や気管支が刺激を受けやすい時期なので気をつけるようにしましょう。
小児気管支喘息の治療に使われる薬
喘息は一度発作が起こってしまうと気管や気管支が炎症して、少しの刺激でも体が過剰に反応してしまうために、発作が起こりやすくなってしまうという悪循環が生じます。そのため小児気管支喘息の治療の基本は予防することと、発作が起きたときに薬によってすぐに炎症を抑え発作を軽減することです。ここでは小児喘息の治療に使用される薬について紹介します。
薬による治療
小児喘息を治療するための薬は、内服や吸入することによって使用され、症状や状態によっては注射をおこなうこともあります。喘息発作の予防としては、アレルギーを引き起こしやすい体質を改善する働きのある、ロイコトリエン受容体拮抗薬を長期服用薬として内服し続けるのが効果的です。また、パルミコート(R)・オルベスコ(R)・フルタイド(R)・キュバール(R)などの気管支の炎症を抑える働きの強い副腎皮質ステロイド剤の使用・吸入が有効です。
また、小児喘息の発作に対して非常に有効で広く使用されているのが気管支拡張剤です。喘息による発作が起きたときに気管支拡張剤を使用すれば、すばやく気管支を拡張してくれるので呼吸がとても楽になり、発作が酷くなることを抑えることができます。この気管支拡張剤には、吸入以外にも飲み薬や貼り薬もあり、発作が起きたときにはいつでも使用することができます。しかし、気管支拡張剤を使用しているだけでは喘息を治すことはできません。喘息を治療するためには、普段から喘息を予防する薬を服用するのと同時に、上手に体調をコントロールして喘息の発作自体を起こさないようにしていく必要があります。
小児喘息の治療は予防が大切
小児喘息は実際に苦しんでいるお子さんばかりでなく、そばで見ている親御さんにもとても辛い病気です。今回このページで紹介してきたように、小児喘息の原因にはさまざまなモノがあります。家庭内のほこりやダニを除去して清潔な環境を作る。季節の変わり目や空気の汚れに気をつける。激しい運動を控えさせる。など喘息の発作が起きないようにするためには、いろいろと気を付けなければならいこともあります。
しかし、どんなに気をつけていても喘息の発作が起きしまうこともあります。小児喘息は発作が起きないように予防することも大切ですが、根気強く上手にコントロールしていくことも重要です。お子さんが成長するにつれ、自然と症状が治まっていくケースも多いのであまり心配しすぎないことも大切ですよ。
喘息の発症・増悪に関わる危険因子は、患者さんごとに多様ですが、その要因を明らかにして環境調整を行うことは、薬物療法、患者教育と並んで喘息治療・管理の大きな柱の一つと考えられています。ハウスダストやダニを含めた吸入アレルゲンやタバコの煙、その他の大気汚染への曝露からの回避が推奨されます。
喘息で用いる薬には長期管理薬(コントローラー)と発作治療薬(リリーバー)があります。発作時に症状を和らげるβ刺激薬の吸入も必要ですが、非発作時にも吸入ステロイドやロイコトリエン受容体拮抗薬のような抗炎症治療薬を主治医と相談しながら上手に使用していただければ効果的です。
監修ドクター:檜垣 博嗣 小児科医師 みなみ野こどもクリニック 院長
気管支喘息治療でおすすめの小児科 関東編
みなみ野こどもクリニック
電話番号 | 042-637-5151 |
住所 | 東京都八王子市西片倉3丁目1-4 第2みなみ野クリニックセンター3F |
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診療時間 | 【平日】9:00~12:00/14:00~18:00 【土曜】9:00~12:00 【月・火・金】14:00~15:00(予防接種) 【水曜】14:00~15:00(健診) |
休診日 | 木曜日・日曜日・祝日 |
Pickup | 【専門医など資格】 ・医学博士 ・東京大学非常勤講師 ・日本小児科学会小児科専門医 ・日本アレルギー学会アレルギー専門医・指導医 ・日本感染症学会感染症専門医・指導医 ・日本リウマチ学会リウマチ専門医 ・PALS Provider ・新生児蘇生法「専門」コース修了 ・ICD(Infection Control Doctor) ・日本感染症学会評議員 ・日本小児感染症学会評議員 ・小児アレルギー同好会世話人 ・関東甲越免疫不全症研究会世話人 ・神奈川県川崎病研究会世話人 |
URL | http://minamino-kids.clinic/ |