「骨肉腫は膝」にできやすい?受診の目安になる症状なども解説!【医師監修】

膝の痛みが長期的に続く場合、その原因にはさまざまな可能性が考えられます。
膝の痛みのなかには注意が必要な疾患も存在し、特に注意が必要なのは骨肉腫です。
骨肉腫は悪性腫瘍で、膝周囲に痛みや腫れを引き起こすことがあり、進行すると骨折のリスクを高めることがあります。
本記事では、症状・診断方法・治療方法についてわかりやすく解説し、適切な受診のタイミングについてと早期対応の重要性もお伝えします。
膝の痛みの原因を知りたい方や不安を感じている方に役立つ内容になれば幸いです。

監修医師:
山本 康博(MYメディカルクリニック横浜みなとみらい)
東京大学医学部医学科卒業 医学博士
日本呼吸器学会認定呼吸器専門医 日本内科学会認定総合内科専門医
目次 -INDEX-
骨肉腫とは
骨肉腫とは、腫瘍細胞が骨を産生する髄内高悪性度肉腫と定義されています。大腿骨遠位部・脛骨近位部など膝関節周囲に発生しやすいといわれています。女性よりも男性の方がやや罹患率が高いです。
ここでは、初期症状・進行のしやすさ・検査方法・治療法・生存率について解説します。
初期症状
初期症状としては、数週間から数ヶ月持続する局所の疼痛・腫脹です。疼痛は、はじめに運動時痛や歩行時痛が生じ、徐々に安静時にも痛みを感じるようになります。
大腿骨遠位部・脛骨近位部・上腕骨近位部が好発部位であり、膝や肩の痛みを主訴に受診する方がほとんどです。転倒や躓きなど軽微な外力による骨折(病的骨折)から見つかることもあります。
進行しやすさ
骨肉腫の進行スピードには個人差がありますが、一般的には数週間から数ヶ月の間に急速に進行することがほとんどです。
無治療の場合、原発巣は数ヶ月で巨大な腫瘍になる可能性があります。
検査法
骨肉腫の手術や病期の決定には、画像診断が不可欠です。画像診断方法を紹介します。
- 単純X線検査
- CT検査
- MRI検査
- 骨シンチグラフィー(骨転移のスクリーニング)
画像診断のほかに血液検査・組織学的検査(病理検査)を行います。
治療法
骨肉腫の治療法は化学療法と手術の組み合わせで行われます。化学療法であるネオアジュバント化学療法(術前化学療法)は外科手術前に行われ、腫瘍を小さくする目的があります。
また、アジュバント療法(術後化学療法)は、手術後に行われる治療で微小転移を抑えることを目的とした治療法です。
次に患肢温存手術は85%以上の患者さんに適用可能で、腫瘍を周囲の正常な組織を含め一括切除します。
切除後、患肢を再建します。切断手術は腫瘍が進行し、患肢温存が困難な場合に行われる手術です。
生存率
化学療法の導入により、初診時に遠隔転移のない症例の5年生存率は、70~80%と大きく改善しています。
しかし、初診時に遠隔転移があり症例や治療後に再発した症例の場合には依然として予後不良の傾向にあります。
骨肉腫は膝にできる?
骨肉腫は、10歳代での発症が約45%と多く占めています。特に膝関節周囲に多く発生し、国内では年間約200件発生している稀な疾患です。
膝に多く発生する理由は、骨の成長に関連した要因が挙げられます。10歳代後半は成長期のピークであり、この時期に骨の成長が活発に進むため、骨肉腫が発生しやすいといわれています。
また、膝関節周囲は大腿骨遠位部や脛骨近位部といった長管骨の成長板に近く、骨肉腫が発生しやすいです。
骨肉腫は悪性度が高く、急速に進行して骨を破壊し、周囲の軟部組織にも浸潤します。そのため、早期の診断と治療が極めて重要です。
膝の痛みや腫れが続く場合には、単純X線撮影などで早期発見に努め、疑わしい場合は速やかに医療機関を受診しましょう。
受診の目安となる骨肉腫の疑いがある症状
骨肉腫は早期発見と適切な治療が必要な疾患です。しかし、その初期症状は見過ごされることがあります。骨肉腫が疑われる症状は以下のとおりです。
- 膝付近の痛みが続く
- 熱っぽさが生じる
- 些細なことで骨折した
それぞれ詳しくみていきましょう。
膝付近の痛みが続く
骨肉腫は主に膝関節周囲に多く発生します。多くの初期症状としてまず、運動時や夜間に痛みを感じる頻度が増加し、進行すると安静時にも痛みを認めるようになるのが特徴です。その痛みは数週間から数ヶ月にわたり持続することがあります。
熱っぽさが生じる
骨肉腫の症状の特徴は、患部に腫れや熱感が現れる点です。これは、腫瘍の増大に伴う炎症反応によるものと考えられます。
初期には症状として現れないこともありますが多くの場合、腫瘍が発生した場所に痛みや腫れ、熱っぽさなどの症状がみられます。
些細なことで骨折した
骨肉腫が進行すると、骨の構造が脆弱になり、軽微な外傷や日常生活動作でも骨折(病的骨折)を起こすことがあります。このような骨折は、腫瘍の存在によって骨が弱くなっているために発生します。
骨肉腫が足にできたときの注意点
骨肉腫が足にできた場合には、悪化を予防する必要などがありいくつかの注意点があります。
診断が出るまで注意深く行動
骨肉腫は初期にほかの整形外科疾患と似た症状を呈するため、自己判断で治療や運動を行わず、早期に医療機関を受診することが重要です。また、レントゲンやMRI・骨生検などの検査結果が出るまで患部に負担をかけないように注意深く行動しましょう。
感染予防を行う
骨肉腫の手術後、特に患肢温存手術や再建術後には感染リスクがあります。そのため、手術部位を清潔に保つことが重要です。
また、化学療法中は免疫力が低下するため、風邪や感染症にかからないように環境を整えることも大切です。
骨肉腫を初見で見分けることは難しい
骨肉腫は成長痛やスポーツによる外傷などと症状が似ており、特に早期の診断が難しいといわれています。症状や画像診断だけでは判断が難しく、生検による病理診断が確定診断のために必要です。そのため、専門的な検査が受けられる医療機関を受診しましょう。
骨肉腫が膝にできたらについてよくある質問
ここまで、骨肉腫についての症状や治療法について説明してきました。ここでは「骨肉腫を発症した場合の対処法」についてよくある質問に、Medical DOC監修医がお答えします。
何科に受診すべきですか?
山本 康博(医師)
骨肉腫が疑われる場合、整形外科を受診することをおすすめします。骨や関節の痛みが続く場合や安静時にも痛みを認める場合は、早めに整形外科を受診しましょう。
確認された場合運動は続けてよいでしょうか?
山本 康博(医師)
一般的に骨肉腫が疑われた場合は、運動制限が必要です。腫瘍により骨が脆弱になっているため、骨折のリスクが高まります。治療中や治療後の運動の再開については主治医と相談し、適切な指導を受けることが大切です。
編集部まとめ
骨肉腫は、膝関節周囲・大腿骨遠位部・脛骨近位部に多く発生します。
初期症状としては膝の痛みや腫れが数週間から数ヶ月続き、運動時だけではなく安静時にも痛みが生じるのが特徴です。
また、進行すると骨が脆くなり軽い外力でも骨折することがあります。進行が早い場合が多く、早期発見が重要です。
検査にはレントゲン・CT・骨シンチグラフィーなどの画像診断や血液検査、生検が用いられます。
治療はおもに化学療法と手術の組み合わせで行われ、手術では患肢温存が可能な場合がほとんどですが、場合によっては切断手術が行われます。
5年生存率は初期段階では70~80%です。
骨肉腫の疑いがある場合、痛みや腫れが長期間続く・患部が熱っぽい・軽微な外傷で骨折するなどの症状に注意し、整形外科を受診しましょう。
検査結果が出るまでは患部への負担を避け、術後は感染予防などが重要になります。
骨肉腫と関連する病気
骨肉腫と関連する病気は5つほどあります。
各病気の症状・原因・治療方法の詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。
関連する病気
- 良性骨腫瘍
- 軟骨肉腫
- ユーイング肉腫
- 骨巨細胞腫
- 転移性脊椎腫瘍
これらの疾患は骨肉腫も患者さんによく見られます。良性腫瘍は非がん性でほとんどの方が無症状ですが、増大により痛みを伴うことがあります。軟骨肉腫やユーイング肉腫は悪性腫瘍で、骨破壊や痛みを引き起こすことが特徴です。骨巨細胞腫は局所で骨を破壊することがあり、転移性脊椎腫瘍はほかの臓器からのがん転移が原因です。
骨肉腫と関連する症状
骨肉腫と関連する症状は5つほどあります。
各病気の症状・原因・治療方法の詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。
関連する症状
- 病的骨折
- 運動時痛
- 安静時痛
- 関節痛
- 腫脹
- 熱感
以上の症状は、骨や周囲組織の異常によって引き起こされ、痛みや腫れは進行に伴って悪化することがあります。特に安静時の痛みや腫れが持続する場合には注意が必要です。