日帰り白内障手術に密着してみた Vol.3 後日編
更新日:2023/03/27
「遠近両用白内障手術」は、眼内レンズを用いた白内障手術の際に多焦点レンズを併用することで、白内障の治療だけでなく老眼治療にも対応する新しい治療法だ。このたび、本メディア関係者の後藤氏(仮名)がこの多焦点眼内レンズを使用した遠近両用白内障手術を受けた。術後1か月の検診を終えた後藤氏に、術後の健康状態や視力の状況、生活の変化などについてお話を伺った。
後藤氏 プロフィール:
1939年(昭和11年)生まれ、79歳(手術時年齢)
大手精密機器メーカーに20年間勤務後、2005年より医療系サービスを展開する会社の常勤監査役に就任、現在に至る。
今回、後藤氏が手術を受けたのは西新宿にある眼科クリニック。レーシックなどのレーザーによる視力回復手術だけでなく、白内障手術や緑内障手術の経験も豊富な眼科専門医が執刀する。多焦点眼内レンズについては厚生労働省が認可した2007年にいち早く導入、遠近両用白内障手術における症例数でも国内トップクラスを誇る先進医療認定施設だ。
後藤氏そうです。
編集部先に手術をした左目は、一晩経って起きたときも何ともなかったですか?
後藤氏違和感は何もなかったです。ただ、先に手術をした左目は、悪いなりにも少しはよく見えていたほうの目だったので、見えにくいほうの目だけで1日過ごすというのは、何かにつけて不安ではありましたね。
編集部その左目の眼帯を外したときの感想はいかがでしたか?
後藤氏びっくりするくらいよく見えました。ただし、それまで見えにくいほうの片目だけで見ていたこともあって、手術で改善された以上によく見えるように感じたのかもしれませんね。
編集部2日目の手術は前日と同じような流れですか?
後藤氏そうです。同じように手術を受けて、眼帯をしてホテルへ戻りました。ただ、そのときは手術が済んでよくなったほうの目が見えているので、片目でも前日とはだいぶ違いましたね。
2日ともクリニックの近くのホテルに泊まって、夕食はコンビニで弁当を買って食べたんですが、初日は目があまりよく見えないものだから、何を食べても味がよくわかりませんでした。ところが2日目はよく見えるほうの目で見ているので、ちゃんと食事をしているなという実感があるんです。
2日ともクリニックの近くのホテルに泊まって、夕食はコンビニで弁当を買って食べたんですが、初日は目があまりよく見えないものだから、何を食べても味がよくわかりませんでした。ところが2日目はよく見えるほうの目で見ているので、ちゃんと食事をしているなという実感があるんです。
編集部味覚にもそんなに影響があるんですね
後藤氏2日とも同じようなものを買って食べたんですが、目が見えるというのはこんなに違うものなのか、と思いました。
編集部左右とも手術が終わって、両目で見たときの感想はいかがでしたか?
後藤氏それはもうびっくりしました。検査を受けたら視力が左右とも1.5になっていて、両目で見ても1.5あったんですが、「視力1.5で見る世界というのは、こういうものだったんだな」と思いましたね。
自宅に帰るときも、新宿から特急電車に乗って車窓から景色を見たとき、「こんな景色の中を通ってきていたのか」という驚きや感激がありました。
手術前にたまたま自宅のTVを買い替えたんですが、そのときはそれほど画質が良くなったとは感じなかったのに、手術が終わってから観ると映像がきれいなのがよくわかりましたね。おかげでTVを観る時間がだいぶ長くなりました。
自宅に帰るときも、新宿から特急電車に乗って車窓から景色を見たとき、「こんな景色の中を通ってきていたのか」という驚きや感激がありました。
手術前にたまたま自宅のTVを買い替えたんですが、そのときはそれほど画質が良くなったとは感じなかったのに、手術が終わってから観ると映像がきれいなのがよくわかりましたね。おかげでTVを観る時間がだいぶ長くなりました。
編集部視力が1.5になったのはいつ以来ですか?
後藤氏もう何十年ぶりですよ。20代の頃に眼鏡をかけ始めて、それからずっと眼鏡の度を変えながら生活していたわけですから、ざっと50年以上になります。逆に見えすぎてちょっと気持ちが悪かったですけどね。
編集部医師からは白内障の改善状況や多焦点眼内レンズの効果について詳しい説明などはありましたか?
後藤氏検査担当の人が視力検査や乱視の検査などをして先生に結果の報告をするんですが、それを確認して先生から「手術は成功です。ちゃんと見えるようになっています」というお話がありました。
編集部術後の生活での注意点などは何かありましたか?
後藤氏ホコリが目に入らないように保護メガネを1週間つけていましたが、1週間後に受診して感染症も炎症も起こしていなかったので、もう外していいということになりました。他には生活上の制限は特になかったです。
それから後は感染予防などの目薬を3種類もらって、1日4回の点眼を1か月検診まで続けました。
それから後は感染予防などの目薬を3種類もらって、1日4回の点眼を1か月検診まで続けました。
編集部1か月検診が終わったところで、もう目薬は差さなくてもよくなったんですか?
後藤氏いえ、今度は目薬が2種類になって、それを3か月検診まで続けることになっています。
編集部今も眼鏡をかけていらっしゃいますが?
後藤氏私は紫外線がちょっと苦手なので、1か月検診のときに先生に相談して、紫外線とパソコンのブルーライトを少しカットするために新しく眼鏡屋さんで作ったんです。もちろん度は入っていません。
編集部術後の見え方で何か気になることはありませんか?
後藤氏近くの小さな文字を見るときに少し見づらいですね。それは術後1週間の時点で少し気になっていて、1か月経った今は多少改善されてきたんですが、先生がおっしゃるには、30cmくらいの距離に焦点を合わせるとき、目が慣れるのに少し時間がかかるらしいです。
例えば新聞を読むとき、普通の紙面は大丈夫でもTV欄は文字が小さいので見えにくいとか、ノートパソコンの小さいディスプレイで細かい文字が見づらいと感じることはあります。
例えば新聞を読むとき、普通の紙面は大丈夫でもTV欄は文字が小さいので見えにくいとか、ノートパソコンの小さいディスプレイで細かい文字が見づらいと感じることはあります。
編集部それは慣れれば今後改善されるんですか?
後藤氏目がだんだん慣れてくるということなので、3か月検診の頃にはもう少しはっきり見えるようになるかもしれませんね。先生がおっしゃるには、近くのものに焦点を合わせるとき、立ち上がりに少し時間がかかるということでした。
編集部逆に、遠くを見ているときには問題はないということですか?
後藤氏それはまったく問題ないです。特にいいなと思ったのは車の運転をするときですね。週に2回ほど運転する機会がありますが、遠くまでよく見えるというのは私にとっては非常にありがたいですね。当初の目標でもあった免許更新の高齢者講習も無事クリアできると期待しています。
編集部今回の手術で入れたのは遠・近・中のいずれも見える多焦点レンズということですが、中距離の見え方はどうですか?
後藤氏説明を聞いたところでは、30cm、50cm、遠くのそれぞれにピントが合うようになっているみたいですが、その中の50cmぐらいの距離のものはわりとよく見えますね。
編集部それに比べると、近くのものでなおかつ小さな文字を見るときだけはちょっと見えにくいということですね?
後藤氏そうです。例えばスマートフォンの小さい文字が二重に見えたりするんですが、屋外の太陽の下だときれいに見えるんです。もしかしたら照明の明るさによるのかもしれません。
それから、術後1週間検診の頃は「ニュース」の「ニ」の文字が「三」に見えたりしたんですが、それはもう今はなくなっています。
ですから、馴染むのに少し時間がかかるのかなと思いますね。
編集部車の運転以外には、スポーツやアウトドアでのご趣味などは何かされていますか?
後藤氏あまりやらないんですが、何年か前にゴルフコースを回ったときは空振りばかりしていました。それも今にして思えば、よく見えていなかったからなんでしょうね。
編集部手術後はまだゴルフはされていないんですか?
後藤氏まだなんです。だから、今度練習場に行くのが楽しみですね。
編集部では最後に、今回「遠近両用白内障手術」を受けてみて感じたことを教えていただけますか?
後藤氏私ももうかなりの年齢になりますが、目がよく見えないと実際の年齢以上に老け込んでしまうということがあるのかなと思いました。以前はやっていたことをやらなくなってしまったり、いろんなことを知らず知らずのうちに避けるようになってしまったりするんじゃないでしょうか。そういう意味でも、目がいかに大切かということを改めて感じましたね。
手術後1か月の時点までは順調に進んできたと思いますので、今度は3か月検診のときに自分が期待するところまでよくなっているかどうか、楽しみにしたいと思います。
編集部今日はどうもありがとうございました。
編集部まとめ
手術の翌日には眼帯が取れ、視力1.5という数字以上に劇的な視力の改善を実感した後藤さん。視力の低下が、これまで自覚していた以上に生活のさまざまな面に影響していたことに改めて気づいたようです。
後藤さんの場合、近距離でのピント合わせにまだ目が慣れていないとのことでしたが、活動的な毎日を送れるようになったことを心から喜んでおられる様子で、終始明るい表情でインタビューに応じてくださいました。この記事が遠近両用白内障手術を検討されている方にとって少しでも参考になれば幸いです。
後藤さんの場合、近距離でのピント合わせにまだ目が慣れていないとのことでしたが、活動的な毎日を送れるようになったことを心から喜んでおられる様子で、終始明るい表情でインタビューに応じてくださいました。この記事が遠近両用白内障手術を検討されている方にとって少しでも参考になれば幸いです。