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クラゲやハチに刺されたときのショック症状、アナフィラキシーって何? 2018.11.09

免疫機能は本来、ウイルスや毒物などから自分の身を守るためのもの。しかし、防御の役目を果たす免疫が過剰反応を起こすと、死に及ぶこともあるという。それが昨今、注目を集めているアナフィラキシーという症状だ。みなと芝クリニックで、多くのアナフィラキシー患者を診てきた川本徹先生に、その実態と対処法などを伺った。

 

みなと芝クリニック 川本徹先生
監修ドクタープロフィール:
川本 徹(かわもと・とおる)(みなと芝クリニック 院長)

筑波大学医学専門学群卒業、筑波大学大学院医学研究科修了。「“メスをとれる内科”たる外科医になれ」の教えの元、筑波大学附属病院の消化器外科で、内科医以上に内科のことを知っている外科医をめざす。筑波大学臨床医学系外科(消化器)講師、米国テキサス大学MDアンダーソン癌センター客員講師、東京女子医科大学消化器病センター外科非常勤講師などを歴任後の2010年、都営地下鉄三田駅の近くにみなと芝クリニック開院。2014年には、現在の地へリニューアルオープン。内科や外科から、皮膚科、整形外科、消化器科、肛門科まで、幅広い診療を行っている。
日本外科学会認定医、日本消化器外科学会認定医、日本消化器病学会専門医。

いつでも誰でも起こり得る、アナフィラキシーの怖さ

みなと芝クリニック 川本徹先生

編集部最近良く耳にするアナフィラキシーとは何ですか?
川本徹先生川本先生アレルギー反応の一種です。具体的な症状はさまざまで、全身のどこにでも起こる可能性があります。一例を挙げれば、呼吸困難、血圧低下、下痢、吐き気、かぶれ、湿疹、めまいなど。ほか、死に至る重篤なケースも報告されています。
編集部なぜ、アレルギー反応を起こしてしまうのでしょう?
川本徹先生川本先生ヒトは、クラゲやハチの毒などが体内に入ると、それを「異物」と認識して攻撃するんですね。ところがアナフィラキシーの場合、免疫が過剰に反応し、自分の体をも攻撃してしまうのです。
編集部毒そのものが原因ではないのですね?
川本徹先生川本先生直接的ではないという意味で、そういうことになります。アナフィラキシーで問題になるのは「抗体」です。抗体は、毒などへ接触した時点ではじめて作られる、特効薬のような物質です。次に同じ異物が襲ってきても、抗体を持っていれば、即座に対処できますよね。ところがこの抗体は、何かしらの理由で、過剰反応を起こすことがあるのです。したがって、異物への“2回目以降”の接触が、アナフィラキシーのきっかけとなります。
編集部主な対象は、生物の毒なのですか?
川本徹先生川本先生そうとも限りません。身の回りにある食べ物、ゴムなどの素材、特定の薬などさまさまです。また、先ほど「抗体は、毒などへ接触した時点ではじめて作られます」と申しましたが、お母さんから受け継いでいることも考えられます。この場合は“2回目以降”に限らず、最初からアナフィラキシーを起こしかねないでしょう。
もっと言えば、初回の接触を知らずに経験していることだってあり得るのです。呼吸を介してだったり、手で触っていたり。ハチやクラゲなら自覚しやすいですが、いつ、何によって、どの抗体を持つのかまでは、把握しきれないところがあります。
編集部何度か接触していても大丈夫なら、安心できそうですが?
川本徹先生川本先生それが、そうとも言い切れないんですよね。2回目までは大丈夫でも、3回目に起きることがあります。人により4回目だったり10回目だったりと予測できないので、「いままで大丈夫だった」という過信は禁物です。

みなと芝クリニック 川本徹先生

編集部日本では、どのくらいの被害者がいるのでしょう?
川本徹先生川本先生厚生労働省の人口動態統計によると、2011年の年間死亡者だけでも71名となっています。死に至らないケースとなると、報告義務がありませんから、わからないですね。一般には、初回の接触で10%の人が抗体を持ち、次回以降に接触したうち2%の確率でアナフィラキシーを発症するといわれています。
アナフィラキシーの怖い点は、死に至る可能性がこれほどあるのに、日常の中であまり見かけないこと。まだまだ、知らない人が多いのではないでしょうか。

まさかの事態に備え、知っておきたいこと

編集部毒やアレルゲンによる違いはあるのでしょうか?
川本徹先生川本先生ショック症状などを起こすまでの時間が違います。一般に、お薬で5分、虫などに刺された場合の毒で15分、食べ物では30分といわれています。この違いは、異物が血液に届くまでの時間によって生じます。抗体は血液中で作られますから、例えば食べ物ですと、胃で消化・吸収して血液に届くまで時間がかかるんですね。毒性の強さは関係なく、接触の仕方が問われます。
編集部もし発症したら、何をすべきだと思いますか?
川本徹先生川本先生お薬や食べ物だったら、まず、吐かせること。ハチ毒などの場合、周りの人が口で吸い出すような場面をみかけますが、やめたほうがいいでしょう。吸い出した人がアナフィラキシーになるかもしれないからです。そのうえで、ためらうことなく救急車を呼んでください。
編集部治療法や対処法はあるのでしょうか?
川本徹先生川本先生ショック症状には、アドレナリン注射が効果的です。ご自身や周りの方でも、簡単に打つことができます。ただし、症状を一時的に緩和するだけですので、その後に必ず医療機関を受診してください。落ち着いたように見えても、時間の経過により、ぶり返すことがあります。

みなと芝クリニック 川本徹先生

編集部医療機関では、専門的な治療をおこなっていただけるのですか?
川本徹先生川本先生もちろんそうですが、本当に落ち着いたといえるのか、それとも入院をして経過観察すべきなのかも判断できます。また、何によるアナフィラキシーなのかご自身でわかっていない場合もありますから、ぜひ、知っておきましょう。
編集部アレルゲンの検査が可能ということですね?
川本徹先生川本先生はい。花粉や金属アレルギーと同様、抗体の検査ができます。最近では、学校の先生や屋外活動の引率者などから「検査をするよう勧められた」と言う人も増えています。保険が適用されますので、みなさんも受けてみてはいかがでしょうか。
ご注意いただききたいのは、アレルゲンを特定できたとしても、それによりアナフィラキシーが起きるとは限らないこと。ただし、接触を避けたほうがいい対象であることは間違いありません。

アドレナリン注射の使い方と注意点

編集部先ほどアドレナリン注射の話が出ましたが、誰でも簡単に打てるのでしょうか?
川本徹先生川本先生はい。血管を探して打つわけではないので簡単です。打つ場所は、太ももの外側がいいでしょう。ズボンの上からでも可能なので、衣服のシワや縫い目などを避けて使用してください。また、注射の処方時に、デモンストレーション用の器具で練習することもできます。
編集部注射に関する注意点はありますか?
川本徹先生川本先生ショック症状を起こしている人は、なかなか自分で打てませんよね。周りにいる人が、注射を探して打ってあげないといけない場面も考えられます。アナフィラキシーの可能性がある人は、アドレナリン注射を分かりやすい場所にしまっておいてください。

みなと芝クリニック 川本徹先生

編集部アドレナリン注射の使用期限は?
川本徹先生川本先生処方から1年です。注射自体が強いお薬ですから、1本しか処方しません。使ったら新しい注射を補充してください。もちろん使っていない場合でも、1年が過ぎたら交換するようにしましょう。
編集部内服薬だけでは不十分だと思われますか?
川本徹先生川本先生お薬は食べ物に比べて早く吸収されるのですが、それでも効き目が現れるまで5分くらいかかります。その間、症状が刻々と進むことを考えると、注射のほうが好ましいでしょう。
編集部読者へのメッセージがあればお願いします
川本徹先生川本先生先ほど、周りの人の理解が必要と申しましたが、それに尽きると思います。もし苦しんでいる人がいたら、引きつけやてんかんなどと思い込まず、アナフィラキシーという可能性も考慮しておきましょう。そして、命に関わる事態という認識で、ただちに救急車を呼んでいただきたいですね。そのうえでコミュニケーションが取れるようなら、アドレナリン注射を持っているかどうか確認してください。

編集部まとめ

アナフィラキシーは発疹やかゆみにとどまらず、呼吸困難や血圧の低下、さらには死に至ることもある怖い症状。その場での応急処置が取れれば、最悪の事態を免れることもできるでしょう。
まずは、ご自分の抗体を検査によって確認してみること。次に、突然苦しんでいる人を見かけたら、アナフィラキシーの可能性を疑ってみること。以上の2点が重要です。アナフィラキシーは1秒を争いますので、その怖さを知るとともに、何ができるのかも把握しておいてください。

医院情報

みなと芝クリニック
みなと芝クリニック
電話番号 03-3457-0555
住所 東京都港区芝2-12-1 桑山ビル2F
アクセス 「芝公園駅」徒歩4分、「三田駅」徒歩7分
「大門駅」徒歩7分、「浜松町駅」徒歩10分
診療科目
内科、消化器科、皮膚科、外科、整形外科、大腸肛門科
URL http://www.minatoshiba-cl.com/